栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

もやもや処方の処方箋:総合診療7月号 Case④ 薬は死ぬまで飲み続けるのか!?

7月号の総合診療の連載です。
今月からはメンバーが替わりまして、中野病院の青島周一先生、自治医科大学総合診療部の山本祐先生、宇都宮協立診療所の武井大先生とご一緒しています。

この企画は実際に症例を持ち寄って、処方カンファレンスを行った内容を元に、対談形式で処方箋を考えていこうという企画です。当初は処方について語り合う会としていましたが、話し出すと止まらない、止まらない。大変楽しい収録となりました。

7−10月はオール栃木メンバーでお届け致します。このメンバーは比較的会うことも多いので、勝手知ったるで面白かったです。

もやもや処方の処方箋:総合診療7月号 Case④ 薬は死ぬまで飲み続けるのか!??

今月の症例は、「めまい、転倒」を主訴で来院された90代男性です。多くのプロブレムを抱えて、処方薬は全部で11種類の薬剤を内服していらっしゃいます!

今月の主な論点は、
・「年のせい」は早期閉鎖ワード!
・「すごく良い」血糖コントロールは見直して
・血糖コントロールの価値認識
・1つひとつは”妥当”でも
・逆に「アンダー処方」も注意して
・患者さんの関心が薬の必要性を左右する

でした。 

 

 今回は青島先生の症例提示でした。薬剤師・医師関係なく同じ症例について多彩な方面から話し合えると良いですよね。次回もまたお楽しみに〜!

論文:RCT 神経障害軽度の軽症虚血性脳卒中患者の機能予後に対するアルテプラーゼ vs アスピリン -PRISMS trial-

 t-PA時間に来院したけど、NIHSS軽度だった〜という状況はまあまあありますよね。で、結局t-PAやらない〜となるわけですが、もしかして軽症でもt-PAやったら良いことあるんじゃ無いの?というのが今回のresearch questionです。
 そもそも、当初のt-PAのエビデンスが構築された研究では軽症症例は除外されているのでブラックボックスだったわけです。

 Inrto情報ですが、4.5時間以内に搬送された脳卒中患者のうち、t-PAが使用されない最も一般的な理由は症状が軽いということなんだそうです。ただ、これらの軽症脳卒中患者の30%が90日後には機能障害を抱えているという前向き研究があるようです。なかなかの頻度ですね。入院後悪化したとか、合併症とか併存症とか再発とかがあるようです。

 過去の主要なアルテプラーゼの研究(NINDS-1・2、ECASS 1・2・3、Atlantis A・B、EPIHET)では、軽症脳卒中は除外されています。また、ICT3研究では軽症患者も組み入れられましたが、結果の解釈が難しい形になりました。という経過を経て、NIHSS 0-5点の軽症脳卒中で3時間以内にアルテプラーゼを投与された有効性と安全性を評価することが今回の目的です。

神経障害軽度の軽症虚血性脳卒中患者の機能予後に対するアルテプラーゼ vs アスピリン -PRISMS trial-

Effect of Alteplase vs Aspirin on Functional Outcome for Patients With Acute Ischemic Stroke and Minor Nondisabling Neurologic Deficits

JAMA. 2018;320(2):156-166. doi:10.1001/jama.2018.8496

【背景】
 急性脳卒中患者の半数は、入院時NIHSS 0-5点の神経障害が軽度の患者である。過去の主要なアルテプラーゼ研究ではNIHSS低い患者を組み入れてはいるが、実際には患者がエントリーされていない。
【目的】
 NIHSS 0-5点の障害が軽度の患者において、アルテプラーゼの有効性と安全性を評価する
【デザイン・セッティング・患者】
 PRISMSトライアルは、948人の患者のPhase3研究で、二重盲検、二重プラセボ、多施設のランダム化比較試験としてデザインされた。米国の75箇所の脳卒中病院ネットワークにおいて救急受診された脳卒中患者を対象にアルテプラーゼとアスピリンの効果を比較している。
 急性脳卒中患者の障害度はNIHSS 0-5点で障害は軽度と判断されており、3時間以内で薬剤投与可能な患者を対象とした。研究期間は組み入れが2014年5月30日〜2016年12月20日まで、最終フォローアップが2017年3月22日とした。
【介入】
 患者はランダムに以下2群に割り付け。
①アルテプラーゼ(0.9mg/kg)+経口プラセボ(n=156)
②静注プラセボ+経口アスピリン 325mg/日(n=157)
【メインアウトカム】
 プライマリアウトカムは、良好な機能アウトカム(発症90日後のmRS 0-1)とした。これはCochran-Mantel-Haenszel検査で治療前のNIHSSスコア、年齢、発症から治療までの時間で層別化された。試験プロトコールは改訂された。
 プライマリ安全性アウトカムは、静脈内治療 36時間以内の症候性頭蓋内出血とした。
【結果】
 53施設313人(平均年齢 62歳、46%女性、平均NIHSS 2点、平均治療開始時間 2.7時間)が組み入れられ、281人(89.8%)が治療完遂した。
 90日後の神経予後良好者(mRS 0-1)は、アルテプラーゼ群 121人(78.2%)、アスピリン群 128人(81.5%)だった。調整RR -1.1%(-9.4 to 7.3%)

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(本文より引用)
 症候性頭蓋内出血はアルテプラーゼ群 5人(3.2%)、アスピリン群 0人(0%)で、RR 3.3(0.8-7.4%)だった。
【結論】
 軽症の非致死的虚血性脳卒中患者では、アルテプラーゼ vs アスピリンでは90日後の機能的予後は改善しなかった
 ただし、本研究は初期に研究終了しており、追加研究をしなければいかなる結論も出しかねる。

【批判的吟味】
・始めに論文のPICOから確認します。
P:軽症の虚血性脳卒中患者(NIHSS 0-5点)で発症3時間以内
E:アルテプラーゼ+経口プラセボ
C:静注プラセボ+経口アスピリン
O:90日後のmRS 0-1点
T:ランダム化比較試験
早期終了の原因はスポンサー絡みらしく、患者組み入れが目標に達しなかったためとされています。
・というのも指定された期間内で予定の資金内では研究が完了できないという結果という金銭的理由でした。金銭的理由で、研究が途中で終わるって結構凄いことですね。
・登録が中止された後に、協議の結果登録された患者の分は評価しようということで、今回の論文に至っています。
・なので、デザインが948人で実際の患者が313人なのですね。
・当然、デザイン通りの患者数が入っていないため、サンプルサイズ不足になり、この結果をそのまま鵜呑みにはできません
・一部のサイトでは選択バイアスがあったかもしれないとされています。
・90日後のフォローアップは78%とやや低めです。
”not cleary disabling”という基準が組み入れ基準にあるのですがこれが主観的だったと批判されていました。
・ちなみにアジア人種は含まれていません。
・とはいえ症候性頭蓋内出血は看過できませんねえ。その他minorな出血もあわせると重篤な有害事象は26%で起こっていました。

【個人的な意見】
 悩ましい所ですが、早期終了試験なので「なんともいえねえ」という感じでしょうか。日常プラクティスは変わりません。軽症患者には現時点では使わないで良いでしょうね!

✓ NIHSS 0-5点の軽症脳卒中患者では、アルテプラーゼとアスピリンは長期予後は同等である(※早期試験終了)

MINERVA:おもしろ論文紹介コーナー カルシウム受容体拮抗薬と癌 他

ミネルバです!
今回は脳波のやつ面白かったなあ。
この辺の技術はおそらくAIの台頭もあるでしょうねえ。
なかなか興味深いです。

①カルシウム受容体拮抗薬で死亡は増えない
②失神か否か
③痙攣性発作の音
④食物繊維
⑤長い爪

 

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