栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

読んだ本:コロナのせいにしてみよう。シャムズの話

久々に書籍紹介。

今回ご紹介するのは今年4月に皆さんご存じの”國祭り”を開催している國松淳和先生のコロナ関連書籍です。

何を隠そう國松先生とはまだ2回くらいしか会ったことないんですが、この間ものすごく意気投合しまして・・・
一度書籍にも名前を出してもらったりしてすごく嬉しかったこともあります。

 

さて、そんな國松先生の國祭りの一角。

「コロナのせいにしてみよう。シャムズの話」

 

コロナのせいにしてみよう。シャムズの話

コロナのせいにしてみよう。シャムズの話

  • 作者:國松 淳和
  • 発売日: 2020/06/23
  • メディア: 単行本
 


他にも読みたい書籍は色々出ていて、今はブラックジャック本を読んでいるのですが、今回は「コロナのせいにしてみよう。シャムズの話」略して「コロシャム」をご紹介してみます。あ、勝手に略してすいません。

國松先生自身がSNS等でめちゃくちゃ推薦してて気になってたのですが、ホントに一気読みしました。加えて扉と前書きが忽那賢志先生が書いています。

で、ターゲットは一般の方です。はい。

コロナによってちょっと変わってしまった方々を、國松先生はCOVID-19/Coronavirus-induced altered mental status(CIAMS:シャムズ)と名付けています。まあ、色々あるけど「みんなコロナのせい」にしてみよう!というわけです。単なる問題点の指摘だけではなくて、この状況をどのように考え、どう対処していったらよいか?について実践的な話となっています。

自らもこのコロナ時期を振り返ってみると、「シャムズってたなあ(使い方合ってますか?)」と思う時期が確かにありました。
自分はその時期を、仲間との語りで取り戻していった感じがありましたが、まさにそういった内容が書いてあります。

比較的短時間で読み切れますので是非一度目を通してみると、この半年の色々がすっきりする感じはあるかもしれません

さて、7月12日にはこのネタをオマージュしながら、適々斎塾にも登壇します。
その次の國松先生にうまく繋げられれば御の字です!

tekitekisai06.peatix.com

合同カンファ:紅皮症の原因は?

今週も合同カンファから気になったところを。


ちなみに、全然関係ないけど、ミルクボーイってどこがおもしろい?って真顔で聞かれて答えられませんでした。
おもしろさを言語化するの辛いっすね。
雰囲気で笑わされているのか...

...さて、気を取り直して。今回のテーマは紅皮症についてでした。
紅皮症の鑑別診断って色々でるけど、実際のところ困ることも多いですよね。

 

 

紅皮症の疫学

 紅皮症の原因を羅列することはできますが、実際にどの程度なんだろうか?とPubmedでreviewしてみました。
 ポルトガルのPorto大学の先生方の103症例のレビューよると...

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 人口分布は成人は比較的均等に分布しています。平均54.4歳ですが、乾癬や湿疹関連は若い人に、薬疹や悪性腫瘍関連は高齢者に多い傾向でした。

 

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 最多は乾癬、2位が薬疹、3位が湿疹関連で、その次に悪性腫瘍と続きます。他の症例レビューもありましたが、どの研究でも既存の皮膚疾患(乾癬・湿疹等)で44-73%、薬疹が 11-22%、悪性腫瘍が 2-12.6%という分布でした。

 

紅皮症の症状

 症状はやはり皮膚症状が中心ですが、全身に及ぶ皮膚症状なので全身症状も合併してきます。

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 これで見ると、掻痒感はほぼ必発(そりゃそうだ)。あと末梢性浮腫が次いで多くなります。その他、発熱・皮膚落屑・爪変化(確認するの忘れた〜)・肝脾腫・リンパ節腫脹あたりが頻度が多いですがどれも非特異的ですね。
 興味深いのは疾患病態毎による症状の違いです。例えば、末梢性浮腫や肝脾腫、リンパ節腫脹は悪性腫瘍関連の可能性が高くなるかもしれません。

 

紅皮症の検査所見

 こちらもまあ非特異的ではありますが、炎症反応はあがるけど、好酸球はそれほどでもないよね〜という結果でした。
 薬剤反応であっても42%だからたいしてあがらないです。

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論文:JAMA surg Retrocohort 高齢者と非高齢者における肋骨骨折の疼痛スコア評価

このテーマは重要だなあ。
以前もこのテーマに近い形で認知症が与える影響について論文紹介したことがありました。

tyabu7973.hatenablog.com

 

今回は、「肋骨骨折の痛みが高齢者と非高齢者で異なるか?」と言うのが臨床疑問です。多くの場合、肋骨骨折患者の疼痛コントロールのためには10点満点のNRS(numerical rating scale)で評価して、調整することが多いです。

高齢者ほど肋骨骨折のアウトカムが悪いことが知られていますが、それが疼痛の訴えが少ないことと関係しないかを評価したという研究になります

高齢者と非高齢者における肋骨骨折の疼痛スコア評価
Pain Scores in Geriatric vs Nongeriatric Patients With Rib Fractures

JAMA Surg. Published online July 1, 2020. doi:10.1001/jamasurg.2020.1933

【方法】
 2012年1月から2017年12月の間に、外傷センターで胸壁外傷で4日以上入院した成人患者を後ろ向きに評価した。スタンフォード大学の組織レビュー委員会はこの研究を承認し、後ろ向きのデータレビューであるため、インフォームドコンセントの要件を不要とした。

 プライマリアウトカムは、入院最初の4日間、12時間毎に評価したNRSによる疼痛スコアとした。疼痛スコアはポアソン回帰分析を使用して比較された。痛みがない患者をオッズ比で、痛みを報告した患者の痛みスコアの平均比も評価した。 交絡因子は、臨床的に関連性があり、独立変数係数を10%以上変更した場合に含められた。すべての分析はRバージョン3.6.2で行われた。 
【結果】
患者の特徴:
 385名の患者のうち、65歳以上の患者は166名だった。非老年群と比較して老年群を比較すると・・・
・女性が多い 非老年群 40/219人[18.3%] vs 老年群 88/166人[53.0%] P <.001
・様々な受傷起点の違いは以下。
①オートバイの衝突 非老年群 46/219人 [21.0%]vs 老年群 4/166人 [2.4%]
②自転車関連の怪我 非老年群 45/219人 [20.5%]vs 13/166人 [7.8%]
③転倒 非老年群 44/219人 [20.0%] vs 100/166 人[60.2%]; P <.001)
・損傷重症度スコアの中央値は(14 [4.0] vs 10.5 [4.0]、P <.001)だった
・1日あたりのオピオイド投与量(経口モルヒネ当量)
 非老年群 177.1 [292.4] mg vs 老年群 75.5 [105.4] mg)
・硬膜外麻酔使用(29 [13.2% ] vs 34 [20.5%]; P = .07)
・神経ブロックの使用(11 [5.0%] vs 3 [1.8%]; P = .11)。

痛みのスコア:
 痛みがない患者は、非老年群と比較して老年群でaOR 3.85[95%CI:3.11-4.77]と多かった(P <.001)。
 疼痛を報告した患者(疼痛スコア≥1)では、老年群の疼痛スコアが非老年群に比べて15%低かった(平均比:0.85 [95%CI:0.78-0.87]  P <.001)。

 肋骨骨折患者のサブグループ解析でも同様の結果だった
 (痛みがない患者のaOR 5.08 [95%CI:3.85-6.70] P <.001)
 (報告された痛みの平均比 aOR 0.79 [95%CI:0.74- 0.84] P <.001)

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(本文より引用)
【結論】 
 肋骨骨折を起こした老年患者は、痛みが過小評価される可能性がることを認識すべきである。 このリスクの高いグループには、より丁寧な鎮痛戦略が必要である。

【批判的吟味】
・論文のPECOは
P:胸部外傷で4日以上入院した患者
E:65歳以上の高齢者
C:65歳未満の成人
O:疼痛スコア、疼痛が無い患者の頻度、鎮痛薬使用量
T:後ろ向き観察研究
・非老年の平均年齢が52歳、老年は79.5歳でした。高齢者でなぜ女性が多いのかはよく分かりませんが、少なくとも外傷の重症度スコアは若年の方が高く、鎖骨や肩甲骨骨折の頻度は高かったです。
・ただし、今回回帰モデルを用いて損傷の重症度を調整しました。
・高齢者は転倒が多く骨折も起きやすいと言えるか?
・オピオイド投与量が少ないのも、臨床医が高齢者に対する投薬に対して慎重に対応して、老人患者に少量のオピオイドを処方した可能性がある。
過小報告なのか、高齢者は痛みが少ないのかは依然として不明

【個人的な意見】
 着眼点おもしろいなあと思って読み進めたのですが、結局最後の一文の過小報告なのか高齢者は痛みが少ないのかは謎のママでした。認知症の頻度も記載は無かったですが、施設入所者が多いので、結構いたかもしれません。
 やはり高齢者の痛み評価は丁寧にやる必要があるよなあと思いました。

✓ 胸部外傷患者では高齢者は非高齢者と比べて疼痛スコアが低く鎮痛薬使用量も少ない