栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:RCT JAMAIM CKD患者さんに対する造影CT検査前の輸液投与によるAKI予防

さてさて、造影剤CTの腎障害予防。結構実臨床との乖離がある領域ではないでしょうか。

造影剤腎症の多くは冠動脈造影などの比較的造影剤量が多い場合の報告が多いので、造影CT検査などでは比較的軽症で済み、長期的な腎機能への影響は少ないことが指摘されています。救急外来などでも、腎機能を確認してからの造影CTは不要ですよ〜と言われていますよね。でも、「造影剤投与前に腎機能確認」は実際にはよく行われているプラクティスではないでしょうか?

現行の国際ガイドラインでは、イリスク患者での造影剤腎症予防を推奨しており、生理食塩水もしくは炭酸水素ナトリウムの静脈内投与が推奨されています。意外と重炭酸投与のエビデンスはあり、生理食塩水による輸液と非劣性という報告が複数あったりもします。

日本のガイドラインは以下

https://www.jsn.or.jp/topics/news/20180419-public-comm/07.pdf

ただ、発症頻度が少なく軽症で済む病態に対しての予防を積極的に推奨すべきか?という点と、うっ血性心不全患者に対する投与などは水分過剰リスクがある点など、過剰対応やそれによる有害事象も考えておく必要があります。

そもそも、造影後腎症リスクがそれほど多くないのであれば、炭酸水素ナトリウムも用量負荷になるので、そもそもいらいないのでは?というところで、Stage 3 CKD患者に対して、予防を行わない介入が、炭酸水素ナトリウム介入と比較して、造影剤腎症発症頻度はどうか?を検討したランダム化比較試験です。

CKD患者さんに対する造影CT検査前の輸液投与によるAKI予防
Effect of No Prehydration vs Sodium Bicarbonate Prehydration Prior to Contrast-Enhanced Computed Tomography in the Prevention of Postcontrast Acute Kidney Injury in Adults With Chronic Kidney Disease

JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2019.7428 Published online February 17, 2020.

【背景】
 Stage 3 CKD患者の造影剤腎症の予防は、長年にわたって検査前輸液が標準的対応だった。ただし、この検査前輸液が本当に必要かについてのエビデンスは限られている。
【目的】
 Stage 3 CKD患者におけるヨード造影剤投与前に予防的に検査前輸液をしないことの腎保護効果を評価する。
【デザイン・セッティング・患者】
 Kompas試験は、オランダの6つの病院で実施された多施設・非劣性・ランダム化比較試験。2013年4月から2016年9月までに造影剤CT検査を受けるStage 3 CKD患者523人を1:1の比率で検査前点滴なし群と検査1時間前に250mLの1.4%炭酸水素ナトリウム投与群にランダム割り付けした。
 最終フォローアップは2017年9月に完了し、データは2018年1月から2019年6月まで分析された。
【介入】
 合計で262人の患者が検査前点滴なし群に割り当てられ、261人の患者が検査前に炭酸水素ナトリウム群に割り当てられた。主要エンドポイントの分析は、505人の患者(96.6%)で追跡可能だった。
【メインアウトカム】
 メインアウトカムは、ベースラインと比較した造影剤投与2ー5日後の血清Cr値の平均増加とした(血清Cr 10%未満が非劣性マージン)
 セカンダリアウトカムでは、造影剤投与2-5日後の造影剤腎症の発生率、造影剤投与7-14日後のCr値の平均増加、透析を必要とする急性心不全および腎不全の発生率、および医療費とした
【結果】
 ランダム化された554人の患者のうち、523人がITT解析された。年齢の中央値(四分位範囲)は74歳(67-79)歳。336人(64.2%)が男性、187人(35.8%)が女性。
 ベースラインと比較した造影剤投与後2-5日のCr値の平均(SD)増加は、検査前予防なし群で3.0%vs 検査前予防あり群で3.5%(平均差 0.5 [95%CI:-1.3 to 2.3) で非劣性だった。
 
 造影後腎症は11人(2.1%)で発生し、検査前予防なし群 7人/262人(2.7%)、検査前予防あり群4人/261人(1.5%)で、RR 1.7 [95%CI:0.5-5.9]だった。透析を必要とする患者や急性心不全を発症した患者はいなかった。

 サブグループ解析では、事前定義されたサブグループ間の統計学的有意差は示されなかった。医療費は、検査前予防群患者1人あたり119ユーロ(143.94 USドル)だったが、検査前予防なし群では0ユーロ(US $ 0)だった(P <.001)。他の医療費も同様だった。
【結論】
 Stage 3 CKD患者で造影CTを受けた患者では、検査前予防で炭酸水素ナトリウムを投与しなくても患者安全性は損なわれなかった。この研究の結果、検査前予防を行わないことは、安全で費用対効果の高い手段であるという選択肢だった。

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【批判的吟味】
・論文のPICOは
P:造影CT検査を受ける予定のStage 3 CKD患者
I:検査前予防なし
C:検査前予防として1時間前に炭酸水素ナトリウム 250ml
O:血清Cr値の平均増加
T:ランダム化比較試験/非劣性試験/ITT解析
・BMI 27前後、腎機能はeGFR 30-44ml/minが 全体の50%、45-59ml/minが50%程度で、Cr値も平均 1.43くらいですね。
・合併症としては糖尿病4割、冠動脈疾患 30-35%程度
・突っ込みとしては、真のアウトカムではないところでしょうか。ただ、真のアウトカムと考えられる造影剤腎症や透析などはほぼ発生していないコトを考えると、アウトカム発症率的にかなり厳しそうですので致し方ないかもしれません。
・この研究は冠動脈造影などの動脈造影の方は含まれていないので、そちらに外挿はできません。
・盲検化されていないのですが、アウトカムには患者や医師の恣意性は入りにくいものではあります。
ランダム化された人が全員ITT解析になっていない時点で、真のITT解析ではないんだけどどういたことなんでしょうねえ?

【個人的な意見】
 こうゆうのをきちんと検証するのはいつも思うけど大事です。実際にはもう少し腎機能が悪い人でも知りたい気もしますが、それでもまあ、素晴らしいですよ。少なくともeGFR 30ml/minあれば特に何もせず、造影CTとっても問題ないというところではあるでしょうねえ。

✓ 造影CT検査前に検査前予防はしてもしなくても、Cr値の変化は変わらず!

医師の教養⑲:急に具合が悪くなる その3

医師の教養第19弾!その3です

「急に具合が悪くなる」

 

引き続き、哲学者 宮野真生子さん、文化人類学者 磯野真穂さんお二人の往復書簡を読んでいます。この間、磯野さんにも動画にコメント頂き嬉しい限り。


今回は医療人類学者が医療のカタチを3つのセクターに分けているという辺りから、専門職セクターにいる我々医師について語っています。


医療のカタチを考える-急に具合が悪くなる(宮野真生子・磯野真穂著):医師の教養19(Part.3)

 

なんだかこの著者のおふたりみたいになりたい私達です。
興味のある方は是非お読み下さい!

急に具合が悪くなる

急に具合が悪くなる

 

 

2020年3月① Uptodate "What's new" 無症候性心房細動に対するAHAの科学的推奨/ACIPの小児向け予防接種スケジュール2020/卵巣癌患者での生殖細胞および体細胞腫瘍の検査

Uptodateの"What's New"今月分あげときます。

流し読みなので、興味のある人は是非原文へ!
subclinical Af(SCAF)って考え方はおもしろいですね。

①無症候性心房細動に対するAHAの科学的推奨

 無症候性心房細動(SCAF)は、心内もしくは埋め込み型、またはウェアラブルモニターによって検出され、心内心電図または心電図にリズムを記録された無症候性の心房細動エピソードと定義されている。

 American Heart Association(AHA)から最近発表された科学的推奨で、SCAFの有病率、臨床的意義、および管理をレビューし、長期抗凝固の適応に関するPro/consがあるところです。。 SCAF患者に対するUptodateのアプローチは、AHA声明に示されているものと同様です。

Noseworthy PA, et al. Subclinical and Device-Detected Atrial Fibrillation: Pondering the Knowledge Gap: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation 2019; 140:e944.
JAMA. 2020;323(6):527.

 このトピックは以前、しつこく調べれば心房細動が見つかることってあるけど、それって臨床的にどれくらい意味があるのよ?っていう疑問に対する回答でもありますねえ。 
 ちなみに、リスクはCHA2DS2-vascを使ったりしますが、30秒程度のごく短時間の心房細動がどの程度悪さをするかはよく分かっていないので、専門家によって推奨が異なるところです。

②ACIPの小児向け予防接種スケジュール2020

  予防接種実施諮問委員会(ACIP)は、米国の小児および青少年向けの2020年の予防接種スケジュールを発表した。

更新には、
・2歳から18歳までのすべての人に対するA型肝炎ワクチン接種のルーチンキャッチアップ
・リスクが高い(補体欠損・補体インヒビター使用・無脾症等)10歳以上の患者に対する血清グループB髄膜炎菌ワクチンの追加接種
・以前にTdが推奨されていた状況でのTd(破傷風およびジフテリアトキソイド)の代替としてのTdap(破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイドおよび百日咳ワクチン)
 
Robinson CL, et al. Advisory Committee on Immunization Practices Recommended Immunization Schedule for Children and Adolescents Aged 18 Years or Younger - United States, 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2020; 69:130.

 この辺りは、日本とは結構様相が異なる印象はありますが・・・少なくともHAVルーチンキャッチアップは不要かなあ。

 

③卵巣癌患者での生殖細胞および体細胞腫瘍の検査

 米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、上皮性卵巣癌(EOC)における生殖細胞系および体細胞腫瘍の検査に関する新しいガイドラインを発表した。

 新たにEOCと診断され過去にBRCA 1/2の生殖細胞変異の検査をしていた女性は、ポリADPリボースポリメラーゼ阻害剤(PARP)などの疾患特異的な治療があるため、BRCAの体細胞腫瘍検査も必要とされる。

 さらに、難治性疾患患者は免疫チェックポイント阻害の適切な候補である可能性があるため、明細胞、類内膜、または粘液性卵巣癌と診断された女性は、ミスマッチ修復欠損症(dMMR)の体細胞腫瘍検査を提供されるべきである。

Konstantinopoulos PA, et al. Germline and Somatic Tumor Testing in Epithelial Ovarian Cancer: ASCO Guideline. J Clin Oncol 2020;

 これはちょっとマニアックですが・・・。流行りのモノといえばそうですね。

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