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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

NEJM Knowledge+:20歳男性 左精巣腫脹

Knowledge+ NEJM 泌尿器

NEJMのKnowledge+です。
最近まあ忙しいこと。
イベント目白押し!準備不足しまくり。
そして、やりたいこと、足りないことだらけ。
まあ、ゆっくりやりますかね。

症例:20歳男性 左精巣腫脹

 20歳若年男性が、左精巣腫脹のフォローアップで1週間後に受診した。診察では、左精巣に円形で下腿腫瘤を触知し、大きさは2cm × 1.5cmで、リンパ節腫脹は認めなかった。
 検査結果では、AFP・βhCG・LDHは正常範囲内だった。超音波所見では、石灰化を伴う不均一な低吸収腫瘤を認めた。胸部X線は正常だった。

質問. 本患者の最も適切なマネージメントどれか

  1.   罹患精巣への外照射
  2.   根治的経陰嚢精巣切除術
  3.   術前補助化学療法
  4.   根治的高位精巣切除術
  5.   精巣温存術+腫瘍摘出術
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ACPJC:Therapeutics COPD患者でベクロメタゾン/フォルモテロールにグリコピロニウムを追加すると肺機能が改善するか

ACPJC Lancet 論文 薬剤 呼吸器

ACPJCまとめ。
グリコピロニウム=シーブリⓇですね。
フォルモテロール/ベクロメタゾンは本邦未承認の様ですが、要はICS/LABAですねえ。
ICS/LABA+LAMAの効果か・・・

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Single inhaler triple therapy versus inhaled corticosteroid plus long-acting beta2-agonist therapy for chronic obstructive pulmonary disease (TRILOGY): a double- blind, parallel group, randomised controlled trial. 

Singh D, Papi A, Corradi M, et al. 

Lancet. 2016; 388:963-73.

臨床上の疑問:
 COPD患者で、フォルモテロール(FF)+ベクロメタゾン(BDP)にグリブリドを追加することの効果と安全性は?

方法:
 デザイン:ランダム化比較試験/TRILOGY
 隠蔽化:隠蔽
 盲検:盲検化されている(患者・調査者・
臨床センター・スポンサー
 フォローアップ期間:52週間
 セッティング:14ヵ国159医療機関
 患者:40歳以上の1368人のCOPD患者(平均年齢 64歳、76%男性)、吸入後FEV1.0<50%、FEV1/FVC比<0.7、COPD Assessment test(CAT)≧10、ベースラインのDyspnea Index focalスコア≦10、過去1年間に1回以上の中等度以上のCOPD増悪既往、吸入薬としてICS/LABA・ICS/LAMA・LABA/LAMA・LAMA単剤を2ヶ月以上、2週間のBDP/FF run in periodに耐えうる方が組み入れられた。
 除外基準は、run-in period中もしくは組み入れ4週間前に増悪した患者、3剤併用療法中(ICS/LABA/LAMA)、喘息、アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、心血管疾患、検査異常、不安定な合併症。
 介入:加圧式定量噴霧式吸入による3剤併用(BDP 100μg・FF 6μg・GB 12.5μg)群 687人と、2剤併用(BDP 100μg・FF 6μg)群 681人を比較
 アウトカム:プライマリアウトカムは、26週間後の肺機能変化(吸入前および2時間後のFEV1.0)と呼吸困難感(Transitional Dyspnea Index:TDI)。
 セカンダリアウトカムは52週後の肺機能の反応性、健康状態の変化(George's Respiratory Questionaire:SGRQ)、増悪、副作用。
 患者フォローアップ:86%、ITT解析

結果:
 主な52週間後の結果は以下の通り26週間後のプライマリアウトカムも同様だった。3剤併用療法群で重篤な副作用が1例、2剤併用療法群には認めなかった。

f:id:tyabu7973:20170121164059j:plain

(本文より引用)

結論:
 COPD患者では、ベクロメタゾン/フォルモテロールにグリコピロニウムを追加すると肺機能が改善した

 まあ、まさにサロゲートアウトカム!といったところでしょうか。肺機能は有意に改善するとして、これが臨床的にどの程度意味があるかは微妙なところですね。一応、自覚症状のスコアのTDIスコアは変化なく、中等度以上の発作回数は有意に減っていますが、そちらについてのNNTはやや少なめではあります。今回のポイントは、3剤を1つの吸入器で吸入していることで、これによるアドヒアランス向上が期待できることでした。ただ、この効果が証明される研究デザインでは無いですね。
 
 TRILOGYっていうとスターウォーズのDVD boxを思い出してしまいます笑。ICSはCOPD患者の肺炎を増やすことが知られていて、LAMA/LABAはどうなのか?と言う部分も結構重要です。今後はLAMA/LABAとの検証も重要になります。

MKSAP:HAST!/テノホビル/創部処置

MKSAP

今回は諸事情あり3問でのご奉仕です!HASTって何でしょう?

 

Q1

 72歳男性。Stage3のCOPDで運動耐容能は低下しており、心不全も持っている。ニュージャージー州に住んでおり、家族のいるアリゾナ州のフェニックスに飛行機で行きたい。常用薬はリシノプリル、ヒドララジン、イソソルビド、チオトロピウム、サルメテロール、必要時アルブテロール。脈拍88以外バイタル正常。呼吸音減弱あり。心音は軽度のS3聴取。SpO2 91%(RA)、PO2 68mmHg

 

問 渡航について適切なマネージメントは?

A 渡航に飛行機は使わない

B hypoxia altitude simulation test

C 運動負荷試験

D 呼吸機能検査と6分間歩行

 

①HAST!

 適切なマネージメントは飛行中の低酸素血症を予測するためにhypoxia altitude simulation test(HAST)を施行することである。心疾患、肺疾患の既往は機内圧の低下に伴う合併症のリスクとなる。COPDでは飛行中に酸素飽和度の悪化が見られ、運動時に顕著となる。HASTでは混合低酸素ガスを20分間吸入し、機内の最低圧(上空2500m)を再現するのが狙いである。American Thoracic SocietyとEuropean Respiratory SocietyはCOPD患者で合併症がある、飛行中の症状出現既往がある、最近急性増悪した、酸素投与で低換気となる症例にはHASTを推奨している。Aerospace Medical AssociationとCanadian Thoracic SocietyはPO2<70mmHgでHASTを推奨している。PO2<50mmHgでは機内での酸素投与を推奨、55mmHg以上では不要。50-55mmHgでは運動負荷を考慮する。

②他の選択肢

 他の選択肢はリハビリテーションのプログラムだったり、呼吸困難感の程度を測れるが、飛行機による渡航評価には不適切である。

 

POINT 飛行機渡航の可否はHASTで評価

Dine CJ, Kreider ME. Hypoxia altitude simulation test. Chest. 2008;133(4):1002-1005. PMID: 18398121

 

Q2

 55歳女性。6ヶ月前からの倦怠感と運動耐容能の低下。HIV感染症の既往があり、ST合剤、アタザナビル、エムトリシタビン、テノホビルを内服している。体温36.0℃、血圧146/80、脈拍86、呼吸数18、BMI 28。超音波で腎盂石灰化なし。

Laboratory studies:

Albumin

3.8 g/dL (38 g/L)

Blood urea nitrogen

12 mg/dL (4.3 mmol/L)

Calcium

8.1 mg/dL (2.0 mmol/L)

Serum creatinine

1.3 mg/dL (115 µmol/L)

Electrolytes

 

Sodium

140 meq/L (140 mmol/L)

Potassium

2.9 meq/L (2.9 mmol/L)

Chloride

114 meq/L (114 mmol/L)

Bicarbonate

16 meq/L (16 mmol/L)

Glucose

105 mg/dL (5.8 mmol/L)

Phosphorus

1.8 mg/dL (0.58 mmol/L)

Venous blood gas studies:

 

pH

7.32

PCO2

36 mm Hg (4.8 kPa)

Urine studies:

 

Urinalysis

Specific gravity 1.012; pH 5.1; no blood; trace protein; 1+ glucose; no ketones, nitrites, or leukocyte esterase

Urine protein–creatinine ratio

0.525 mg/mg

 

問 適切なマネージメントは?

A テノホビル中止

B ST合剤中止

C 乳酸値測定

D 便の下剤スクリーニング

 

①尿細管性アシドーシス

 テノホビルを中止すべきである。この患者はテノホビルによるType2の近位尿細管性アシドーシスである。尿pHが5.5以下であることは遠位尿細管機能が残存しており尿の酸性化が行われていることを示している。血糖値正常で、尿細管性の蛋白尿、低リン血症のある尿糖陽性患者は、近位尿細管からリンが再吸収できておらず、この患者は近位尿細管性アシドーシスが最も考えられる。アルカリ化療法への反応が診断の鍵となる。近位尿細管だと10-15mEq/kg/dのアルカリ化補正が必要だが、遠位尿細管では1-2mEq/kg/dのみでよい。テノホビルによる腎障害は尿細管のミトコンドリアDNAに対する障害と考えられている。投与中の患者では腎機能をフォローし、腎障害時には減量中止を検討する。腎障害は数週から数ヶ月で改善することが多いが、恒久的に残存することもある。

②他の選択肢

 ST合剤中のトリメトプリムは高カリウム血症は起こすが低カリウム血症にはならない。トリメトプリムは特に酸性尿下で皮質集合管のナトリウムチャネルを阻害し、カリウム、水素イオンの排泄を障害するため、高カリウム血症、アシドーシスが起きる。起きやすいのは高容量の場合やRAS系阻害薬を併用している場合である。また、クレアチニンの排泄も抑制し最大0.5mg/dlの上昇を来すが、真の腎障害を反映していない。

 乳酸は正常代謝では蓄積しないが、産生増加や代謝障害で上昇する。アニオンギャップの上昇する代謝性アシドーシスを引き起こすが、この患者のアニオンギャップは正常である。

 下剤の乱用は、HCO3喪失が低カリウム血症によるアンモニア産生を超えるとアニオンギャップ正常のアシドーシスを引き起こす。近位尿細管性アシドーシスで起きるような尿糖や低リン血症は説明できない。

 

POINT 高K×アシドーシスはRTAか下痢

Unwin RJ, Luft FC, Shirley DG. Pathophysiology and management of hypokalemia: a clinical perspective. Nat Rev Nephrol. 2011;7(2):75-84. PMID: 21278718

 

Q3

 80歳女性。足の裂傷で受診。前日ベッドの角に足をぶつけて皮膚が切れた。創部の処置について相談に来た。既往にリウマチ性多発筋痛症がありプレドニゾンを毎日飲んでいる。右下腿前面に2㎝の水平裂傷を認める。周囲の皮膚は紫色調で薄い。紅斑はなく、破傷風のワクチンはup to date。

 

問 治療は?

A ヒドロコロイドドレッシング

B ワセリンと粘着性のないドレッシング

C 3種の抗菌薬軟膏と粘着性のないドレッシング

D 開放創にする

 

①創部処置

 商業的に様々なドレッシング材が世に出ているが、単純で、コスパの良い処置はワセリンと粘着性のないドレッシングである。この患者は皮膚が萎縮しており、粘着性のあるドレッシング材では周囲の皮膚を障害する可能性がある。被覆の際は弾性包帯やガーゼを用いる。

②他の選択肢

 ヒドロコロイドやヒドロゲル、アルギン酸カルシウムなど新しいドレッシング材は多く、褥瘡のような複雑な創部の改善が得られるが、高価であり、単純な創部には不要である。

 抗菌薬の使用は全例では必要なく、バシトラシンやネオマイシンは接触性皮膚炎のリスクとなる。耐性化も問題である。

 創部の乾燥は治癒を遅らせ、閉じた創部より不快である。

 

POINT 単純な創部は安価で治すべし

Gist S, Tio-Matos I, Falzgraf S, Cameron S, Beebe M. Wound care in the geriatric client. Clin Interv Aging. 2009;4:269-287. PMID: 19554098