栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

症例:CCJM 55歳男性 両下肢関節痛・有痛性皮膚結節

case report。
ENの鑑別疾患として考えてしまいそうですね。
実際、この症状があってもこの診断には至らなそう・・・

症例:55歳男性 両下肢関節痛・有痛性皮膚結節
Cleve Clin J Med. 2018 Oct;85(10):752-753. doi: 10.3949/ccjm.85a.18062.

 55歳男性。1週間前から両下肢の関節痛と有痛性皮膚結節で救急外来を受診された。既往歴は慢性的なアルコール多飲と繰り返すアルコール性急性膵炎。今回は、腹痛・悪心・嘔吐なし。身体診察では、両側足首と膝の滑膜炎があり、両下腿に直径0.5-1.0cm程度の円型の紅斑性結節が認められた。

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(本文より引用)

血液検査結果では、ALP 300IU/L、ESR 81mm/h、Lipase 20000IU/Lだった。下腿皮膚病変の生検では、皮下脂肪の小葉壊死を認めており、膵臓脂肪織炎の所見と同様だった。

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(本文より引用)

 CT検査では、仮性膵嚢胞および膵管拡張を伴う慢性膵炎の急性増悪だった。血清Lipaseの持続的上昇および画像診断での膵管拡張があり、悪性腫瘍の評価のためにERCPが施行された。結果、膵管狭窄および拡張を認めた。

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(本文より引用)

 ブラシ細胞診では膵・胆道悪性腫瘍は否定的だった。膵管拡張に対してステント留置を行い、脂肪織炎と関節炎は改善し、血清Lipaseは正常化した。
 3ヶ月後のフォローアップでは、無症状で膵炎・脂肪織炎・多関節炎は再発していなかった。

質問. 診断は?

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症例:Lancet 4歳男児 耳が赤い

case report。
これ確かに鑑別!と言われると困るかも。

症例:4歳男児 耳が赤い
Lancet. 2004 May 1;363(9419):1421.

 4歳男児。モロッコ人の少年。両側軟骨骨膜炎を疑われ外来受診。耳輪は腫大し、耳介軟骨の途中で正常皮膚と境界が明瞭だった。
 血液検査では自己免疫性疾患なし。

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(本文より引用)

質問. 診断は?

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論文:RetroCohort 12月のクリスマス休暇中に退院した患者の死亡・再入院

クリスマス休暇は欧米の文化ではありますが、今回はクリスマス休暇に関する知見です。日本では年末年始休暇に置き換えられるかもしれませんね。日本だと気になるのは次のGWの10連休ですかねえ。

ちなみに、海外ではクリスマス休暇として2週間程度が割り当てられているみたいです。この時期に多いのはインフルエンザや気道感染症だそうで、これは日米問わずですなあ。

さて、休暇中も通常の病院診療は継続されていますが、外来はストップしています。外来での適切なタイミングでのフォローアップは、患者教育・薬剤レビュー・検査結果のディスカッションなどを提供することで、慢性疾患患者の再入院減少と関連していると言われています。

クリスマス休暇以外でいえば、「週末入院効果」は複数報告されており、平日の入院患者と比較して週末入院患者の方が死亡率が増加します。一方退院日の影響もまた重要になりますが、こちらの方が研究数は少ないです。

例えば週末に退院した患者は、平日退院した患者よりも若く、合併症が少なく、入院期間が短いと言われています。

ということで、クリスマス休暇中に退院した患者がどんな患者かどうかを調査したということです。

12月のクリスマス期間に退院した患者の死亡・再入院
Death and readmissions after hospital discharge during the December holiday period: cohort study

BMJ 2018;363:k4481

【目的】
 12月の休暇期間に退院した患者が、他の時期に退院した患者よりも外来フォローアップが少なく、死亡や再入院率が高いかを評価する
【デザイン】
 人口ベースの後ろ向きコホート研究
【セッティング】
 2002年の4月1日から2016年1月13日までのカナダオンタリオ州の救急病院
【患者】
 12月のクリスマス休暇に退院した小児・成人21万7305人と11月下旬と1月の2期間中に退院した小児・成人45万3641人を比較した
【メインアウトカム】
 プライマリアウトカムは、30日以内の死亡と再入院。
 セカンダリアウトカムは、退院7-14日以内の死亡または再入院、医師の外来フォローとした。
 多変量ロジスティック回帰分析をもちいて、患者・入院・病院特性を調整した
【結果】
 クリスマス休暇中に退院した21万7305人(全体の32.4%)とコントロール期間に退院した45万3641人(67.6%)は、ベースライン特性および医療利用状況は同様だった。
 休暇期間中に退院した患者は、医師の外来フォロー頻度は、7日以内(36.3% vs 47.8%,調整オッズ比 0.61:0.60-0.62)、14日以内(59.5% vs 68.7%,調整オッズ比 0.65:0.64-0.66)ともに少なかった。
 休暇期間中に退院した患者は、30日死亡および再入院リスクが高かった(25.9% vs 24.7%, 調整オッズ比 1.09:1.07-1.10)。相対的増加は7日目にも14日目にも認められた。
 10万人患者に対して、14日以内の外来フォローアップは2999人減り、26人が余計に死亡し、188人が余計に再入院し、483人が救急外来を受診する結果となった。
【結論】
 12月の休暇期間中に退院した患者は、迅速な外来フォローアップを受ける可能性が低くなり、30日以内の死亡・再入院リスクが高まる

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【批判的吟味】
・論文のPECOは
P:急性期病院を退院した患者
E:12月のクリスマス休暇中
C:11月もしくは1月の退院患者
O:外来フォロータイミング、30日以内の死亡・再入院
T:後ろ向きコホート研究
・年数を追う毎に、休暇退院は減ってきている、年齢層は若年から成人まで満遍なく、女性 40%前後、平均入院期間 3日、CCI 0が最も多い
・絶対数は最後に表示されています。
・原因として、休日の退院はスタッフ数が少ないことで十分なケアができていない可能性、外来フォローアップが適切に取れない可能性などが報告されている
過去の研究で退院後アウトカムとの関係が報告されているのは、入院期間・合併症・過去の救急外来受診であり、それらは調整されていますが、それ以外の交絡因子は明らかになっていません
・旅行してその地域にいないので、死亡・再入院が過小評価されている可能性があります
・フォローアップ率はその地域の文化によって多少異なる可能性があります

【個人的な意見】
 非常に興味深いですね。年末年始の退院を決めるにあたって、参考になるデータですね。冬休み中の退院患者のバンドルのひとつに組み入れてみますかねえ。
 最後のコメントが秀逸で、
「Discharged patients, unlike unwanted gifts, should not be returned after the holidays.」
「不要な贈り物とは違って、退院患者は休暇中に病院に返却すべきではない」
だそうです。

✓ 12月の休暇期間中に退院した患者は、迅速な外来フォローアップを受ける可能性が低くなり、30日以内の死亡・再入院リスクが高まる