栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

ACPJC 診断 急性の呼吸不全患者で肺エコーは胸部X線よりも感度高く心原性肺水腫を診断できる

ACPJC紹介です。
肺エコーやってますか?
以前から報告されていた胸部X線との比較のSRです。

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Maw AM, Hassanin A, Ho PM, et al.
Diagnostic accuracy of point-of- care lung ultrasonography and chest radiography in adults with symptoms suggestive of acute decompensated heart failure: a systematic review and meta-analysis. 
JAMA Netw Open. 2019;2: e190703.

臨床疑問:
 急性の呼吸困難感を呈している成人では、POCの肺エコー検査は胸部X線と比較して心臓肺水腫の診断に有用か?

レビュー範囲:
組み入れ基準:急性の呼吸困難患者を対象に肺エコーと胸部X線両方を行って心原性肺水腫をアウトカムに診断した研究を組み入れた。感度・特異度を計算されている研究が対象。
Gold standard:専門医が電子カルテで評価した病歴・心臓超音波結果・BNP値で判定した
レビュー結果:
検索範囲:MEDLINE、EMBASE/Excerpta Medica、Cochrane Library、ClinicalTrials.gov等が2018年5月までに検索され、前向き観察研究が検索された
検索結果:6個の研究(n=1827人、平均71-81歳、女性46-54%)が組み入れられた。4研究が救急外来、2研究が内科病棟だった。2研究が肺エコー結果以外は全て盲検化しており、4研究が臨床情報以外は盲検化していたが、ベッドサイドの情報は盲検化できなかった。胸部X線情報は全て盲検化されていた。

結果:
 20-62%の患者が心原性肺水腫と診断された。診断特性は以下の通りで、肺エコーは感度88%、胸部X線は73%だった。特異度はどちらも90%。相対的感度比は1.2(1.08-1.34)と肺エコー群で胸部X線群より有意に感度が高かった。

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(本文より引用)

結論:
 急性の呼吸困難感を呈している成人では、POCの肺エコー検査は胸部X線と比較して心臓肺水腫の診断の感度が高い

 この辺りはかなり常識になりつつありますが、SRで検証されたということです。それでも感度88%なので12%は見逃すという事実も重要かも知れません。このSRでは研究の一貫性がそれほど高くないのでバイアスが入っている可能性はあります。実際肺エコーの感度も58%-97%とかなりばらつきが見られるため、陽性閾値をどう設定するかが研究間で異なっているのもポイントかもしれません。
 臨床医のスキルというのが大きなポイントになりそうですので、まずは肺エコースキルの標準化と経験が重要になると思います。

✓ 急性の呼吸困難感で来院した患者では肺エコーを

症例:BMJ 高齢男性 半分だけ赤い・・・

case report。
夏らしい症例・・・でもないですね。
とはいえこれびっくりするなあ。
一応イギリスの話らしいです。

症例:高齢男性 半分だけ赤い・・・
BMJ 2016;352:i18 doi: 10.1136/bmj.i18

 高齢男性。夏場に心不全で入院治療を受けていた。入院病床は窓際だった。入院経過中に左半身に徐々に悪化する紅斑を認め、最終的に水疱形成が認められた。

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(本文より引用)

質問. 診断は?

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論文:Cohort 診察室および自由行動下血圧と死亡・心血管イベント

 現時点で血圧を評価するためには、自由行動下血圧が各国のガイドラインで満場一致で推奨されています。一方で、いったいどのタイミングの血圧値が健康への悪影響と関連しているか?という問題については未だ未解決の問題とされています。
 例えば、血圧サーカディアンリズムが正常であれば、夜間血圧は昼間の覚醒時と比較して10-20%程度は低下し、このパターンをdipper型と呼びます。夜間の血圧低下が少ないタイプはnon dopper、逆に夜間に血圧上昇がある場合にはriser型と言います。riser型はいわゆる仮面高血圧としても知られています。

 過去のいくつかの研究では、心血管リスクと最も関連したのは夜間の高血圧であると報告されています。また、non dipper型やriser型もリスクになるということも知られています。最近では24時間持続血圧測定があるので、こういった時間毎の血圧測定も比較的容易になってきています。

 今回は、こういった血圧の測定方法の違いが実際の死亡や心血管リスクとどの程度関連するかを評価しています。

診察室および自由行動下血圧と死亡・心血管イベントAssociation of Office and Ambulatory Blood Pressure With Mortality and Cardiovascular Outcomes

JAMA. 2019;322(5):409-420. doi:10.1001/jama.2019.9811

【背景】
 血圧は、全死亡と心血管死亡と心血管アウトカムのリスク因子である。ただし、どの血圧値(index)がこれらのアウトカムと最も関連しているかは不明である。
【目的】
 各血圧indexと死亡および心血管複合イベントとの関連を評価する
【デザイン】
 1988年5月から2010年5月まで、ヨーロッパ・アジア・南アメリカで観察された1万1135人の成人の縦断的人口ベースコホート研究(最終フォローは2016年10月)
【曝露】
 観察者もしくは外来の自動血圧計で測定された血圧値。血圧値は24時間測定・日中もしくは夜間血圧・低下率(dipping ratio : 夜間値 ÷ 昼間値)
【メインアウトカム】
 多変量調整ハザード比(HR)は、血圧の20/10mmHg上昇と死亡または心血管イベントのリスクを表した。
 心血管イベントには、心血管死亡率と非致死的冠動脈疾患、心不全、脳卒中が含まれていた。リスク
【結果】
 参加者1万1135人のうち、年齢中央値 54.7歳、女性 49.3%だった。中央値 13.8年のフォローアップ期間中に 2836人(18.5/1000人)が死亡し、2049人(13.4/1000人)が心血管イベントを経験した。どちらのアウトカムも全ての収縮期血圧indexと有意に関連していた。
 夜間の収縮期血圧値は、総死亡のHR 1.23(1.17-1.28)、心血管イベントのHR 1.36(1.30-1.43)だった。
 24時間の収縮期血圧高値は、総死亡のHR 1.22(1.16-1.28)、心血管イベントのHR 1.45(1.37-1.54)だった。
 他の様々な交絡因子を調整したが、夜間収縮期血圧および24時間の収縮期は統計学的にも有意なままだった(HR 1.17-1.87)
 収縮期血圧指数を含む基本モデルでは、死亡率のAUCが0.83、心血管イベントのAUCは0.84だった。夜間または24時間の収縮期血圧を追加したモデルでは、死亡率のAUCが有意に改善した。それ以外の血圧index(日中や外来血圧)では、AUCは改善しなかった。拡張期血圧についても同様の結果が得られた。
【結論】
 この人口ベースのコホート研究では、24時間および夜間の血圧値が高いほど、死亡リスクと心血管リスクが大きく関連した。他の診察室血圧や自由行動下血圧の調整後も同様の結果だった。
 統計学的には、24時間および夜間の高血圧は、心血管リスクを推測するための最適な測定方法と考えられる。
 

f:id:tyabu7973:20190811201725p:plain(本文より引用)

【批判的吟味】
・論文のPECOは
P:International Database on Ambulatory Blood Pressure in Relation to Cardiovascular Outcome (IDACO)コホートに参加している13カ所の人口ベースコホートで同地区の居住している成人男性
E/C:血圧値毎の比較(通常の血圧測定、外来の自動血圧測定、24時間血圧、昼間血圧、夜間血圧)
O:死亡・心血管イベント
T:人口ベースの観察研究
・日本の人口コホートも含まれており岩手県花巻市大迫地区の血圧コホートが含まれています

http://jals.gr.jp/cohort/c004.html

・患者背景として、喫煙率 27.3%、アルコール摂取率 56.3%、既往歴としての高血圧 43.7%、脂質異常症 20.3%、糖尿病 7.6%、心血管疾患既往 11.6%、BMI 25.5となっています。
・血圧値は原則ベースラインのみ記録され、その後の時間による変化は記録されていないことはこの研究の大きな限界です。

【個人的な意見】
 外来で血圧を測っている人にとっては、この血圧値の解釈はなかなか悩ましい問題かもしれません。見方を変えれば、24時間血圧を測定しないと心血管アウトカムを予測する血圧値を得ることはできないと考える事ができるかもしれないからです。
 まあ、過去の知識とそれほど違う結果というわけではないのですが、あらためて勉強になりました。

✓ 24時間血圧および夜間高血圧は心血管イベントおよび死亡のリスク