栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Cohort 肝細胞癌患者に対する従来の肝動脈化学塞栓療法を施行した際の、持続的な応答期間と生存期間の関係

担当患者さんで繰り返しTACEを行う状況になることは時折あると思います。
比較的長期生存期間を保ちながら経過を見ている方もいますが、本当に意味があるのかなあ?と思いつつ、若干モヤモヤしながら繰り返していました。

もちろん、HCCの治療は多彩であり、治療の特性や個数、大きさ、肝予備能などを基に治療法が選択されます。
TACEはそのメインストリームではありますが、その治療への反応性が全死亡と関連するのか?というのが今回のテーマです。

肝細胞癌患者に対する従来のオ肝動脈化学塞栓療法を施行した際の、応答時間の延長と生存期間の関係
Association of Sustained Response Duration With Survival After Conventional Transarterial Chemoembolization in Patients With Hepatocellular Carcinoma

JAMA Network Open. 2018;1(6):e183213. doi:10.1001/jamanetworkopen.2018.3213

【背景】
 従来の肝動脈化学塞栓療法(cTACE)後の肝細胞癌患者において、生存期間に対する信頼性の高いサロゲートエンドポイントを定義することは非常に重要である
【目的】
 intermediate type HCCに対するcTACE後の持続的な応答期間(Sustained response duration:SRD)と全生存率(OS)の関係を評価する
【デザイン・セッティング・患者】
 中国の多施設コホート研究で、プライマリコホートとして2000年6月1日から2008年12月31日までに、無治療のintermediate HCCを連続的に2403人組み入れた。Validationコホートでは、2011年1月1日〜2012年6月30日までに331人のintermediate HCC患者が組み入れられた。
 全ての患者が初期治療としてcTACEを施行された。初期反応は最初の放射線学的反応、最良の反応は、2回以上のcTACEセッション後の最良の放射線学的応答と定義された。CRもしくはPRを治療反応患者とし、持続的な応答期間(SRD)は、CR・PRまたは安定期の患者がcTACE後に進行期に移行するまでの時間とした。治療反応性は修正RECSTで評価された。これらの患者情報は2018年1月1日〜3月31日まで収集され、データ分析が2018年4月に行われた。
【メインアウトカム】
 全生存率
【結果】
 2734人の患者(男性 91.4%、平均年齢 56.5歳)が解析に組み入れられた。プライマリコホートでは6ヶ月以上の持続的な応答期間はcTACE後の5年生存率に強く相関した。
 6ヶ月以上の持続的な応答期間のある患者(男性 387/430人、平均年齢 57歳)は、平均 67.7か月と最も長い生存期間を有していた。
 初期治療への反応患者(男性 760/874人、平均年齢 56歳)では、平均55.8か月だった。
 最良の反応患者(男性 939/1032人、平均年齢 57歳)では、平均53.2か月だった。
 6か月以上の持続的な応答期間は、全生存率に対する独立した強力な予後予測因子だった(HR 0.145:0.124-0.170)。この結果はValidation cohortでも確認された。
【結論】
 6ヶ月以上の持続的な応答期間は全生存率と関連し、intermediate HCCのcTACE後のサロゲートエンドポイントとして役に立つ可能性がある

【批判的吟味】
・今回のPECOは
P:cTACEを受けたintermediate HCC患者
E/C:6ヶ月以上の持続的な応答期間 vs 初期反応 vs 最良反応
O:全生存率
T:コホート研究
・HCCについては、国際的にはBCLC(バルセロナ臨床肝臓癌)病期分類が用いられていて、この対象患者が非常に幅広いのが問題点とされています。

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https://www.researchgate.net/figure/The-Barcelona-Clinic-Liver-Cancer-BCLC-staging-system-for-HCC-M-metastasis_fig1_233806570より引用)
・何故か男性が90%でした。また、HBV陽性が2000人前後で圧倒的にHBV関連のHCCが多い結果でした。
・今回分かった予後不良な因子として、AST>40 HR 1.357、腫瘍>5cm HR 1.802、腫瘍数>3個 HR 1.840という結果でした。
・ もちろん、初期反応良好群も最良反応群も予後は良い結果です。
・治療反応性の評価はCTでもMRIでも良いとされたため評価がまちまちだった可能性があります。
・cTACEの手技の標準化がなされていたかもlimitationとされていました。

【個人的な意見】
 興味深い結果でした。生存率との関連もさることながら、6か月安定していれば平均余命が67.7か月というのは説明の時に使えそうな疫学情報です。あと5年平均である、ということであれば、その後のことを色々考えられますよね。大事な情報でした。

✓ 6ヶ月以上の持続的な応答期間は全生存率と関連し、cTACE後のサロゲートエンドポイントとして役に立つ可能性がある

ACPJC 治療:プロカルシトニンガイドの抗菌薬処方は救急外来で下気道感染疑いの患者での抗菌薬使用を減らさなかった

ACPJC紹介です。
プロカルシトニンが良いって言っている論文が過去にはありましたが、基本的には懐疑的でした。というか、もう何年もプロカルシトニンという検査をオーダーしていませんが、何も困ったことはありません。

抗菌薬使用はその方向性ではなくても減らせると思っています。
今回は、下気道感染疑いの患者なのですが、臨床医が抗菌薬を処方するかどうかを悩むときとされていて、この悩むポイントは臨床医によって多少異なるかもしれませんね。
 何はともあれプロカルシトニンが抗菌薬使用を減らせるか?という話題です。

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Huang DT, Yealy DM, Filbin MR, et al; ProACT Investigators.

Procalcitonin-guided use of antibiotics for lower respiratory tract infection.

N Engl J Med. 2018;379:236-49.

臨床疑問:
 下気道感染疑いで救急外来を受診した患者において、プロカルシトニンガイドの抗菌薬処方戦略は抗菌薬曝露を減らすことができるか?

方法:
デザイン:ランダム化比較試験(Procalcitonin Antibi- otic Consensus Trial [ProACT])
隠蔽化:あり
盲検化:盲検化(データ収集・データ解析)
フォローアップ期間:30日
セッティング:米国 14病院
患者:1664人の18歳以上の成人(平均53歳、57%女性)が、初期診断が急性の下気道感染で救急外来を受診し、臨床医が抗菌薬を与えるかどうか不確かである患者。
 除外基準は、28日以上の症状持続期間、細菌感染以外のPCT上昇を来す病態、医師が恐らく抗菌薬を保留するだろう状態

介入:
PCTガイドの抗菌薬治療群 830人、通常ケア 834人。PCTガイド群では、救急外来で採血が施行され、PCT値とPCTに基づいた処方ガイドラインが提供された。入院した患者では7日目までに追加のPCT値が提供された。通常ケア群では、入院時に採血が施行されたが、PCT値は提供されなかった
アウトカム:30日間の抗菌薬曝露
 安全性のアウトカムは、下気道感染患者の抗菌薬保留に起因する有害事象とした。具体的には、それぞれ30日後の死亡、気管内挿管、昇圧剤使用、腎不全、肺膿瘍/膿胸、ベースライン時にはなかった肺炎、再入院とした。
 中間解析で追跡調査期間中に18%の追跡損失があり、通常ケア群では11%有害事象が認められた。

患者フォロー率:81%、ITT解析あり

結果:

 結果は以下。 

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(本文より引用)
 臨床医は救急外来で73%、7日目までに65%がPCTのガイダンス推奨に従った

結論:
 下気道感染疑いで救急外来を受診した患者では、PCTベースの抗菌薬処方は抗菌薬曝露を減らさなかった

 今回の試験は、過去最大規模のサンプルサイズであること、十分な追跡期間があること、複数の施設が関与していることなどが強みとされています。
 抗菌薬の適正使用に関して、特定の検査結果のみに焦点をあてる介入では不十分であることが示唆された形です。”抗菌薬の処方”に関しては、多くの側面があり、より包括的な抗菌薬スチュワードシッププログラムが必要になります。
 医師が共通のビジョンを共有して、慎重に選択して治療に当たることをサポートする教育体制を整えていくことが重要です

✓ 下気道感染疑いで救急外来を受診した患者では、PCTベースの抗菌薬処方は抗菌薬曝露を減らさなかった

論文:Retrocohort 内科レジデントの診断検査オーダーの癖がすごい!

タイトルはあまり気にしないで頂いて・・・
でも、色々な初期研修先から後期研修医を引き受けるようになって思うことは癖がすごい!ということ笑

同じ疾患・病態を診ても、それによってオーダーされる検査の内容や頻度がかなりばらつきが多いです。もちろん、画一化された遊びのない診療はどうかな?と思うこともありますが、それにしてもですね。

まあかくゆう我々も癖がかなりありそうですが笑
こういった癖の特性を知ること、癖のない検査オーダーってどんなだろう?と考えたりします。
UptodateⓒのPathwaysとかはまさにここをEvidence basedに解決する方法ですよね

www.uptodate.com


当院でも時折K先生がオーダー率とかを出して、癖について発表していますが、今回はその実態調査です。是非ご覧下さいませ。

キーワードはケアの標準化とhigh value careでしょうか。
本文では、imprintingとかsustained influenceとされていて、ここに”慣性の法則”は働きそうな予感です。

内科レジデントの診断検査オーダーの癖がすごい!
Analysis of Diagnostic Test Ordering Habits Among Internal Medicine Residents

JAMA Intern Med. 2018 Oct 8. doi: 10.1001/jamainternmed.2018.3519.
【方法】
 今回New Yorkのプレスビテリアン病院およびWeill Cornell医療センターに勤務している内科レジデントの診断検査が電子カルテで評価・分析された。
 対象となった内科医139名の2016-2017年の研修期間中の総検査数と患者一人辺りの平均検査数をレジデント毎に比較した。
 研究についてはWeill Cornell医療センターの審査委員会が全てのデータが識別不能であることを確認し承認した。
【結果】
 New Yorkのプレスビテリアン病院の内科レジデンシープログラムでは、合計13469人の入院患者のうち10707人に検査がオーダーされた。このうち血液検査項目が57万9935件、放射線検査が29881件施行された。
 最も血液検査をオーダーしたレジデント(検査件数 1万3604件)は、最も少なかったレジデント(検査件数 1870件)よりも7倍多いという結果だった。
 患者一人当たりの検査で最も多く検査をオーダーしたレジデントは一人あたり41.2件の検査を行ったのに対して、最も少なくオーダーしたレジデントは9件の検査で、およそ4.6倍の差が生じていた。
 最も放射線検査をオーダーしたレジデントは826件で、最小は104件でこちらは約3倍だった。

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(本文より引用)

 卒後年数と検査件数の関係には相関関係が認められたが、放射線検査ではその関係は認められなかった。
 総件数も患者一人あたりの件数も、血液検査オーダー数と放射線検査オーダー数には強い相関が認められた。
【結論】
 レジデントの検査オーダー数は個人差が非常に大きい。血液検査は学年とともに減るが、放射線画像は学年は関係ないかも  

【批判的吟味】
・論文のPECOからみていきます
P:New Yorkプレスビテリアン病院の内科レジデント
E:
C:
O:2016-2017年にオーダされた検査件数
T:後ろ向き観察研究
外れ値の問題はありますが、それを外したとしても予測変動よりも変動幅が大きかったと報告しています
・1年目レジデントのローテートスケジュールなども考慮されたようでしたが、その差が大きいということもなかったようです。
・学年の差はありそうとしながらも、最も多く検査をオーダーした医師Top3は各学年1人ずつであり、単なる学年の差とはしにくいかと思います。
・ただ、少ないほど良いのか?というのは微妙な所で、適正な検査数が分かっていないので、単純な評価は御法度です。
検査のオーダーは研修施設による影響を受けやすいと思われますが、今回研修施設を揃えたこの変動幅の要因は他に何があるか?というのは今後の研究課題です。

【個人的な意見】
 興味深い結果ですね。同じ研修施設でこれだけ違うとなると、あと考えられるのは、卒業大学・指導医毎の差・患者のバラエティーなどでしょうか。今後の検証に期待!
 あと、検査も放射線検査もTop1が2年目のレジデントだったの

だったのは気になりました。多分同一人物だろうなあ・・・

✓ 内科レジデントの検査オーダー数はかなりバリエーションがある