栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:静脈洞血栓症/閉塞解除後利尿/野菜ジュースのアドバイス

カンファ内容です〜。
ちょっと2週分まとめてタイムマシーンの様に振り返り。

静脈洞血栓症 Cerebral venous sinus thrombosis

 毎回そうですが、忘れた頃にやってくる疾患です。illness scriptとしては、

 ”比較的若年で、頭痛を伴う脳卒中症状があるのに、典型的な脳梗塞の画像所見を呈さない患者”

という見立てをしています。

 全脳卒中の0.5-1.0%を占めるので、まさに忘れた頃にやってきます。更には、遺伝性・後天性の凝固異常症が関連します。もちろん、プロテインCとかSとか、ATⅢとか重要ですが、個人的には経口避妊薬(ピル)内服を内服している方が多いかもしれません。

 臨床症状としてのポイントは、①頭蓋内圧亢進症状と②脳実質の虚血/出血症状とに分けられ、その両者が存在するということです。頭蓋内圧亢進症状は頭痛が主で全体の90%に見られるとされ、乳頭浮腫や複視(外転神経麻痺)が併存した場合には更に注意が必要になります。また、後者の虚血症状としては片麻痺・失語が多いです。
 
 更には痙攣の合併が約40%に見られたり、視床合併に伴う局所症状なしの意識障害も合併し、問題を更に複雑にしています。

 ✓ 静脈洞血栓症は忘れた頃にやってくる


 

閉塞解除後利尿 Postobstructive diuresis

 尿閉解除後に急性に利尿がついてしまうことを、閉塞解除後利尿といいます。彼の国ではPostobstructive diuresis(POD)と呼ぶ模様です。

 定義として、尿閉解除後に大量の尿排出があることとされ、尿量>200ml/時が2時間以上持続することを一つの基準にする様ですが、多くは1日あたり3L以上と一気に利尿がつきます。

 ほとんどの病態は24-48時間で自然改善し、特別な治療は必要としませんが、時折、遷延することもあり水分と電解質のバランスに注意しながら経過を見ていく必要があります。この生理学的PODから病理学的PODに移行するか否かがひとつ重要なポイントです。48時間を超えて過度な利尿が続く場合には、病理学的PODと考えます。

 頻度は報告によって幅があり、0.5%という報告から52%というものまで幅広いです。機序としては、蓄積された過剰なナトリウムおよび水分が排出されると多尿になり、重度の膀胱収縮および低カリウム血症が引き起こされると言われていますが、厳密な機序はよく分かっていません。

✓ 閉塞解除後利尿は生理学的と病理学的に分類する

 

野菜ジュースのアドバイス Advice for vegetable juice

 興味深いアドバイスの話題をば。

”お酒飲みすぎですよ〜。お酒飲むくらいなら野菜ジュース飲みましょうよ!”

 一見悪くなさそうですが・・笑
 実はアルコール性肝硬変で慢性腎臓病を合併している患者さんだったとします。真面目な患者さんは、お酒をやめてくれるかもしれません(大概は退院後再飲酒となりますが・・・)。さて、野菜ジュースはどうでしょうか?

 実は野菜ジュースってもの凄い量のカリウムが含まれています。腎臓内科の先生にとっては当たり前かもしれませんが・・・野菜ジュースは実は1本あたり400mg程度含まれています。更に最近流行の健康志向の野菜ジュースの場合、700mgほどとも言われています。これは700mgですね笑。カリウムの一日摂取量の目安は2000-2500mgですからね。

カゴメ 野菜一日 これ一本 200ml×24本

カゴメ 野菜一日 これ一本 200ml×24本

 

  これを一日5本でも飲んでしまうと、カリウムを3500mgも摂取してしまうことになり、あっと言う間に高カリウム血症になってしまいます。

 他に注意すべき食品や飲み物として、
・バナナ1本 350-400mg
・アボガド1個 700-1000mg

・赤ワイン 110mg/100cc
・日本茶(玉露) 340mg/100ml
・無調整豆乳 380mg/200cc
・ココナッツウォーター  470mg/500ml
あたりでしょうか。

さあ、皆様食事指導に生かしましょう。

  ✓ 食事中のカリウム含有は結構重要。野菜ジュースは生野菜より心配かも

地域医療ジャーナル 4月号:変質しつづける学びのカタチ

4月号発行されました。
今月のテーマは「変質しつづける学びのカタチ」です

cmj.publishers.fm

 

 

以下本文Editorialより

学びのカタチが変わっている―これは最近よく感じることです。

百聞は一見にしかず。 分厚い解説書を読破するよりも、インターネットの解説を参照したり、youtubeの動画解説を見たほうが効率がよいこともあります。

学びの本質は変わっていない、ということに異論はありません。
しかし、その学び方が変質しつつあることは、もう認めざるを得ないでしょう。

それは進化か、退化か。 効率を追求した学びのカタチはいいことなのか、答えはすぐにはわからないものです。
少なくとも、これまで長期間膠着してきた世界からは、前進しているように思えます。

従来の学びのカタチを無批判に受け入れるのではなく、新しいものを取り入れ工夫していきたいものです。

今月号もぜひごゆっくりお楽しみください。

うーむ。深いな。そして相変わらず私のはさっくりです笑
常識でしょうか?否でしょうか?
こうゆうのの実態はちょっと興味ありますね。

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興味のある方は是非ご購読くださいませ。
それではまた来月お楽しみに。

ACPJC:Therapeutics 生命予後が限られた疾患患者で、緩和ケア介入は1-3ヶ月後のQOLと症状負担を軽減するが死亡率には影響しない

ACPJCです。
緩和ケアのエビデンス。QOL改善に良いとのシステマティックレビュー。

f:id:tyabu7973:20170414002839j:plain

Association between palliative care and patient and caregiver outcomes: a systematic review and meta-analysis. 

Kavalieratos D, Corbelli J, Zhang D, et al. 

JAMA. 2016;316:2104-14.

臨床上の疑問:
 生命予後が限られた疾患患者で、緩和ケア介入は患者および介護者のアウトカムを改善するか?

レビュースコープ:
 英語の研究で、2つ以上の緩和ケアドメイン(身体的・心理的・社会的・構造的・精神的・法的・終末期・文化的)の介入がある緩和ケア介入と通常介入を比較した18歳以上の生命を脅かす疾患に罹患した成人対象の研究。また、QOL・症状の負担・気分・死亡率・事前ケア計画・死亡場所・医療資源利用・費用または満足度が報告されている研究。
 除外基準は、単一症状がアウトカムになっている研究や介護者のみを対象としている研究。

レビュー方法:
 MEDLINE・EMBASE/Excerpta Medica・CINAHL・Cochrane CENTRALで2016年7月までランダム化比較試験を検索した。

 43件のRCT(12731患者、2479介護者、平均年齢 67歳)が組み入れ基準を満たした。30RCTが悪性腫瘍の研究で、14研究が心不全対象だった。14RCTが外来セッティング、18RCTが自宅、11RCTが病院だった。
 バイアスリスクが低い研究は、ランダム割り付けが36RCT、隠蔽化が25RCT、客観的アウトカムの盲検化が5RCT、主観的アウトカムの盲検化が28RCTだった。感度分析はバイアスリスクが低いもののみで行った。

結果:
 主要結果は以下。緩和ケアはACPを改善し、患者・介護者満足を改善し、医療資源利用を減らす。緩和ケアが死亡場所・患者気分・費用・介護者QOL・気分・負担に与える影響の結果は一貫性が無かった。

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(本文より引用)

結論:
 生命予後が限られた疾患患者で、緩和ケア介入は1-3ヶ月後のQOLと症状負担を軽減するが死亡率には影響しない

 今回の評価ポイントであるQOLや症状負担の軽減というあたりは注意深く評価する必要がある。試験デザインにはかなりバリエーションがあること、主観的評価が多く含まれることは重要なlimitationになります。そもそも行動介入自体を均一化することはかなり難しいかもしれません。結語では緩和ケア介入を適切に分析するためのツールが必要かもしれないと締めくくられていました。