栃木県の総合内科医のブログ

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論文:胆石性膵炎に対するERCP review

ERCP for gallstone pancreatitis 
胆石性膵炎に対するERCP review

N Engl J Med 370;2 nejm.org january 9, 2014

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【臨床問題】
 欧米諸国では、膵炎の原因の50%が胆石になっている。以前よりは割合が増加。多くの胆石性膵炎は軽症で自然軽快する。重症度予測が重要とされているが、APACHEやRansonなどのスコアリングシステムの陽性予測率は43-49%と低い。死亡率は全体では5%、重症では20-30%。多臓器不全が重要なrisk factorで、合併すると死亡率は50%まで跳ね上がる。
【病態生理と治療】
 胆石性の膵炎の機序として、「共通管で詰まるのか」「結石が胆管を圧迫するのか」もよく分かっていない。原則は急性閉塞でないと膵炎は発症しない。癌などの慢性閉塞では膵炎を発症しない事が多い。共通管が長いと重症化しやすいという報告もある。胆石の大半は5mm以下で、85-95%の症例で、便から胆石を回収できるという報告もある(これすごいな!)。早期ERCPでの胆石回収・ESTが良いという報告はあるものの、現時点ではcontroversialである。
【臨床エビデンス】
 現時点では、胆石性膵炎でのERCPの役割および施行タイミングははっきりしていない。多くの研究がされているものの、対象患者群がまちまちで結論を出すに至っていないのが現状。現状のコンセンサスとしては、胆管炎が無い症例や明らかな閉塞がない症例では、24-72時間以内の緊急〜準緊急ERCPは不要かもしれない。
【臨床応用】
 reviewerは、24-48時間以内にERCPを行う症例として、胆管炎症例(発熱、黄疸、敗血症合併)やT-Bil>5を基準に選択している。また、画像で共通管に結石を証明した場合にもERCPをすべきだろう。ESTを行う場合にはINR<1.5か血小板>75000が望ましい。また、敗血症に対する適切な対応(輸液および抗菌薬)は重要である。
 ERCPには通常20-60分程度の時間を要する。これはカニュレーションの難易度や石の数・大きさ、術者の技量などが関係する。手技後は回復室で 1-2時間程度患者をモニターし、呼吸・循環が安定していれば病棟へ戻す。石がはっきりしないときにもESTを経験的に行うこともある。
【合併症】
 ERCP後膵炎の頻度は2-8%程度とされている。他の合併症としてEST時の出血、胆管穿孔、感染症、呼吸・循環合併症の報告がある。
【明らかになっていない部分】
 初期のメタ解析では、重症膵炎患者に対する早期ERCPは効果があるとされていた。その後、重症例以外も検討したメタ解析では、胆管炎の合併が無いと効果が無いことが示された。今後はどういった患者で、早期ERCPのメリットが得られるかは系統立てて評価・検証していく必要がある。
 ERCP後の症例に対して、全ての症例で胆嚢摘出術を行うべきかも結論が出ていない。1つだけRCTがあり、胆摘群がその後のイベントが少ないことを示しているが、まだ十分なエビデンスは揃っていない。reviewerらは、胆摘を勧めるとしている。
ガイドライン
 2005年のイギリスのガイドラインでは、全例に対する早期ERCPを推奨したが、2007年にアメリカ消化器病学会が全ての症例に行うことは議論の余地があるとした声明を発表し、胆管炎合併例としましょうと推奨した。
【個人的感想】
 ERCPの痒いところに手が届く様なreviewでした。胆摘するんだなあ。栃木県は総胆管結石が本当に多くて高齢者も多いので、さすがに全例胆摘というわけにはいかないです。消化器内科と外科の先生のフットワークがものすごく軽くて助かっています。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMct1208450