栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:Lancet & NEJM 緊張性縦隔気腫/DES/アラブの禁煙/サルコイドーシス/脂質異常/せん妄

論文抄読会:Lancet & NEJM

■Lancet■
【緊張性縦隔気腫! The Earth-Heart sign: a new diagnostic finding in a patient with tension pneumomediastinum】*1
 恥ずかしながら、緊張性縦隔気腫なる病気を初めて知りました。縦隔気腫は若い男性で時折見られますが、多くの場合には合併症無く自然軽快します。緊張性縦隔気腫は、縦隔の気腫が胸腔内を圧排し、胸郭のコンプライアンスが低下し、呼吸不全・循環不全を来す病態の様です。成人では頚部が多いが、小児では胸腔内にも起こるので小児に比較的多いのだとか。
 今回のLancetの報告者は、Earth-Heart signなるレントゲン所見を提唱していました。治療は頚部からの気腫ドレナージだとか。これは放射線科がいないと太刀打ち出来なそう・・・放射線科の先生にお願いする手技ってかなり多くて、総合内科医・病院医としてどこまでやれる様になるべきか悩みますね。

【第3世代薬剤溶出性ステント(DES)の非劣性試験 Third-generation zotarolimus-eluting and everolimus-eluting stents in all-comer patients requirng a percutaneous coronary intervention(DUTCH PEERS):a randomised,single-blind,multicentre,non-inferiority trial】*2
 ステントの優劣を決める試験ってかなりたくさんやられている様で。正直カテ屋さんが興味あるところだなあと思いつつ。zotarolimusとeverolimusのDESの非劣性試験です。結果は、特に有意差なく非劣性を証明。zotarolimusはエンデバー、everolimusはプロマスなんてのがあるみたいです。
 で、本題としてeditorは、「もう非劣性試験は十分だ、進歩が全くない!」と批判していました。どうもDESの研究は非劣性試験が、とても多いらしく(載っていた研究でも8割方非劣性)、非劣性マージンが広いことなども問題になっている様です。

アラブ諸国の禁煙対策 Research and activism for tobacco control in the Arab world】*3
 Lancetはアラブ特集だった模様で。その中でアラブ諸国禁煙対策を取り上げていました。Stepとして、①まずは自国のエビデンス作り、②禁煙推奨派とタッグを組む、③禁煙反対派への対応、④国・政府のシステム把握と障害因子を確認。という流れを提唱していました。これ、日本でも同じだなあ。


■NEJM■
【サルコイドーシスの症例 Case 4-2014:A 39 Year Old man with night sweats and abdominal pain】*4
 寝汗と腹痛の患者さんの鑑別。ネタバレで申し訳ないのですが、結局サルコイドーシスだった訳ですが。診断の過程の中で、ACEの値についての細かい走査特性が載っていて「へー」と思ったので取り上げてみました。

①ACE<25U  OR 0.12
②ACE 25-71U  OR 1.31
③ACE >71U  OR 7.15
Am J Clin Pathol 2010;134:939-47.

 だそうです。25-71ではあまり役に立たんということでしょうか。
結構クリアーカットに分かっているんだなあと思って、実際実臨床ではそこまで重視してなかったので、今度から少し活用できそうかなあと思います。

【脂質異常に対する薬(いわゆるnon statin) Assessing the Clinical Benefits of lipid-disorder drugs】*5
 小児の肥満に関するコホート研究があって、そちらは”じっくり”でも取り上げますが、今回はそれを受けて、脂質異常の薬に対するeditorialの意見が出ていました。いわゆるEPAとかフィブラートとかの話です。FDAは2013年にω-3脂肪酸あるEPAを迅速な対応で承認したわけですが、結局承認になった根拠のstudyがいわゆるサロゲートアウトカムであるlipid profileのみを評価した形で承認されたものである事に注意喚起しています。EPAの研究は日本も含めていくつかあるわけですが、どれもqualityとして今ひとつ。日本初のJELIS研究は、EPA vs EPA+statin群で見たところ、併用群が心臓血管死亡・心筋梗塞、PCI、CABGなどのcomposite outcomeを改善したとの報告でしたが、これはそもそもstatinが良いという結論にしかならないよねえ?と。確かにね。何でstatin単独と比較しなかったんだろうか・・・フィブラートやナイアシンの効果も今ひとつです。ちなみに、EPAの安全性の評価も今ひとつきちんとしていなくて、報告として出血リスクや高血糖が報告されている模様。
 結局、脂質異常に対してはスタチン以外はかなり微妙。そして、脂質の目標値が無くなった新ガイドラインを元にすれば、投与するかしないかであり、数値は関係ないということになりますね。もう少し揺り戻しがありそうです。

ICUでのせん妄と鎮静のreview Sedation and delirium in the intensive care unit】*6
 ①人工呼吸器の同調性を改善した、②深鎮静を避けることにしたというのが、この30年のICUの鎮静についての進歩だというくだりから始まっています。未だ深鎮静を続ける多くのICUがあるのを思うに胸が痛みますが。NEJMらしいきれいな図が載っており、せん妄・疼痛・興奮の三つの状態がどの様に関わっているかが分かりやすく図示されています。人工呼吸器患者では鎮痛が考慮されないことが多く、それに対する問題意識と、そこから一歩進んで、鎮静・鎮痛を最低限にしましょうという流れです。どの鎮静薬が良いかというのは特になく、現状は好みと経験に左右されるとのことで、これは古今東西変わらないなと思いました。
 せん妄については、臨床診断なので、やはり一番難しいのは診断ICUスタッフの3/4は通常の診療内ではせん妄に気付けないというデータもある様です。逆に教育された看護師は64%程度発見。それでも64%です、難しい。せん妄予防の研究は外科術後で研究されているようで、ハロペリドールやリスペリドンの少量投与が研究されており、若干効果があるようです。せん妄治療は更にエビデンスに乏しく、クエチアピン(セロクエル)辺りが良いのでは?という話題でした。