栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM JNC8/脂質異常ガイドライン/急性期脳梗塞の降圧/特発性急性心不全/ロタと腸重積

■JAMA■
【高血圧ガイドラインJNC8について 2014 Evidence-based guideline for the management of high blood pressure in adults:JNC8】*1
 2013年末にonline publishedされていたので、もう方々で話題になっていますね。すでになんごろくの中で詳細に取り上げて下さっているので、詳しくはそちらを見て下さい。editorは、とにかくガイドラインの作成方法・過程を褒めていました。
 基本的には非常にシンプルになりました。60歳以上は150/90mmHg以下を目指そう。それ以外は根拠は乏しいが140/90で良いのでは?CKD,DMがあっても同様とのこと。140mmHgの根拠ってあまりはっきりしなかったんですね。あと、最終的には臨床判断が重要とも明記していま す。薬剤についてもACE/ARB/CCB/サイアザイドはどれでも初期治療OKとのことでした。target doseが設定されていて、RCTs reviewでの投与目標値が設定されたのは大事です。ただ、ACEの量は結構多いなあと。日本の保険適応量でtarger dose達成できるのは、カプトプリルのみになっちゃいますね。
http://spell.umin.jp/nangoroku/nangoroku_hypertension.html#JNC8

【脂質異常ガイドラインについて 2013ACC/AHA guideline on the treatment of blood cholesterol】*2
 JAMAでは、高血圧ガイドラインを受けて昨年出た脂質異常症ガイドラインを取り上げていました。最近のDM/HTNは軒並み治療域値を上げる方向に働 く中、脂質異常症だけは積極投与に舵を切りました。このガイドラインを適応すると世界的には10億人がスタチンの適応になるようです。global statinaizationなんて言葉も出ていました。とにかく、LDLを下げることが大事では無く、心血管イベント等のメジャーアウトカムの改善を目指そうということになり、スタチンのみが推奨となったのが一番大きな変更点です。他のLDLを下げる”だけ”の薬は現時点では無意味と。
 この脂質異常症ガイドラインの問題点は、作成者の半分にCOIがあることです。それでも2004年のATPⅢの時は全員COIあったから進歩だけどねと。あと、QIも「CVD risk 7.5%以上の人に対するスタチン投与率」ではなくて「CVD riskとスタチンの効果について話し合っている率」にすべきですよね。スタチンは概ね2-3割リスクを減らすとされています。LDL目標値も取っ払われた今、何となく投与することが全て見たいな風潮が心配ではあります。

【急性期脳梗塞の降圧療法 CATIS研究 Effects of immediate blood pressure reduction on death and major diasbility in patients with acute ischemic stroke:The CATIS Randomized clinical trial】*3
 脳梗塞の急性期降圧の話題。現状ガイドラインでは220mmHg以下では降圧しない方針ですが、過去にもちょくちょく降圧のtrialがでていました。 今回は、また中国発の過去最大規模の検証(n=2038)です。発症48時間以内に降圧を開始し、14日もしくは退院時の死亡・mRSがメインアウトカムです。降圧群の目標は24時間以内は10-25%、7日目には140/90以下を目標としています。血圧は水銀計で測定。NIHSS 4点くらいの軽症脳梗塞で、initialの血圧平均が166/96くらいの群でした。
 結果は、メジャーアウトカムには有意差でず。死亡率はどちらも1.5%くらいでした。細かい解析だと、3ヶ月後の降圧薬使用率に若干の差が出た様でした。難しい結果です。降圧が害が無いとも取れるし、降圧しても良いことはないとの結果とも考えられます。どちらにしても今のところ、普段の診療には変化は無さそうです。

■NEJM■
【特発性急性心不全の原因 Missing elements of the history】*4
 これもNEJMの症例から。
<経過>下腿浮腫・呼吸苦・咳嗽を主訴に来院。来院時、心不全の診断。既往で多関節炎と両股関節・左膝関節の人工関節術後。喫煙なし。2週間経過の咳嗽だが、初期治療医はレントゲンもとらずに抗菌薬処方し帰宅。
<指導医>リスク無し、中年の急性咳嗽はたいてい気管支炎。
<経過>その後、症状増悪し、CTで鬱血像あり、EF 25%のdiffuse hypokinesisの心不全で入院。CAG normal、利尿剤・ACE・β遮断薬開始。
<指導医>若年のリスク無し心不全はしばしば誤診される。病歴・身体所見が最も重要。
<経過>2ヶ月後に心不全再増悪。血圧も低下。心嚢液も貯留。心嚢液培養、血液培養、細胞診陰性、心筋生検も異常なし。結局心移植エントリーしつつ、左室補助人工心臓(LVAD)導入。VTも出てアンカロン
<指導医>多くの心筋症では心筋生検は不要だがatypicalな症例では検討しましょう。
<経過>甲状腺機能低下も出現し、アンカロンは既に中止されていたが内分泌科医はアンカロンが原因では?と。
<指導医>アンカロン内服患者の10-20%に甲状腺機能低下症は出るが、今回のような中止後の低下症は非典型的。
<経過>1年前にいれた人工関節に問題があったが、定期受診を忘れていた。MRI施行し炎症がありコンサルト。その後、コバルト中毒が判明。再手術でEF改善。
→多くの専門医の協力と総合的に診る力が必要と。いやあ大変ですね。でもドラマチック。心不全のetiology検索はきちんとしないと駄目だなと気持ちを新たにしました。

ロタウイルスワクチンと腸重積 Rotavirus vaccines-Balancing intussusception risks and health benefits】*5
 今回NEJMに二つロタウイルスワクチンと腸重積の関連についての報告がありました。PRISM計画とVSD計画。もともと、2006年に2つのRCT が有意差を持ってロタを減らし、入院・救急受診を減らすとのことで、あっという間に世界中に導入されました。日本でもロタリックス(RV1)・ロタテック (RV5)として発売され、現在50か国で導入されています。
 実は、腸重積が増えるという報告があり、市販後調査の一環から、CPLFDAがそれぞれ計画を立てて調査をしていました。その結果が今回報告されてい ます。結果として、RV1は20万回投与で6例(VSD)、10万回投与で3例(PRISM)、RV5は50万回で8例(VSD)、49万回で4例 (PRISM)という頻度でした。結局頻度は多くないということが分かりました。米国では、年間450万人に接種され、5万3000人の入院を減らし、 17万人の救急受診を減らし、45-213人の腸重積を増やすという結果でした。統計学的にはまあ安全でしょうね。米国の市販後調査はしっかりしてます ね。