栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & JAMA & Lancet & NEJM

BMJ
【腹部大動脈瘤への血管内治療と外科手術のRCT IMPROVE研究 Endovascular or open repair strategy for ruptured abdominal aortic aneurysm:30 day outcomes from IMPROVE randomised trial】
 AAAに対して外科的手術と血管内治療がありますが、今回RCTでガチンコ比較の研究がでました。primary outcomeは30日死亡、secondaryは費用を見ています。過去の治療例は除いてあり、一部cross overしてはいました。
 結果は、30日死亡は35.4%(血管内治療) vs 37.4%(外科治療)で有意差なしでした。secondaryの費用は-1186£/人(約20万円)だったようです。あとサブ解析で見ていた、90日後に自宅に帰れているか?という割合では有意差ありで血管内治療が帰れる結果でした。血管内治療 94% vs 外科治療 77%。うーむ。安くて家に帰れるなら血管内治療かなあ。日本ではデバイスが高いという難点もあるみたいですが。
 
【面白論文紹介コーナーMINERVA】
 デング熱マラリアの鑑別でT-Bil・CRPが良いというK先生の論文が取り上げられてました〜。すごいっすねえ。CRP>2.4tT-Bil>0.9をカットオフにしたんですね。熱帯地方からの帰国者で熱源不明者でコホートをやってみたいってMINERVAが言ってました。

【小学校入学前のwheezeについて Managing wheeze in preschool children】
 小児診療をしているとwheezeを聴取することが多いですが、小学校入学前のwheezeについてのreviewがありました。そもそもwheezeの定義自体があいまいで、ある欧州の国では用語として使用していない国もあるとのこと。生後18ヶ月までに全体の26%がwheezeを経験するのだそうです。で、wheezeをみたら以下の項目を確認しましょうと。
①発症時期は?
 3歳未満でのみの一過性なのか、6歳程度まで続いているものなのかを判断。
アトピー関連か?
 他のアレルギー疾患の合併があるか。
③症状パターンは?
 Episodic viral wheeze(EVW)かMultiple trigger wheeze(MTW)かを鑑別しましょうと。多くの場合EVWは問題ない方が多く、MTWは喘息と関連すると言われています.一方EVWは喘息のリスクにはならないとされています。
 これらのwheezeは原則的に治療は不要で、やるとすればSABA頓用くらいと。あとは、症状発現初期からLT拮抗薬を投与する方法も言われているみたい。

■Lancet■
Dr.Houseを手がかりに診断したコバルト中毒 Cobalt intoxication diagnosed with the help of Dr House】
 最近Lancetの症例報告にはまっています。毎週取り上げている気がする・・・ネタバレすまんです。
 特に既往の無い55歳男性がEF 25%、NYHAⅣ度の心不全で入院。過去にTHA2回施行。その後、FUO、視力低下、張力低下、食道炎、甲状腺機能低下などの諸問題が出て、頭を悩ませていたところ、Dr.Houseのシリーズ7/エピソード11を思い出したと。そこからコバルト中毒を疑い血中濃度測定で診断。
 人工股関節の金属からコバルトが漏れ出ていた結果でした。再手術をしたところEF 40%まで改善したとのことでした。いやあ病歴かなり重要です、はい。

【世界的な癌の動向:原因と一次予防 Global cancer patterns:causes and prevention】
 副題でCancer warsとついています。シリーズ第一部の様で、二部・三部と出るようですね。目的は、①癌は世界的問題だが国によって異なる、②population levelでの癌予防の成功、③癌の一次予防の重要性、についてです。以下徒然に記載します。
 癌は、頻度は少ないが死亡率が高い(途上国)、頻度は多いが死亡率は少ない(先進国)と記載がありました。まあ、相対評価だと思います。途上国での変化として、タバコが増えて癌が増える、子供が減って乳癌が増えるという構図がある様です。危険因子としては、タバコ、食物、運動不足、肥満、感染症HBV、HPV等)、環境などがある。リスクについては、個人レベルだけではなく社会レベルの介入が重要で、試算によると社会的介入で40-50%の癌が予防できるかもしれないとのことでした。日々見ていると、社会的な背景の厳しい方に癌が出ることは確かに多い気がします。

 

■JAMA■
【高血圧ガイドラインJNC8について 2014 Evidence-based guideline for the management of high blood pressure in adults:JNC8】
 2013年末にonline publishedされていたので、もう方々で話題になっていますね。すでにN先生がなんごろくの中で詳細に取り上げて下さっているので、詳しくはそちらを見て下さい。editorは、とにかくガイドラインの作成方法・過程を褒めていました。今回ガイドライン作成委員会にCOIのある人は一人も入れなかったのだとか。これは画期的ですね。
 基本的には非常にシンプルになりました。60歳以上は150/90mmHg以下を目指そう。それ以外は根拠は乏しいが140/90で良いので は?CKD,DMがあっても同様とのこと。140mmHgの根拠ってあまりはっきりしなかったんですね。あと、最終的には臨床判断が重要とも明記していま す。薬剤についてもACE/ARB/CCB/サイアザイドはどれでも初期治療OKとのことでした。target doseが設定されていて、RCTs reviewでの投与目標値が設定されたのは大事です。ただ、ACEの量は結構多いなあと。日本の保険適応量でtarger dose達成できるのは、カプトプリルのみになっちゃいますね。
http://spell.umin.jp/nangoroku/nangoroku_hypertension.html#JNC8

【脂質異常ガイドラインについて 2013ACC/AHA guideline on the treatment of blood cholesterol】
 JAMAでは、高血圧ガイドラインを受けて昨年出た脂質異常症ガイドラインを取り上げていました。最近のDM/HTNは軒並み治療域値を上げる方向に働 く中、脂質異常症だけは積極投与に舵を切りました。このガイドラインを適応すると世界的には10億人がスタチンの適応になるようです。 statinaizationなんて言葉も出ていました。とにかく、LDLを下げることが大事では無く、心血管イベント等のメジャーアウトカムの改善を目 指そうということになり、スタチンのみが推奨となったのが一番大きな変更点です。他のLDLを下げる”だけ”の薬は現時点では無意味と。
 この脂質異常症ガイドラインの問題点は、作成者の半分にCOIがあることです。それでも2004年のATPⅢの時は全員COIあったから進歩だけどね と。あと、QIも「CVD risk 7.5%以上の人に対するスタチン投与率」ではなくて「CVD riskとスタチンの効果について話し合っている率」にすべきですよね。スタチンは概ね2-3割リスクを減らすとされています。LDL目標値も取っ払われ た今、何となく投与することが全て見たいな風潮が心配ではあります。

【急性期脳梗塞の降圧療法 CATIS研究 Effects of immediate blood pressure reduction on death and major diasbility in patients with acute ischemic stroke:The CATIS Randomized clinical trial】
 脳梗塞の急性期降圧の話題。現状ガイドラインでは220mmHg以下では降圧しない方針ですが、過去にもちょくちょく降圧のtrialがでていました。 今回は、また中国発の過去最大規模の検証(n=2038)です。発症48時間以内に降圧を開始し、14日もしくは退院時の死亡・mRSがメインアウトカム です。降圧群の目標は24時間以内は10-25%、7日目には140/90以下を目標としています。血圧は水銀計で測定。NIHSS 4点くらいの軽症脳梗塞で、initialの血圧平均が166/96くらいの群でした。
 結果は、メジャーアウトカムには有意差でず。死亡率はどちらも1.5%くらいでした。細かい解析だと、3ヶ月後の降圧薬使用率に若干の差が出た様でし た。難しい結果です。降圧が害が無いとも取れるし、降圧しても良いことはないとの結果とも考えられます。どちらにしても今のところ、普段の診療には変化は 無さそうです。

■NEJM■
【特発性急性心不全の原因 Missing elements of the history】
 これもNEJMの症例から。
<経過>下腿浮腫・呼吸苦・咳嗽を主訴に来院。来院時、心不全の診断。既往で多関節炎と両股関節・左膝関節の人工関節術後。喫煙なし。2週間経過の咳嗽だが、初期治療医はレントゲンもとらずに抗菌薬処方し帰宅。
<指導医>リスク無し、中年の急性咳嗽はたいてい気管支炎。
<経過>その後、症状増悪し、CTで鬱血像あり、EF 25%のdiffuse hypokinesisの心不全で入院。CAG normal、利尿剤・ACE・β遮断薬開始。
<指導医>若年のリスク無し心不全はしばしば誤診される。病歴・身体所見が最も重要。
<経過>2ヶ月後に心不全再増悪。血圧も低下。心嚢液も貯留。心嚢液培養、血液培養、細胞診陰性、心筋生検も異常なし。結局心移植エントリーしつつ、左室補助人工心臓(LVAD)導入。VTも出てアンカロン
<指導医>多くの心筋症では心筋生検は不要だがatypicalな症例では検討しましょう。
<経過>甲状腺機能低下も出現し、アンカロンは既に中止されていたが内分泌科医はアンカロンが原因では?と。
<指導医>アンカロン内服患者の10-20%に甲状腺機能低下症は出るが、今回のような中止後の低下症は非典型的。
<経過>1年前にいれた人工関節に問題があったが、定期受診を忘れていた。MRI施行し炎症がありコンサルト。その後、コバルト中毒が判明。再手術でEF改善。
→多くの専門医の協力と総合的に診る力が必要と。いやあ大変ですね。でもドラマチック。心不全のetiology検索はきちんとしないと駄目だなと気持ちを新たにしました。

ロタウイルスワクチンと腸重積 Rotavirus vaccines-Balancing intussusception risks and health benefits】
 今回NEJMに二つロタウイルスワクチンと腸重積の関連についての報告がありました。PRISM計画とVSD計画。もともと、2006年に2つのRCT が有意差を持ってロタを減らし、入院・救急受診を減らすとのことで、あっという間に世界中に導入されました。日本でもロタリックス(RV1)・ロタテック (RV5)として発売され、現在50か国で導入されています。
 実は、腸重積が増えるという報告があり、市販後調査の一環から、CPLFDAがそれぞれ計画を立てて調査をしていました。その結果が今回報告されてい ます。結果として、RV1は20万回投与で6例(VSD)、10万回投与で3例(PRISM)、RV5は50万回で8例(VSD)、49万回で4例 (PRISM)という頻度でした。結局頻度は多くないということが分かりました。米国では、年間450万人に接種され、5万3000人の入院を減らし、 17万人の救急受診を減らし、45-213人の腸重積を増やすという結果でした。統計学的にはまあ安全でしょうね。米国の市販後調査はしっかりしてますね。