栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 20140301

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BMJ

【自転車共有システムの健康への影響 Health effects of the London bicycle sharing system:health impact modeling study】*2
 世界的にはinactivityの対策として自転車に注目が集まっています。こう言われると当院の自転車部は目を輝かせて論文に目を通すわけですが。 inactivityは様々な疾病との関連が言われながら、疾患として捉えることも具体的な介入方法も定まっていない問題です。イギリスでは2011年か らロンドンで自転車共有システムを導入していますが、そのシステムの健康への影響を検討した研究です。本邦でも地域によっては始まっていますよね。
 比較はバス・自動車群で、739万trip(この数え方がおもろい)。利用者は15-29歳が35.1%、30-44歳が43.0%、45-59歳が 19.4%でした。結果はDALYの変化で比較していますが、自転車事故による外傷を考慮しても健康に対する効果が明確だったとの結論でした。サブ解析ではより高齢者で効果が強い様です。なんだか自転車研究多いなあ。ヘルメットとかね。俺もチャリ乗るか・・・?

三叉神経痛のレビュー Trigeminal neuralgia】*3
 三叉神経痛は結構しばしば遭遇してきたのですが、実は非常に稀な疾患らしく生涯罹患率0.3%程度なのだそうです。(余談ですが、この生涯罹患率ってや つは分かりやすそうで分かりにくいっすね。)。発症年齢は50-60歳前後。女性に多い傾向があり、多発性硬化症との関連が強く指摘されている野は知りま せんでした。特発性三叉神経痛は95%がvasocompression。診断基準はあるもののclinicalな診断基準できちんとvalidateさ れていないのも問題ですよと。
 症状の特徴として、突然発症、V1領域は稀、50%に以前から弱い痛みがある症例と。Red flagsは、感覚障害、聴覚・視覚障害、難治性疼痛、カルバマゼピンへの反応不良、皮膚や口腔病変の合併、MSを疑うような神経症状、40歳未満の発 症、MS家族歴。治療はカルバマゼピン等の内服薬が70%の症例で効果的。外科的手術の適応は限られる上、腕の良い脳外科医でもそこそこ合併症を起こすよ と書いてありました。
 三叉神経のred flagsが役に立つ感じ。MSとの関連は知りませんでした。

【禁煙することで精神症状には良い影響が Change in mental health after smoking cessation:systematic review and meta-analysis】*4
 喫煙者「タバコは精神安定の為に必要」。医療者「タバコを止めさせると精神疾患が悪くなる」という変な信念がある。で、実際タバコを止めた人と止めな かった人と精神症状の変化はどうかをシステマティックレビューで検証しています。26研究がエントリーされ、11コホート、14サブ解析、1RCTが解析 されました。研究の質では20の研究がhigh quality。評価項目は、不安、うつ、ストレス、精神的QOL等を評価しています。
 結果はSMDで評価されているので、いまいち効果が分かりにくいですが、概ね全てのoutcomeで禁煙した方が精神的に良い影響が見られています。ち なみに効果の指標として、うつ病に対するSSRIよりも効果が良く、不安障害への抗うつ薬とほぼ同様程度の効果だったとのことです。

■Lancet■
【周術期にβ遮断薬を継続するかで混乱 New guideline on β blockers challenges ESC advice】*5
 ESCのガイドラインで、「心臓high risk患者では非心臓手術の周術期にはβ遮断薬を使うべき」と推奨。ところが根拠の主としてDECREASE trialに重点を置いた様ですが、これがかなりデザインに問題があるものらしい。さらにガイドライン策定メンバーの中にDECREASE trialの中心メンバーがいて・・・そんな中、最近のメタ解析では、むしろ死亡率を27%増やしたという報告。
 この様な状況の中、ESCはガイドラインを改定しなかった為、別の団体が独自にガイドラインを作成し、今月発表し更に混乱が強まっているとの事でした。 ESCは「現状はルーチンでの投与はすべきでは無い」とコメントしています。やっぱりガイドラインのメンバーにCOIあるメンバーが入るのは問題だーね。  

アセトアミノフェン中毒へのアセチルシステイン短時間投与 Reduction of adverse effects from intravenous acetylcysteine treatment for paracetamol poisoning:a randomised controlled trial】*6
 アセトアミノフェン中毒に対するNアセチルシステインは嘔気・嘔吐の副作用が強くて飲みにくいですよね。よくコーラで飲ませたりしていました。ただ、レ ジメンも国によって様々だったりする様です。今回、20時間の通常レジメンと12時間のshort regimenを比較した研究が載っていました。RCTですがfactorial designで、standard vs shortと前処置にondansetron vs placeboの2×2で比較した研究です。primary outcomeが2時間後の嘔気・嘔吐。副作用を見たい研究なのでしょうね。これでLancetにのるのかあとも思いましたが。
 222人の患者で検証したところ、半数がアセトアミノフェン16g以上内服していました。すごいな。結果はshort regimenでstandardと同等の効果が得られ、副作用は有意に減少。ondansetronの追加で更に嘔気が減少しています。この regimen使いたいのですが、そもそも日本ではアセトアミノフェン血中濃度がそんなにすぐに出ないし、なかなか難しいですね。