栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 20140302

 

f:id:tyabu7973:20140302170721j:plain*1

■JAMA■
【急性VTEに対する新規抗凝固薬のMedical Letter New oral anticoagulants for acute venous thromboembolism】*2
 今週もMedical Letterとのコラボ企画がありました。今回は多数出ている新規抗凝固薬のVTEに対するreviewでした。新規抗凝固薬については、多くの先生がまとめておりますので、細かい所は省きますが、限界点やデメリットも記載されまとまっていました。ちなみにAfに対する抗凝固とは異なるので注意です。
 まず、新規抗凝固薬の研究にはeGFR<50、担癌、75歳以上の患者はほとんど含まれていない為、real worldで使用する場合には注意が必要と。それから多くの新規薬の研究はまだまだ少なく、リバロキサバンが2RCT、ダビガトラン/アピキサバン・エドキサバンは1RCTで全て非劣勢試験。出血を減らすのは、アピキサバン・エドキサバンのみだったようです。まあ、これはWfが圧倒的なので仕方ないかなとも思いますが。FDAでも現時点ではRCTが二つあるリバロキサバンのみが認可されている状態です
 圧倒的に値段が高いのと、高齢・重症患者のデータが少ないこと半減期が短く飲み忘れると効果がすぐに切れること、リバース薬が無いことが問題と記載されていました。

アルツハイマー認知症患者の興奮に対するSSRIの効果 Effect of citaplopram on agitation in Alzheimer disease:The CitAD randomized clinical trial】*3
 MMSE5-28点のADおよび疑い例で興奮があるかそれに対する内服薬を持っている人で、かつ 週数時間以上caregiverが同居している人が対象。一旦興奮に対する投薬を中止の上、SSRI(シタプロプラム)群とプラセボ群を比較。follow up期間は9週間でした。
 途中シタプロプラムによるQT延長が危惧され、ベースラインでQT遷延気味の人は除外。結果としては、NBRS-Aトイウ興奮評価スケールが有意差を持って低下し、介護者負担なども軽減。ただ認知機能は低下させ、QT延長も来すと言う結果でした。結局興奮は抑えるけど副作用が多いので、現時点では積極的に勧めないと
 まあ、そうですね。リアルワールドと一緒。施設にいたいけど認知症に伴う興奮が強くて薬剤投与でぐったりして、誤嚥性肺炎、経口摂取困難、という流れは本当によくありますよね。やはり薬剤介入よりもユマニチュードとか介護者のトレーニングの方が重要と思います。RCT組まないかなあ、ユマニチュード。

【股関節骨折後の自宅リハビリプログラムの効果 Effect of a Home-based exercise program on functional recovery following rehabilitation after hip fracture:a randomized clinical trial】*4
 リハビリの話題が出てました。60歳以上の股関節骨折後、2ヶ月以内に入院によるリハビリを行っているもSF36項目で1つ以上のADL支障がある方が対象。ただし認知症重症うつなどは除外しています。介入方法、自宅での運動プログラム(週3回、1時間程度、作業・理学療法士、6ヶ月間)群とコントロール群を比較しました。
 6ヶ月後の機能評価(SPPBとAM-PAC)で、改善が見られた様です。この辺の指標のimpactは今ひとつ伝わりにくいですね。この研究でやはり大事と思ったのは在宅でのリハビリです。日本では急性期の術後1−2ヶ月は急性期病院のリハビリが行われます(我々ココ)。その後適応があれば、回復期リハビリ(これも長くても3−6ヶ月でしょう)。そして自宅へ帰ってくる訳です。今回の研究は20ヶ月以内に入院していた症例がinclusionされていますから、回復期も終わった後に自宅リハビリが提供出来れば、更に機能回復が望めるということです。ということで、我々在宅訪問診療医の出番なのでしょう。もちろん、在宅リハなどとの連携が不可欠で、現時点ではなかなか人材不足は否めません。
 後期研修中に見学に行った先生で、訪問したときに必ずリハビリを行っている先生が印象に残っています。在宅に戻ったときのケアの質の低下が問題になっています。地域として取り組んでいくべき課題でしょうね。

■NEJM■
【Valsalvaによる網膜前出血 Valsalva retinopathy】*5
 今週のIMAGEは嘔吐後の無痛性視力低下を来した妊婦さんの症例でした。Valsalva retinopathyは、網膜毛細血管の破裂によって起こるようで、突然の眼球静脈内圧の亢進によって発症すると。咳や嘔吐で起こる事もあるそうです。その他、血液疾患、高血圧、くも膜下出血なども原因になるようです。

【胸部聴診の基礎 Fundamentals of lung ausculation】*6
 聴診についてのreviewでした。時々気を引き締める必要があります。古くはヒポクラテス時代から始まり、1816年にLaehnecの聴診器開発で一気に世界中に広まりました。現在は、エコー・CT・MRIなどの画像の発達でおろそかにされつつあるよと。ただ、肺音と肺機能の関連も徐々に明らかになっており、まだまだ重要ですと。
 問題点はいくつかあって、一つは用語統一の問題です。国際聴診音協会(International Lung Sounds Association:ILSA)は、"rale"は使わないとしています。ラ音は死語という訳ですね。wheezeには、肺胞wheezeと気管wheezeがあり、気管wheezeは上気道閉塞を疑う所見なので、asthmaと誤診しないようにと書かれていました。気管wheezeは胸骨上で聴取し、肺胞との比較を行うべし。もともと、肺胞音は吸気異常音は中枢病変、呼気異常音は末梢病変と言われてきましたが、最近の研究ではあまり吸気・呼気のみでは区別が難しいとされているようです。肺胞音の異常で最も多いのが肺胞音低下で、吸入速度や閉塞・伝達などで生じます。肺炎でも重症だとairwayが遮断される為、肺胞音減弱のみで改善してくるとcoarse cracklesが聴取されるようになるのは良く経験されます。
 wheezeについては、high pitch、low pitchと記載するのはあまり適切では無く、highとlowで閉塞気管支の推定も難しいでしょうと。どちらかと言えば、wheezeの部位が重要で、localizedかgeneralizedかを考えましょうと。localizedの場合には局所閉塞を念頭に考えましょうと。fine cracklesは、小気管の開放音で診断的には非常に重要と。fineとcoarseは音はもちろん違いますが、鑑別点として、fineは吸気後期(開放音だから)、coarseは吸気早期、fineは口までは伝わらず体位変換が影響、coarseは口まで伝わり咳嗽で消失することもあると。また、健常人でもcoarse cracklesは聴取することがあるので注意。聴診勉強になります!