栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

クルズス:肝性胸水

本当は不眠症クルズスだったのですが、あまりにも大作だったので、その後のミニクルズス肝性胸水について。

肝性胸水:Hepatic hydrothorax

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【概念】

 19世紀初頭に聴診器の発見者であるLaennecが初めて記載。この時点で複数のメカニズムを提唱。

【定義】

■ 肝硬変がある

■ 500ml以上の胸水貯留がある

原発性の心疾患・肺疾患がない  (Ann Intern Med 1958;49:193-203)

【疫学】

■ 進行期肝硬変の6-10%に合併する

  ※ 肝硬変の患者330人の5.5%に合併  (Ann Intern Med  1966;64:341-351)

  ※ 肝硬変の患者200人の6.0%に合併  (Ann Intern Med  1964;61:385-401)

  ※ 腹水のない肝硬変での合併は稀 

■ 85%が右側性、13%が左側性、2%が両側性  (Am J Med  1999;107:262-267)

【機序】

■ 門脈系の側副血行路発達に伴う奇静脈圧上昇説   (Ann Intern Med  1958;49:193-203)

■ 横隔膜欠損を通した腹水の胸腔内への移行説   (Lancet  1955;1:487-488)

■ 横隔膜のリンパ経路での腹水の胸腔内への移行説

■ 低Alb血症による膠質浸透圧の減少説   (Q J Med  1947;16:263-274)

■ 胸管からの漏出説     (N Engl J Med  1960;263:471-474)

【臨床症状】

■ 基本的には肝硬変の症状が中心

■ 他の理由で胸部Xp施行し偶然見つかる事もある

■ 一部の少数の患者が呼吸症状で来院する

    ※ 呼吸苦・乾性咳嗽・胸膜痛・倦怠感・低酸素血症

■ 大量胸水では稀に心タンポナーデになることも   (Am J Resp Crit Care Med  1995;151:904-908)

【診断】

どういう患者で疑うか?

 ■ 腹水のある肝硬変で右側胸水を認めた時

 ■ 発熱・左側胸水・腹水なし・呼吸症状がある場合は他の原因も考慮

  ※ 肝硬変で胸水を認めた患者の30%は肝性ではなかった  (Am J Med  2001;111:67-69)

■ 胸腔穿刺は以下の2つの理由で必須

     ①感染症の合併の除外

     ②他の原因の除外

■ 胸腔・腹腔穿刺ともに行うべきとする者もいる   (Arch Intern Med  1991;151:2383-2388)

■ 99mTcラベルしたColloidもしくはIndocyanine greenを腹腔内投与し胸腔内移行を証明

  ※ 感度71%、特異度100%

  ※ 検査前に胸水を引いて胸腔内圧を下げると感度が100%に   (J Nucl Med  1991;32:924)

以下の場合は感染の合併を考慮

 ■ 胸水中好中球≧500/mm³、胸水培養陰性

 ■ 胸水中好中球≧250/mm³、胸水培養陽性

【鑑別診断】

肝硬変の胸水の他の原因としては・・・

  Spontaneous bacterial empyema(SBEM)

                 ※ 肝性胸水の13%に合併

  結核

  肺癌

  膿胸

  原因不明の滲出性胸水   (Am J Med  2001;111:67-69)

アルゴリズム

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Ann Hepatology 2008;7:313-320

【管理・治療】

■ Medical management

    塩分制限 欧米だと2g!、利尿剤

■ 胸腔穿刺

■ Transjugular Intrahepatic Portosystemic Shunt

■ Surgical intervention

   胸膜癒着術、胸腔ドレーン留置、横隔膜修復術、肝臓移植
【胸腔穿刺・ドレーン】
■ 原則胸腔ドレーンは推奨されない。マネージメントは肝性腹水と同様にmedical中心。

■ 長期留置による合併症は意識すべし。感染・抜けなくなる等。

■ 肝性胸水で呼吸症状が出てる場合に有効

■ 大量腹水がある場合は腹腔ドレナージを優先

■ 1回の穿刺で2L以上は引くべきではない

    ※ 低血圧・再膨張性肺水腫を避けるため

■ 合併症としての気胸に注意

    ※ 診断的穿刺の1%、治療的穿刺の9%

 ■ 2回目以降は2-3wk以上は間隔を空けるべき