栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 中国タバコ/大腸癌検診の適正化/Slipping rib syndrome/臓器脱への骨盤底筋体操

論文抄読会
BMJ
【WHOの枠組み条約FCTC実施で喫煙率減少 from中国 The potential effects of tobacco control in China: projections from the China SimSmoke simulation model】*1
 中国は喫煙率が問題になっていますが、タバコの規制に関する世界保険機構枠組条約(FCTC)推奨を行うと、喫煙率および喫煙死がどの程度減少するかをシュミレーションした研究です。
 FCTC政策を完全に実施すると、2050年までに喫煙率は46.5%まで減少。死亡者数は1280万人減らすと試算されました。ちなみにFCTCの中身ですが、wikiに詳しく書かれています。締約国の義務として、締約後3年以内に、①健康被害が少ないと誤解を与えかねない表示をしない、②包装面積の30%以上を用いて、健康被害の警告表示を掲載、5年以内に、タバコの広告や販売促進などの全面的禁止、などが明文化されています。ちなみに日本も2004年に議案が提出され、衆参両院で可決され公布されています。以下で全文読めます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/treaty159_17a.pdf


【大腸癌検診は適切に行われているのか?Role of quality measurement in inappropriate use of screening for colorectal cancer:retrospective cohort study】*2
 大腸癌検診は、便潜血や全腸内視鏡、S状結腸内視鏡、注腸検査など多くの検診方法が行われています。欧米のガイドラインでは、検診対象を50-75歳までと設定して行っているわけですが、どの程度適切に行われているかをVA(退役軍人病院)のヘルスケアシステムのデータを用いて検証しています。対象は50歳以上で、2010年に受診歴のある患者。この時点で既にスクリーニングを受けている人は除外しています。受診後2年以内に大腸癌検診を受けた患者の頻度を調査。
 結果は、39万9067人の患者がinclusionされ、平均年齢67歳、97%が男性でした(退役軍人ですからね)。検診実施率は、50-69歳で45.6%、70-75歳で42.9%、75歳以上で15.8%でした。ガイドラインの推奨通り年齢で切っている訳ですが、75歳以上で検診が行われた人の中身を見ても特に合併症の少ない人に施行したと言うわけでは無いみたいです。まあ、年齢と実施率のみがQuality indicaterなのは微妙なのですが、今後75歳以上でどの様な人には施行したらメリットが得られるかなどの層別化が必要になるでしょうね。
 日本では、ほとんど患者さんとの相談がなされずに80歳でも90歳でもどんどんスクリーニングが為されています。年齢で切ってやらない!というのも思考停止ですが、見つかるのがとにかく素晴らしい!という考えはoverdiagnosisや介入による害に繋がる可能性も考えなくてはいけません。


■Lancet■
【Slipping rib syndromeの症例報告 Flank pain caused by Slipping rib syndrome】*3
 Lancetの症例報告で初めてみる名前の疾患がありました。比較的突然発症の側胸部痛を呈した若年女性。体動で増悪しピンポイントの疼痛もあり。何度も何度も外来受診し、各種精査をするも異常所見なし。一時期は精神科に紹介。最終的には、胸部外科に紹介となり、臨床診断から”Slipping rib syndrome”と診断されました。
 下位肋骨に多いこの疾患群は、Tietz症候群と混同されることも多い様ですが、好発肋骨が異なります。で、今回は、Th11の軟骨腫瘍が神経を圧迫することで、神経症状を来していたという結果でした。古典的なSlipping rib syndromeの機序としては、肋骨を胸骨につなぎ止めておく靱帯が脆弱化し、本来ある場所から肋骨がすべり出してしまうという疾患と定義されています。滑り出た肋骨は肋間神経を圧迫し、刺すような強い痛みを来す。体動によってずれが増強すると症状が増悪します。原因は様々で、炎症・前胸部の肋軟骨部の過可動性・下部肋軟骨部や腱の血流低下・慢性気管支炎などの咳・物理的原因(就寝中の胸部への持続的圧迫等)が言われています。どちらにしても画像や検査では異常は無く、知っているかどうかが全ての疾患。勉強になりました!多分今まで見逃していた症例はあるでしょう。


【女性の骨盤臓器脱への骨盤底筋トレーニング POPPY研究:individualised pelvic floor muscle training in women with pelvic organ prolapse(POPPY):a multicenter randomised controlled trial】*4
 女性の尿失禁に対する骨盤底筋体操の効果は実証されていますが、子宮脱や膀胱脱などの臓器脱に対してのevidenceは乏しいので検証した、というのが今回の主旨です。多施設共同のRCTでニュージーランドとオーストラリア発です。セッションは5回で、447人の女性が2群に振り分けられ、6ヶ月と12ヶ月後に質問紙標で評価を受けました。で、プライマリアウトカムも12ヶ月後の質問紙票スコア。いつも思うんですが、この質問紙票ってのが微妙で、その分野の専門家出ない限り、2点改善したとか4点高かったとか言われてもよう分からんのですわ。
 この研究でも案の定、POP-SSトイウスコアが3.77 vs 2.09で有意に高かったというのですが〜・・・。まあ、セカンダリーで、病院受診や自覚症状の改善は得られている様です。この点数の意味を理解するのは難しいなあ。もちろんきちんとvalidationされている質問紙票なら良いんでしょうが、なんだか実臨床ではもっと患者さんに説明しやすく役に立つアウトカムにしないとあかんだろなあと思うわけです。