栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 白衣/MMRワクチンの非特異的効果/Vanishing lung/タンザニア発熱小児/EV71ワクチン

論文抄読会

■JAMA■
【そろそろ白衣を脱ぐ時か? Time to hang up the white coat? Epidemiologists suggest ways to prevent clothing from spreading infection】*1

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 Society for Healthcare Epidemiology of America(SHEA)という団体が、白衣を介した感染を防ぐ為に、患者さんを診察前に白衣を脱ぎ ましょうという提案をしています。ただ、これを積極的に勧める根拠となるような論文は無いとのこと。知らなかったのですが、2008年にイギリスは白衣禁 止(!?)をしたそうで、まだデータは揃っていないので慎重になるべきとはしています。注意すべき事として、①半袖にする、②診察前に白衣を脱ぐ、③聴診 器をきれいにするなどを推奨しています。
 患者さんは白衣を好む傾向はあるが、見た目よりも衛生面重視というアンケート結果もあると。もう一つは、医師のほとんどが白衣を毎日洗っていないので、 それなら白衣は脱ぐ方が良いという結論でもありました。確かに、留学帰りの先生方の方が白衣を着ない傾向ですね〜。そろそ脱ぎ時??
 

MMRワクチンの非標的感染症への効果 Live vaccine against Measles,Mumps,and Rubella and the risk of hospital admissions for nontargeted infections】*2
 BCGや麻疹ワクチンなどを打つとその対象疾患(結核、麻疹)だけでhなく、その他の感染症や死亡率を下げる効果があるということが発展途上国を中心に以前から報告されています。
 今回は、デンマークコホート研究でMMRワクチン接種が入院や感染を減らすかを検証しています。1997-2006年に生まれたデンマークの小児が対 象。ワクチン接種の順番を変更することで、感染率・入院率が変化するかを検証しています。DTaP-IPV-HibとMMRの順番を入れ替えてるんです が、若干複雑なコホートで分かりにくいので、興味のある人は原文を読んで下さい。結論として、MMR接種は感染症による入院を減らす効果があることが示唆 されたとのことです。
 まあ、まだまだこれからなので、今後の前向き研究を待つとのことですね。ワクチンって不思議だなあ。コクーニングもそうですが、他の疾患の感染まで防ぐ可能性があるとは!WHOの調査待ちだそうです〜。



■NEJM■
【NEJMのClinical picture Vanishing lung syndrome】*3
 特発性の巨大ブラによって肺実質が消えている症例。確かにそんな症例時々いるなあと思ってましたが、こんな名前がついてたんです ね~。"Vanishing lung syndrome"は、若年の痩せた喫煙者に多い、特発性の巨大ブラ症例で、画像所見では1987年に提唱され、片側もしくは両側の少なくとも1/3以上 を占めるブラと周囲の肺実質の圧排所見が特徴的です。
http://www.learningradiology.com/archives06/COW%20222-Vanishing%20lung/vanishinglungccorrect.html


タンザニアでの発熱小児の非マラリアの原因 Beyond malaria-causes of fever in outpatient Tanzanian children】*4
 マラリアの対策が少しずつ進んでおり、徐々に発熱患者の中でのマラリアの頻度が減ってきており、マラリア以外の原因が注目されている様です。マラリアで ないと分かると安易に抗菌薬が処方されるケースも目立ってきた為、今回タンザニアの小児医療機関で調査が行われました。2ヶ月〜10歳の発熱患者を連続し て対象にしており、1週間以内の発熱で抗菌薬・抗マラリア薬を使用していない症例がinclusionされました。
 かなりシステマティックに全例23症状と49身体所見をチェックしIDSA・WHOの診断基準をもとに診断をつけ、診断がつかなければ7日後に再診。各 種検体を採取し、PCR・培養等を用いて徹底的に病原体の検出を目指しました。その結果、1005人の小児が解析され、62.2%が急性呼吸器感染、5% が肺炎、鼻咽頭感染が11.9%、マラリア 10.5%、消化器感染10.3%、UTI 5.9%、髄膜炎 0.2%となっています。病原体別だと70.5%がウイルス感染、22.0%が細菌感染だったとのことでした。重症度が高い症例に限るとマラリア・細菌感 染が増えると。
 アフリカでもどこでもやはり一番多いのはウイルス感染で抗菌薬不要と。確かに渡航帰りの胃腸炎で最も多いのはウイルス性腸炎ですもんね。今回素晴らしい取組だなと思いました。小児診療を行っていますが、抗菌薬を必要とするのは本当に稀ですもんね。


【EV71ワクチンの効果 Enterovirus vaccines for an Emerging cause of brain-stem encephalitis】*5
 今回NEJMに中国発のEV71ワクチンのstudyが二つ掲載されていました。正直あまり馴染みが無くて、ワクチンのstudyを読むよりeditorialで全貌を掴む方が勉強になりましたのでまとめてみます。
 EV71感染は、手足口病のウイルスでCOXa A16やEV71が有名ですが、EV71は最初は1969年に米国で報告されています。その後、マレーシアや台湾、ブルネイベトナム、香港などのアジア 圏を中心に致死的な脳炎症例が複数報告されるようになりました。過去10年を推察すると、世界中で600万人のEV71感染があり、2000例が死亡して いると考えられています。
 EV71にはA-Dまでのgenetical typeがあり、最近アジアではB/Cが多いそうです。多くは無症状で、軽症例では、急性上気道炎や手足口病ヘルパンギーナなどを来します。脳幹脳炎を 含んだ神経合併症は、急性弛緩性麻痺、無菌性髄膜炎を来たし、この場合に皮膚症状は出ないことが多い。無菌性髄膜炎は通常完治するが、弛緩性麻痺を呈した 場合には重症化することが知られている。最も重要な神経合併症は脳幹脳炎で、視床・脳幹・脊髄・小脳の著明な炎症によるとされています。脳幹脳炎の症状と しては、ミオクローヌス・振戦・失調・眼振・中枢神経障害等を来します。この病態から回復する症例もあるものの多くは致命的な合併症へと伸展します。
 発症形式は急性・突然などと表現され、神経原性肺水腫を来たし、心筋梗塞と間違われることも多いです。神経原性肺水腫がだいたい24-36時間で急速に 発症し、これによって死亡する症例も多いと。2歳未満の小児では特に重篤化。特異的な治療は確立されていない為、今回の中国発のワクチンは本当に福音です と。効果・安全性ともに申し分なく、今後アジアがstudyの中心になるように期待されていました。日本・・・