栃木県の総合内科医のブログ

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論文:PCI症例での輸血について

PCI症例での輸血について
Patterns and outcomes of red blood cell transfusion in patients undergoing percutaneous coronary intervention
JAMA,2014 Feb 26;311(8):836-43. doi: 10.1001/jama.2014.980.

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【背景】
 ACS患者での輸血製剤使用については、研究毎に大きな違いがある。輸血が臨床アウトカムを改善したという決定的なデータはなく、合併症の出現についても危惧される。PCI患者においての輸血施行も確立されたものは無い。
【目的】
 米国のPCI施行入院患者における輸血パターンと有害事象を評価する。
【デザイン・患者】
 後ろ向きコホート研究。全米のPCI患者をほぼ網羅しているCathPCIレジストリーを用いて2009-2013年にPCIを施行された患者を全てinclusionした。出血合併症のデータ紛失やCABG施行された症例は除外。全225万8711件のPCIを評価。
【アウトカム】
 プライマリアウトカムは輸血頻度とし、輸血と関連した心筋梗塞脳卒中・死亡も評価した。
【結果】
 輸血頻度は2.14%(95%CI 2.13-2.16%)だった。2009-2013年にかけて輸血頻度は統計学的に有意に減少傾向(2.11%→2.04%)だった。高齢者・女性・高血圧既往・糖尿病既往・腎障害・心筋梗塞既往・心不全既往の方が輸血を受ける頻度は多かった。施設間の輸血閾値は調整を行ってもばらつきが見られた。輸血施行と合併症の関連では、心筋梗塞(OR 2.6:2.57-2.63)、脳卒中(OR 7.72:7.47-7.98)、入院死亡(OR 4.63:4.57-4.69)と関連していた。
【結論】
 米国の病院でPCIを受けた患者さんの輸血率は病院間でかなりばらつきがあった。また輸血施行は心筋梗塞脳卒中・死亡といった有害事象と関連していた。これらの関節研究の結果をうけて、今後輸血投与のRCTで、メリット・デメリットを前向きに検証する必要がある。
【批判的吟味】
・CathPCIというレジストリーは全米PCI患者の85%をカバーするレジストリーだそうです。現在のPCI患者での輸血施行の実態を表しているコホートといって良いでしょう。
・観察研究なので、実態は反映しますが今回関連があったとされる心筋梗塞脳卒中・入院死亡については大いに交絡因子を考えないといけないでしょうね。背景調整のうえでのRCTが待たれます。
・リスクを考慮するにあたってpropensity-modelingを用いているのでバイアスが生じる可能性がある。
・施設間の開きが大きく出ていることについては、2012年に輸血へのガイドラインが出たがそこでACS患者への積極的recommendationをしなかった影響ではと考察されていました。
・ちなみに輸血された患者の大半はHb 8g/dL以下でした。
【個人的意見】
・まあ、あまり縁が無いような有るような領域の話ではありますね。まあ、輸血することがアウトカムに悪影響を与えるとは言い切れないので、合併症を危惧して輸血を制限するのもおかしい気もします。
・どちらにしてもこのデータだけでは何とも言えないというところでしょうね。
・うーん、読んではみたもののモヤモヤ。PCIで輸血するような症例を担当する場合には、予後を厳しめにお話ししておくということは言えるかも。


http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1832543