栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet Gorlin's sign/BZ系止め方/セリアック病/消化管出血へのトラネキサム酸/CVIS/せん妄

論文抄読会:BMJ & Lancet
BMJ
【面白論文紹介コーナー MINERVA】
 飲み会のネタにでもされそうな写真(Gorlin's signと呼ぶ様です。写真見て下さい。)を掲載し、Ehlers-Danlos症候群や顎関節症、リウマチ疾患を考えなさいとミネルバさんは仰っておりました。この所見は、健常人では8-10%の人しか出来ないのだそうです。調子に乗ってやってみせると病気を疑われます。世知辛い世の中です。BMJ 2014;348:g1786)

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 ミネルバさんはさらに、BZ系薬剤の止め方についてご指導下さいました。BZ系内服者に対して、①usual care、②BZ系の中止のために複数回医療機関を受診する介入、③不眠へのアドバイスと睡眠薬減量指導介入の3群で比較すると、①は15%、②③は 45%の患者さんがBZ系を止めることが出来たとのことです。とにかく諦めずに注意喚起すること、不眠への生活習慣アドバイスがきちんと出来るか、という辺りがポイントですね。(British Journal of Psychiatry 2014, doi:10.1192/bjp. bp.113.134650)

 

【Celiac病のレビュー Coeliac disease】*1
 Celiac病は欧米ではコモンな疾患で全人口の0.2-1.0%と言われています。しかもどんどん増加傾向。一方で疫学的にはCeliac病の7-8 人に1人しか診断を受けていないのが問題だそうです。ちなみに中国でもどんどん増えてきており、これは食事への小麦の導入の影響でglobal化している のだろうと。日本で増えていないのは・・・我々医者の認知不足かなと思います。
 家族歴は結構重要で、第一親等以内に家族歴があると10%には発症するとされ、HLA-DQ2が90%で陽性になるともされています。もともと古典的には「水様性下痢、体重減少」が主訴とされてきましたが、こういった古典的症状例は稀で、むしろIBS様症状や鉄欠乏性貧血、慢性腹痛などの鑑別に考える必要があるようです。海外ではIBS症例の4.1%がCeliac病、Celiac病の38%がIBS様症状だそうです。40-50歳台の非典型的腹部症状を見たら考えましょうと。見逃してそうだなあ・・・
 採血では自己抗体も複数検出されており、EMA、tTG、DGPがありますが、本邦で商業ベースで測定可能なのは、DGPで三菱化学がやっています。抗体陽性+組織診断で十二指腸球部のリンパ球浸潤を確認しましょうと。Celiac病の16-43.3%が2回以上の生検でようやく診断がついたと報告されており、生検の感度は低いこと、グルテン負荷などで誘発するのも一手の様でした。これは慣れた病理医に見てもらわないと、”十二指腸炎”で終わっちゃいそうですね。臨床側から生検の時にセリアック病疑ってますよ〜と声をかけないと・・・治療はグルテンフリー食。治療反応乏しい症例が7-30%とされており、結構効果があるみたいですね。いやあ、勉強になりました。そろそろ自分で診断したい疾患の一つです。

 

【消化管出血に対するトラネキサム酸 How effective is tranexamic acid for acute gastrointestinal bleeding?】*2
 これ、初期研修の時のお作法でしたねえ。吐血きたら「アドナ100、トランサミン1000!」って覚えてましたが。実際、過去に9つもRCTがあるんだそうです。で、メタ解析すると死亡のRR 0.66(0.47-0.93)と結構消化管出血に対して良い結果が。ただ、どのstudyもpoor qualityで異質性も高いことがポイント。それにしても意外とエビデンスあったんだなあとびっくりしました。まあ、確かに外傷に対するトラネキサム酸は効果ありましたしね。
 というわけで、現在ongoingで2つの大規模RCT(TAUGIB trialとHALT-IT trial)が進行中で結果待ちです。特にHALT-ITは症例数8000人、トランサミン投与は1000g静注後に3000gを24時間持続という介入で、プライマリアウトカムは死亡ということで、qualityも症例数も過去の研究より格段によさそう。結果待ちですね。

 

 

■Lancet■
【分類不能型免疫不全症 Common variable immunodeficiency syndrome in an adult】*3
 名前は聞くけど中身さっぱり。相変わらず勉強になるLancet症例です。25歳女性で、3週間持続する下痢、微熱、胸部異常影で来院。初期治療では原因不明。BALでHSV-1が検出されHSVによる肺病変が疑われ、ACV投与開始。その後の精査で、γグロブリン低下・リンパ節腫脹・消化器症状・脾 腫・珍しいウイルス感染症から、分類不能型免疫不全症の診断に辿り着きました。まだまだ疾患概念的には定まっておらず、heteroな集団をみている様ですね。これもunderrecognized。

【高齢者のせん妄review Delirium in elderly people】*4
 せん妄って実は難しいですよね。高齢者に多い低活動性せん妄ってかなり見逃されています。例えば「入院して認知症進んだよね」ってやつ。これ、認知症の進行というよりは、認知症の方が環境変化でせん妄を起こしている可能性も十分あると思います。

 実は2500年も前から指摘されていますが、未だにunderrecognizedです。65歳以上の入院患者の50%には程度の差こそあれ、せん妄を起こしているという報告もあるくらい。そのうち30-40%はpreventableなんだそうです。せん妄の定義としては、認知機能低下+急性発症が代表的です。面白い表現がされてい て、”Acute brain failure”という概念を提唱しているグループもあるようです。これは、”Acute heart failure”の同様に原因は様々だが急性に脳機能が不全状態になることと認識しましょうという考え方の様です。
 せん妄の診断には検査などは不要で、clinical diagnosisが大原則です。「急性発症」と「変動」が特徴で、認識の為にはCAMを用いることが推奨されていました。(詳しくはこちら。http://www.icudelirium.org/docs/CAM_ICU_training_Japanese.pdf)もちろん、認知症とせん妄の区別は難しい事も事実ですけどね〜。また、高齢者の無痙攣性痙攣も鑑別なので、頭部画像検査よりは脳波検査の方が有用と書かれていました。また、せん妄を認知したら原則neuroemergencyとして対応すべしと。
 しばしば投薬の対象にされがちですが、予防も治療も確固たるものはなく、大事なのは非薬物的アプローチです。
原則として、

①患者の安全確保
②原因の同定・除去
③症状への対応

となります。

具体的には

①投与薬剤を減らすこと
②家族に付き添ってもらう
③静かな環境の提供
④疼痛コントロール

が重要とのことです。また、HELP programは世界中で採用されているせん妄に対する多角的介入と紹介されていました。せん妄を一旦起こすと、QOLが著しく損なわれ死亡率も上がることが示唆され、医療者・患者さんへの啓蒙・教育がなにより大事ですと。ここは、我々まだまだ弱いところですが、新年度から少しずつ取り組んでいきたい部分でもあります。