栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 慢性疼痛への鍼/振戦/禁煙アメとムチ/Frank's sign/前立腺癌長期予後

論文抄読会 JAMA & NEJM
■JAMA■
【慢性疼痛への鍼治療 Acupuncture for chronic pain】*1
 慢性疼痛への鍼治療のメタ解析に2013年度分を追加して検証していました。過去に29のRCTがあり、そのうち20の研究でsham controlが使われていました。偽鍼ってことでしょうかね。治療効果判定として、50%以下に症状が改善した症例を”good response”とすると、鍼治療群は50%が"good control"、sham control群は42.5%が"good control"、治療なしは30%が"good control"とのことでした。結果としては、鍼治療群が有意に改善しているとの結果ですね。
 まあ、sham controlも治療無しも改善しているのが慢性疼痛の難しいところですよね。ちなみに、この研究がやられている国ってアメリカ、イギリス、ドイツ、スペ イン、スウェーデン・・・あれ??アジア諸国が無いっすよ〜。日本も頑張ってデータを出していきたいですね。個人的に鍼治療だけが効くというパーキンソン 病に伴う慢性疼痛の方がいたのを思い出しています。ちなみに、背部痛に対する米国ガイドラインも検討してみても良いんでは?と。慢性頭痛に対する英国ガイドラインでも試してみれば?、変形性関節症に対する米国ガイドラインは推奨せずと、概ね好意的でした。今後更なる質と人数での検証が望まれると締めくくっていました。

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【振戦のreview Tremor】*2
 振戦は身体の一部のリズミカルな不随意運動と定義されています。本態性振戦(ET)は最も多いpathological tremorとされています。全人口の0.4-6.3%と推測され、60歳以上では1%がET持ちとされています。一方でphysiological tremorは生理的範疇なので、生活に支障は来さない情動に伴い出現するtremorとされています。診断は原則clinical diagnosisです。病歴として家族歴聴取が重要、かつ内服薬でVPAやリチウム製剤などの服用が無いかを確認しましょう。診察としては、運動のどのphaseで症状が強くなるか(動き始め?安静時?姿勢時?等)や分布範囲、頻度などを確認しましょう。何かしらのtaskを負荷すると増悪するのがパーキンソン症状(PD)、改善するのがETなので、計算負荷などをしてみましょう。
 ETは動作開始時から、PDは姿勢保持後に増悪してきます。不随意運動には、tremor、dystonia、chorea、dyskinesia、 myoclonus、asterixis、clonusがあります。asterixisは以前にも書きましたが以前は羽ばたき振戦と呼ばれ振戦と思われた時代もあった様ですが(flapping tremorという言葉もありますよね)、今ではnegative myoclonusという弛緩性のミオクローヌスに分類されています。指導医の皆様は是非カンファでうんちくを(笑)。PDの振戦は指や口唇とかに出るのが一つ特徴的なのと、必ず錐体外路症状があるはずなので丁寧に診察しましょうと。画像はほとんど意味なし。念のため何も無いのを確認しましょう程度。
 ETの発症は2峰性らしく10-20歳代と60歳代。半分以上に家族歴あり。意外と病態生理は分かっていないが、アルコールで抑制されるのが特徴です。 第一選択はプロプラノロールなどのβ遮断薬ですが何故効くかは不明。アルコールとβ遮断薬内服での書字が載っていましたがほぼ同じ効果でした(笑)。酒飲めってか?鑑別診断としてpsychogenicがありますがこれは結構難しい。特徴としては突然発症、重症である事。健側で手をtapさせると患側がそのリズムになるというのがpsychogenicで見られる所見と書いてありました。ある不随意運動クリニック(!?)では10-30%は psychogenicで多くがtremorだったそうです。PDのtremorに対する治療は確立されたものは無いとのことです。

 

【禁煙に必要なのは飴かムチか Reward-based incentives for smoking cessation -How a Carrot Became a stick-】*3
 禁煙に対してどのようなアプローチが良いのかは様々検証されています。日本ではバレニクリンが注目されていますが、原則的には認知行動療法などの行動変容が鍵ですよね。しばしば、禁煙に関して「ペナルティーを課す:ムチ」ことで勧めていこうという動きがありますが、「ご褒美をあげる:アメ」的なアプロー チも検証されています。
 過去の研究では、2009年にNEJMに載った6ヶ月禁煙したら750$あげるよっていう工場の従業員のstudyでは、禁煙率がかなり高く、バレニクリンと同等の効果だったという報告もあるようです(N Engl J Med. 2009;360(7):699-709.
。このstudyのすごいところは、報酬が出なくなっても禁煙率は維持出来たということです。ただ、アメ制度はどうしてもお金がかかるので、今後どういったstrategyが良いのか検証が必要とのことでした。やはり国や自治体ベースの制度改革が重要だと思います。現場では地道に禁煙指導しますが・・・
 

 

■NEJM■
【Frank's sign】*4
 NEJMのClinical pictureはきれいな耳介のfoldの写真でした。”ear lobe”なんて記載もありますが、正式にはfrank's signというようです。症例は59歳の男性で胸痛で来院。虚血性心疾患でCAG→PCIとなったそうなんですが、耳の形が変だと本人が言ってきたんだそ うです。両側であった様で。耳介の耳たぶ部分に線状のしわが・・・
 これはFrank's signといって、皮膚や血管の弾性線維の欠乏を示唆する所見であり、感度は高くないが60歳以下の若年者でみつけたら有用かもと。一つの診察所見として記載してみましょう!

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【早期局所前立腺癌への経過観察vs摘出術の研究 SPCG-4研究 Radical prostatectomy or watchful waiting in early prostate cancer】*5
 前立腺癌のスクリーニングについては、喧々がくがくではありますが。今回は治療についてです。今回のSPCG-4研究は実はPSAスクリーニングが始まる前の時代の患者さん達の長期follow upの経過です。実はPSAスクリーニング開始後のPIVOT studyでは、経過観察と摘出群で死亡率に差が出なかったという報告が既にあるようです(N Engl J Med 2012;367:203-13.)。今回はPSAスクリーニング開始前のデータ。23.2年の長期予後の研究です。inclusionされていたのは、75歳以上、Stage2まででPSA50以下、骨シンチ陰性の症例。メインアウトカムは全死亡・前立腺癌関連死でした。
 結果はRR 0.56(0.41-0.77)と有意に死亡を減らし、NNTは8でした。サブ解析では65歳未満の方が効果が高く、65歳以上は微妙。術後の排尿関連の QOLは手術群で明らかに悪いので悩ましいところです。正直23年経過して、手術群で147/347人(42.4%)が生存し、経過観察群で101 /348人(29%)が生存。予後良いですよねえ。今後の課題はどの群なら経過観察で生存できるのか、経過観察群の生存者での要因解析が大事では?と書いてありました。