栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ 妊娠糖尿病のoverdiagnosis/甲状腺リンパ腫/Wells+d-dimer/慢性硬膜下血腫

論文抄読会:BMJ
【妊娠糖尿病のoverdiagnosis Gestationlal diabetes:new criteria may triple the prevalence but effect on outcomes is unclear】*1
 これもtoo much medicine特集の一つです。妊娠糖尿病の診断基準が改訂され、妊娠糖尿病と診断される妊婦さんの数は2-3倍に増加したと言われています。より安全な妊娠・産褥期管理をとの観点からなのでしょうが、スクリーニング検査の回数を一回にして、カットオフを引き下げることのメリットが十分証明されていない中での改訂に対して注意喚起がされていました。多くの根拠とされている論文が観察研究だったり、WHOの評価でもEvidence levelがlowとされているガイドラインを世界各国で次々に採用している現状がある様です。
 また、RCTやメタ解析で出生体重や合併症でのメリットは中等度あるものの、体重減少は100-140g程度とのこと。うーむ、やっぱりガイドラインの 吟味は重要です。ただ、現実として難しいのは専門団体として推奨されている事項に対してのプライマリ・ケア医の立ち位置です。特に専門では無いとな あ・・・どなたか積極的に関わっている方はいらっしゃいますでしょうか?

甲状腺原発のリンパ腫 Airway obstruction after the development of Hashimoto's thyroiditis】*2
 甲状腺原発のリンパ腫の症例報告でした。胸郭外由来のwheezeの原因としてgoiterは指摘されていますよね。まあ、これは視診で一発なんでしょうけど・・・症例の解説の中でClinical Pearlがありました。
 「橋本病の経過中に急に甲状腺が腫大してきたらリンパ腫を疑え」
 なるほどー。一般人口と比較するとリスクは60倍にも及ぶんだそうです。ちなみに重症の上気道閉塞は甲状腺リンパ腫の25%に発症するとのこと。ちなみに橋本病は甲状腺乳頭癌のリスクにもあるそうです。

【Wellsスコアとd-dimerの組み合わせによる下肢DVT評価 Exclusion of deep vein thrombosis using the Wells rule in clinically important subgroups:indivisual patient data meta-analysis】*3
 Wells scoreは世界的に使用されているスコアですが、意外とスコアを元に診療を決めている訳では無く、じゃんじゃんCTが撮られているという背景があります。今回はWells scoreにd-dimer値を加えることで、下肢DVTを除外出来るかを検証したメタ解析でした。13のRCTのデータを用いて、超音波でのDVTの確 認をアウトカムとしています。ちなみにまたオタワです。
 12000人のデータが利用され、1864人(19%)に近位部DVTが見られています。Wellsだけだと、最低点の-2点でもDVT症例が2.8% あると。これがある意味見逃し率でもありますね。そこでd-dimer陰性(<0.5)と、Wells ≦1点を組み合わせると1.2%(95%CI:0.7-1.8)になるとしています。また、サブグループ解析では、担癌患者、DVT歴のある患者では見逃 し率が2%を越えると。これなら安全!みたいな論調でしたが・・・
 この手の”感度100%”という研究の限界を感じます。実臨床で100%なんてありません。d-dimer正常、Wells低スコアのDVTはもちろんあるでしょうし、Jolt accentuation陰性の髄膜炎もあります。私達医療者はつい白黒をつけたがりますが、いつまでたってもグレイなんだろうなあと。思考停止を避けながら、一例一例丁寧に。

【高齢者の慢性硬膜下血腫のレビュー Subdural haematoma in the elderly】*4
 慢性硬膜下血腫はプライマリケアレベルではコモンですが、一方で診断されず見逃されていることも多い疾患と指摘されています。見逃しの理由として、頭部外傷や転倒歴のある患者は半数程度しかないこと、転倒から症状出現までの平均日数は49日と長いこと、症状がせん妄・認知症変化が多いことなどが挙げられます。症状としてTIAなどの神経巣症状は1-21%と報告されています。ある研究では、硬膜下血腫の60-80%は画像検査をやる前には疑っていなかったなんてデータもあるみたいです。疑うことが大事。