栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:Lancet カルフィラキシー/砂糖制限/歩数と心血管イベント/糖尿病の多様性

■Lancet■
【カルシフィラキシーの症例 Calciphylaxis】*1
 慢性腎不全・透析患者中の患者での合併症らしいですね。聞いたこと無かったので勉強しました。簡単に言うと、透析もしくは慢性腎不全患者さんの皮膚の難 治性潰瘍で、皮膚生検では特徴的な血管の石灰化を来す疾患なんだそうです。本邦でも平成22年に難病指定となり、厚生労働省の診断基準案も提唱されていま す。レントゲンでも血管の石灰化が写ってました。残念ながら現時点では、標準的な治療法は確立されていないようですが、ステロイド外用、二次性副甲状腺機 能亢進量の治療(シナカルセト塩酸塩って薬があるんですね。)、チオ硫酸ナトリウムやビスホスホネート製剤も使用されていました。知らない病気は診断でき ないので。
http://www.dialysis.med.keio.ac.jp/kouroushou/content02.html

 

【今こそ砂糖制限を! Action on sugar-lessons from UK salt reduction programme】*2
 2003-2004年にイギリスがConsensus Action on Salt and Health(CASH)というキャンペーンを利用して国を挙げて減塩に取り組んだ結果、2000年は9.5g/日だった塩分摂取が2011年には 8.1g/日に減塩され、年間9000人の脳卒中心筋梗塞患者を救ったとされたというのです。日本はまだまですが・・・
 で、砂糖はカロリー過多、体重増加、糖尿病発症のリスクになるので、塩分と同様にキャンペーンを用いて段階的かつ計画的に減らしていくことで健康問題へ の介入をしていこうという話でした。現在の英国の砂糖摂取量は62g/日程度でカロリー換算で248kcal、全カロリー摂取量の12.6%を占めるそうです。この砂糖を30-40%程度カットし、最終的に100kcal/日程度まで減量したいとのことです。これらの目標達成によって、体重・糖尿病・脳卒中心筋梗塞への効果を出していきたいとのことでした。
CASHのホームページ http://www.actiononsalt.org.uk/
 
【運動の程度と心血管イベント NAVIGATOR研究結果を用いて Association between change in daily ambulatory activity and cardiovascular events in people with impaired glucose tolerance(NAVIGATOR trial):a cohort analysis】*3
 NAVIGATOR研究はグリニド系薬剤とバルサルタンの糖尿病発症予防効果を検証した2×2介入RCTですが、その症例データを用いた追加研究です。 ベースラインの歩数12ヶ月後の歩数変化を調査し、5−6年後の心血管イベントをプライマリアウトカムとしています。対象群は、糖尿病境界型で血管リスクや心血管イベント既往がある症例。運動の研究はなかなか客観性が保てないなか、今回は歩数という客観的指標で評価していました。
 結果として2000歩の歩数増加でHR 0.92(0.86-0.99)、ベースライン2000歩以上でHR 0.90(0.84-0.96)有意差が見られたとのことでした。運動については、なかなか客観性が保てず、qualityの高い研究が少ないのが現状 ですが、もっと客観的かつ再現可能な運動療法の確立が大事でしょうね。去年NEJMでoutcomeに有意差の出なかったLookAHEADとは対照的でした。まあ、あちらは糖尿病症例でしたが。歩数計導入は一手でしょうか。
 
【糖尿病の多様性 The many faces of diabetes:a disease with increasing heterogeneity】*4
 糖尿病についてのreview。Lancetは糖尿病特集みたいな感じでした。特に分類。そもそもtype1とかtype2とかいう分類は、少数の極端な表現形を代表化して分類したものであり、実際はもっとheteroな疾患群で連続的な病態だろうと。肥満がその状況を更に複雑にしています。例えば30年前であれば「思春期発症=type1」だったが、最近では思春期発症のtype2は増えていますよね。肥満関連の糖尿病は肝内脂肪沈着がkeyになるとされており、アジア人は肝内脂肪がつきやすく、BMIの割に糖尿病リスクが高いとされているようです。
 思春期時期はそもそも成長ホルモン過剰になるため、一過性にインスリン抵抗性が亢進し内因性インスリン分泌を亢進させることで対応していると。更に、成 人と比較するとβ細胞が脆弱な状態である事も分かっており、肥満を合併すると糖尿病を発症しやすくなるようです。なるほどー。なので、思春期発症の糖尿病 でDKA合併、自己抗体陽性みたいな典型例は良いとして、そうでないtypeは2型も視野に入れる必要がありますね。そもそも、2型糖尿病のうちDKAは 20%で合併自己抗体陽性は10-30%とされているんだとか。単純な二元論では切れず、ketosis prone type DMやLADAなども考慮しながら、正確な病型判断を出来るように検討していく必要があります。
 本文中に載っていましたがイメージとして、

T1DM(Young)>T1DM(adult)>LADA(high)>LADA(low)>T2DM

といった連続性での糖尿病理解が必要かもしれません。

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http://diabetes.niddk.nih.gov/dm/pubs/statistics/より