栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM バレット食道のアブレーション/WEB版飲酒介入/電撃性紫斑病/プライマリケアの高齢者うつ

■JAMA■
【バレット食道への高周波アブレーション Radiofrequency ablation vs Endoscopic surveillance for patients with Barrett esophagus and low-grade dysplasia】*1
 バレット食道は食道癌の前癌病変として知られていますが、本邦では欧米に比べると頻度は少ない病態です。近年、バレット食道に対する高周波アブレーションの効果が報告されるようになってきました。最近は、特に異型度が高い症例を中心にメタ解析でも効果が証明されつつあるのですが、今回は異型度の低い症例の経過観察群との比較です。
 多施設共同RCTで、136例の低悪性度バレット食道の症例を対象に、アブレーション群と経過観察群にランダムに振り分けています。プライマリアウトカムは3年間のfollow up期間中の高度異形成もしくは腺癌への伸展とされました。経過観察群は6,12,24,36ヶ月に内視鏡follow upされました。
 結果は、試験の早期終了で打ち切られ、アブレーション群が圧倒的な成績でした。

高度異形成腺腫  1.5%(アブレーション)vs 26.5%(内視鏡観察群)

腺癌  1.5%(アブレーション)vs 8.8%(内視鏡観察群)

 となり、高度異形成腺腫と腺癌のリスクは25%減少しNNT4との結果でした。合併症頻度は19%で、疼痛や狭窄、潰瘍などだったようです。
 まあ、治療群と経過観察群ですからねー。今後は倫理的にこの手の研究は組みにくくなりますね。日本で実施している施設ってどのくらいあるんでしょうか??

【若年者へのwebベースでの飲酒介入 Web-based alcohol screening and brief intervention for university students】*2
 世界初のwebを用いた飲酒への介入を検証したニュージーランド発の大規模DBRCTです。17-24歳の大学生を対象としていて、参加すると約5万円のご褒美がもらえます(これ、大学生ならやるかもなあ)。
 方法としては、まずe-mailでAUDIT-C(AUDITの簡易版)
でスクリーニングされ、4点以上の学生さんをinclusionしていました。 webのAUDITと10分程度の評価・フィードバック群とコントロール群を比較し、プライマリアウトカムを5ヶ月後の飲酒習慣の変化で評価しています。
 5135人の学生のうち3422人が4点いようで対象となり、follow up率は83%とまずまずでした。結果としては、アルコール摂取頻度も総量も減らさなかったという結果でした。editorialもそれを受けて、若年者 の飲酒は不幸な転帰をたどることも時折あり課題だとしながら、今後どういった形での介入をしていくかを悩んでいました。

 
■NEJM■
【電撃性紫斑病の症例 ※ネタバレ注意】
 45歳、男性が嘔気・心窩部痛で来院。紫斑も出現しショックになりました。で、追加病歴を聴取すると手を犬に噛まれたと・・・ヤツですか。ちなみに搬送される前に前医でLVFX→PIPC/TAZが投与されてきています。この辺は古今東西どこでも似たような感じですね。ちなみに来院時熱は35.6度。翌日には39.6度まであがりますが、やっぱり超重症は熱無いこと多いですよね。
 結果としては、Capnocytophagaによる電撃性紫斑病だったのですが、電撃性紫斑病の鑑別が挙げられていました。感染症としては、 S.aureus、Streptococcus属、Capnocytophaga canimorsus、Pasteurella multocida、Neisseria meningitidisあたりでしょうか。結局お亡くなりになられています。診断がついてもなかなか救命が難しい疾患の一つです。

プライマリケアでの高齢者うつ病の診断 Diagnosing depression in older adults in primary care】
 1992年から2005年にかけて65歳以上のうつ病患者の頻度が3%から6%に増加したと報告されている様です。そして、その大半に抗うつ薬が使用さ れている現状があります。ところが、プライマリケア領域で診断されたうつ病の大半がDSMうつ病基準を満たさないのだそうです。2/3程度は気分障害の範疇であろうと。で、そこに製薬会社主導の「見逃している」キャンペーンが合わさって、不要な抗うつ薬が大量に高齢者に使用されていると警鐘を鳴らしています。もちろん、高齢者のうつが特徴的な症状を来さずに難しいと言う部分もあると思います。種々の認知症やせん妄、高齢者てんかん、薬剤副作用など多彩な 鑑別が挙がる中、この部分をプライマリケアで担うべきか、専門家に委ねるべきか悩ましいところです。カナダでは既にプライマリケアレベルでのうつのスク リーニングは禁止しています。
 重要なのは、対応できるプライマリ・ケア医の教育・育成であり、薬剤投与に長けるというのではなく、認知行動療法などの面接方法をもっと勉強していかないといけないでしょうね。