栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 喫煙妊婦のニコチンパッチ/医学論文でのWikipedia/爪白癬/小児2型糖尿病/サッカーチームの運動減量指導/サルコイドーシス

BMJ
【喫煙妊婦へのニコチンパッチ Nicotine patches in pregnant smokers:randomised,placebo controlled,multicentre trial of efficacy】*1
 禁煙治療は一般人からより特殊な介入が難しい群のtrialへとターゲットが変わりつつあります。今回は、18歳以上の妊娠12-20週の妊婦で、タバコを5本/日以上吸っている妊婦さんを対象にニコチンパッチの効果を検証しています。プライマリアウトカムは分娩時の禁煙率としています。
 結論として
は、ニコチンパッチは禁煙率を有意に増やすことは出来ませんでした。グラフ見ると若干良さそうなんですけどね・・・やはり基本のカウンセリングがきちんと出来るか。薬ばかりに目が行っていることへの反証ですね。ちなみにイギリスは妊娠前年までの喫煙率26%、妊娠中も12%と結構な率になっています。

【医学論文でのWikipediaの利用率 References that anyone can edit:review of Wikipedia citations in peer reviewed health science literature】*2
 ちょっと前に話題になってましたね。Wikipediaができたのが2001年だった様で、以降年々パワーアップしています。特に医学分野の内容も馬鹿に出来ず、ある調査では内容の13%しか間違いが無かったとか、若手医師の70%が日常的に使用しているとの予備調査結果もあります。
 今回、そんなWikipediaがどの程度論文にreferencesとして掲載されているかを調査。2001-2013年に発表された論文のうち1433論文で使用されていた模様。多くは定義とか歴史のreferenceだそうです。確かにwiki医療内容の歴史(主に海外)はすごいですよね。しかも、2011年から急増傾向。
 ただ、それに対してのeditorialでWikipedianwikiを作っている人々)が、そもそもWikipediaはreferenceとして使うべきではないし、特定の権威の意見や新規概念提唱はしないものだ反論していました。

【爪白癬のレビュー Fungal nail infection:diagnosis and management】*3
 爪白癬は全人口の4.3%程度で自然治癒はほとんどないものとされています。現行治療では16-25%が治療抵抗性ということも言われています。起因微生物としてMicrosporum,Epidermophyton,Trichophytonが多く、Candidaは10%程度。危険因子として糖尿病、70歳以上HIV感染、乾癬などが独立した危険因子。
 診断は検鏡+培養。塗り薬では真菌自体は29-36%だが、完全治癒は5.5-8.4%と低いんだそうです。全身性内服薬ではTerbinafine(ラミシール)が第一選択。持続療法の方がパルス療法よりも効果が高く(70.9% vs 58.7%)、内服+塗り薬は内服単剤よりも効果が高いとされています。爪除去やデブリドマンは、重症の場合には役に立つかもしれないが、これは全体の真菌量を減らし、治療効果を増加させるためと。40%尿素や10%サリチル酸で侵軟させる方法もあるけど、これらの処置には必ず抗真菌薬を併用しないと効果は乏しい様です。

■Lancet■
【5歳の2型糖尿病の症例報告 A 5-year old girl with type 2 diabetes】*4
 もう発症年齢では1型と2型を安易に区別は出来ないよねということの実例です。2型糖尿病の家族歴があり、出生体重4500g、5歳の時点でBMI 24.5で、自己抗体陰性、ケトン陰性、遺伝子検査でMODYも否定的。血糖は200前後で、頚部には黒色表皮腫あり。結局2型糖尿病としてメトホルミンを処方するも内服してくれず、インスリン治療中とのことです。オーストラリアからの報告で、民族的な問題もあるかもと検討していましたが・・・ふと、我が子のお腹に目がいったりします。遺伝素因はあれど、やはり親の責任も重大ですからね〜。

【肥満男性へのサッカークラブによる運動介入】
 A gender-sensitised weight loss and healthy living programme for overnight and obese men delivered by Scottish Premier League football clubs(FFIT):a pragmatic randomised controlled trial】*5
 多くの肥満患者への介入試験の対象は女性で男性をtargetとした介入は何が良いのかは十分検証されていない。今回、スコットランドのプレミアリーグチームが協力して、1回90分の運動セッションを毎週計12回行う運動プログラムで体重減少効果を検証するという研究。クラブ・メディアなどを通じて、BMI≧28の35-65歳の男性を集めてきて介入し12ヶ月後の体重変化をプライマリアウトカムとしています。視点が面白いです。結果、体重は4.9g減少しその効果は12ヶ月まで持続したとの結果でした
 こうゆう楽しい企画モノをもっと取り入れていきたいなあ。まあバイアスはサッカーファンというところでしょうかね。うちの糖尿病教室も少しずつ良いモノにしていきたいですね。

【サルコイドーシスのレビュー Sarcoidosis】*6
 Lancetあたりの雑誌だと、こういった比較的メジャーな疾患については定期的にreviewを書いている様で、前回は2003年だったみたい。さて、疫学は5-64人/10万人と多くは無いんですが、世界的には日本が最も少ないんだそうです。これはきっとunderdiagnosisなんだろなあ・・・70%が25-45歳発症で、高齢発症は少ない様です。粉じんが関与するとも言われ、911の被害者や消防隊で有病率が高いんだそうです。原因は不明ですが、遺伝的素因も判明してきており、素因を持った人に対する特定の抗原への免疫反応が原因ではないかと推測されています。
 リンパ節腫張があった場合に、肉芽腫の証明のために経気管支リンパ節生検やFDG-PETで活動性評価を行いましょうと。ここが2003年のreviewと比較して変わったところです。採血上の炎症反応は挙がらないことも多いです。症状としては、咳・結節性紅斑・全身倦怠感・Xp異常・末梢リンパ節腫張・ぶどう膜炎等。特に倦怠感は70%にも及び、認知機能低下も出ることがある様です。診断は、①臨床症状+画像、②組織、③除外診断からなります。標準的なfollow up法は確立されていないが、3-6ヶ月毎のXp/ECG/肺機能。で、寛解まで行くと再発は非常に少ないと。経過中に心配なのは繊維化で繊維化が肺・心臓に及ぶと死亡率を上げるようです。