栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:非心臓手術の周術期アスピリン投与について

非心臓手術の周術期アスピリン投与について
Aspirin in patients undergoing noncardiac surgery
N Engl J Med 2014; 370:1494-1503

【背景】

 非心臓手術を受ける患者における周術期のアスピリン投与の効果は、もともと内服している人としていない人とでも大きく異なり、はっきり分かっていない。
【方法】

 2×2のfactorial designを用いて、非心臓手術を受ける患者で血管リスクの高い10010人をランダムに、アスピリン群 vs プラセボ群とクロニジン群 vs プラセボ群に割り付け。こちらはアスピリンtrialの結果。患者は、trial開始前はアスピリンを内服していなかった5628人とtrial開始前から内服していた4382人に層別化した。患者は、アスピリン200mgまたはプラセボを手術当日の直前から内服を開始し、その後、内服開始群は100mg/日を30日、内服継続群は7日間連日服用し、最終的に元々の量に戻した。プライマリアウトカムは、compositeで30日時点での死亡と非致死的な心筋梗塞となっている。
【結果】

プライマリアウトカムは、

有意差はつかなかった(HR 0.99:0.86-1.15)

主要な出血は

有意に高かった(HR 1.23:1.01-1.49)。

アスピリン開始群と継続群では出血に差は認めなかった。

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【結論】

 手術前のアスピリン投与は、死亡や非致死的心筋梗塞などのcompositeアウトカムを改善する効果を認めなかった。一方で、アスピリン内服を継続しても主要な出血は増えなかった。


【批判的吟味】
・今回の試験は解釈は色々できるのですが、この試験の目的はアスピリン投与によって死亡や心筋梗塞などの周術期合併症を防げるかが争点です。出血が少なかったなどのエピソードを取り出してだからアスピリン安全・・・という流れではあります。
・RCTとしては、デザインは2×2でやや複雑ですが、ランダム化され二重盲検になっています。
・ITT解析については本文中の記載を見つけられませんでした。
・サンプルサイズは10000人で計算。今回の一番の売りはnの多さだと思います。
・ひとまず30日まではアスピリン群もプラセボ群も死亡率・心筋梗塞率は変わらないという結果ですよね。その後の長期予後は不明です。
・この情報の利用の仕方として、差が無いのであれば「無理してアスピリンを飲ませなくても良いよね」という考えはありだと思います。内視鏡ガイドラインとは逆行する意見な気が・・・出血は少し増えますしね。
・結局追加群と継続群が両方含まれているからごちゃごちゃするんでしょうね。
6週間以内のBMS症例やDES留置後1年以内の患者などは除外されており、high risk患者で止めて良いということではありません。
【個人的見解】
 難しいところです。少なくとも元々飲んでいない人にわざわざ予防の為に術後から開始することは無いでしょうね。リアルワールドで最も困るのは、もともと飲んでいた人達でしょうか。まあ、ある意味でのnegative studyだと思います。出血は再開すれば少し増えるので、手術時期の出血の有無などを考慮してlow riskならそんなに急いで再開しなくても良いという緩やかな結果として使えるかもしれません。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1401105