栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 軟部腫瘤/成人の痙攣/高血圧合併妊婦/詐病/プライマリケアでの精神疾患分類

BMJ
【軟部組織腫瘤へのアプローチ A man with a mass in the thigh】*1
 症例レポートから学ぶマネージメント。BMJのPicture quizです。軟部組織腫瘤はプライマリケアや整形外科外来ではよく遭遇する相談事項。ちょっとした時に「そういえば・・・」と相談されますよね。基本的には良性:悪性=100:1で圧倒的に良性疾患が多いと理解しましょう。
 悪性を示唆する所見として、
①5cm以上
②増大傾向
③筋膜より深部に及ぶ
④痛みがある

 の4つが挙げられてます。悪性の大半はsarcomaかlymphomaかmetastasisとなっています。

 生検の方法として穿刺吸引細胞診は診断精度が悪く、コアニードル生検を推奨していました。切除でも良いけど切除は合併症が多いよねと。100人に1人の悪性を見逃さないように精進です。
 
【成人の初回痙攣 First seizures in adults】*2
 成人の痙攣のreviewです。まずは言葉の定義から。2010年に世界的にてんかん発作およびてんかんを体系化するための用語と概念の改訂が行われました。詳しくは日本語訳があるので見てみて下さい。主な改訂点として、1981年の分類で提唱され広く用いられている単純部分発作、複雑部分発作、 二次性全般化部分発作などの用語は廃止し、「全般発作」と「焦点発作」に二分することになりました。また、「特発性てんかん」、「症候性てんかん」、「潜在性てんかん」などの言葉は廃止し、素因性、構造性(代謝性)、原因不明の3つを使用することが推奨されています。「症候性てんかん」って言葉に対しても、そもそもてんかんは症候性でしょ?とのこと。
 用語的には、epilepsyは病名としての”てんかんseizureはそれぞれの”てんかん発作”を指します。seizureが2回以上の繰り返 された場合にepilepsyと診断するのが一般的です。seizureには見た目上の痙攣を起こすものと起こさないものがあり、 convulsion(痙攣)は、見た目の痙攣を指します。痙攣(convulsion)=てんかん発作(seizure)ではないので、「痙攣!」を考えるときに一過性意識消失として鑑別を考え直して失神との鑑別を考えるべきです。失神でconvulsionを来す事は稀では無いとされています。また、 seizureだけど痙攣しない病態に”無痙攣性てんかん発作”(Nonconvulsive seizure:NCS)があり、成人全体で12-18%程度と意外と多いので注意が必要です。高齢者になるともっと頻度が増え、ますます悩ましい状況と なります。convulsionの有無ですぐにepilepsyと飛びつかない様にしましょう。
 熱性けいれんを含むと、seizure自体の生涯罹患率は5-10%程度と言われています。上述の様にSeizureの1/3は誤診されていると言われ るほど難しいですが、重要なのは病歴で、80%は病歴で診断可能とされています。最も重要なのは、痙攣を起こしているときの目撃者の情報です。また、その際の眼球運動や筋緊張、意識回復までの時間などが手がかりになります。24時間以内に繰り返す発作でepilepsyと判断するか単独のseizureと判断するかはcontroversyとのこと。また、早期に神経内科にコンサルトすることはムダな検査が減り診断精度が上がるとの過去の報告もあるようです。確かにな〜。頭部MRIガイドラインでは推奨されているものの、推奨根拠に乏しいと。
 早期治療介入は、再発リスクは減らすものの長期神経予後の改善や死亡率改善には繋がらない。診断することには社会的な背景も含まれてくる為、若年者や働き盛りの患者では専門医相談かなあ。重度の交通事故の頻度は健常人の40%増しだそうです。

【高血圧合併妊娠の合併症リスク Chronic hypertension and pregnancy outcomes:systematic review and meta-analysis】*3
 妊婦さんの1-5%に高血圧があると言われており、年々頻度が増加中。これは妊婦さんの高齢化や肥満の増加と関連すると言われています。最近GDMに注目がだいぶ集まっていますが、GDMより周産期合併症が多いとも言われていますが、実際の所どの程度high riskなのかがあまり検証されていないため、今回メタ解析が行われました。高血圧ありの妊婦の55の観察研究(前向き・後ろ向き)+RCTが検証され、アウトカムは、子癇・帝王切開・胎児死亡を評価しています。結果はかなり研究間の異質性が高く統合するのは不適切かもしれないと前置きされつつ、ほとんどのアウトカムでリスク上昇していました。
 例えば、
  • 子癇 RR 7.7(5.7-10.1)
  • 帝王切開 RR 1.3(1.1-1.5)
  • 37週未満の早期産 RR 2.7(1.9-3.6)
  • 2500g未満の低出生体重児 RR 2.7(1.9-3.6)
  • NICU入室 RR 3.2(2.2-4.4)
  • 周産期死亡 RR 4.2(2.7-6.5)
と全てにおいて有意なリスクになることがはっきりしました。
 この手の問題でいつも難しいのは、リスクになる事が分かっても、そこに治療介入することが患者outcomeを改善するかどうかが分からないというとこ ろ。現時点でいつから治療するのか、降圧目標をいくつにするか、どの降圧剤が良いのかなどについて、controversialであり、今後の検証が待たれる状況です。


■Lancet■
詐病について Early recognition and management of fabricated or induced illness in children】*4
 1977年にMunchhausen症候群が初めて報告して以来、詐病については様々な定義や用語が用いられてきています。DSM-5では、 repetrator(加害者)に分類しています。初期症状として約42%の患者が痙攣を来して来ます。また、喘息患者の1%が詐病で親による overmedicationが原因との報告もあります。身体表現性障害の結果として、
自らのみならず子供ないし他者へ行動を起こしてしまうものも当てはまります。
 大半が女性で、10-30%が医療従事者!50%が身体解離性障害75%が人格障害を合併していて、1/3に疾病利得がある模様です。幼児期の愛情が最も重要な要素で、それが足りないことで病院に何度も連れて行く、子供ないし自分の症状への対応力が低下し、様々な行動に繋がってしまうとのこと。その ような行為を受けた子供にも同様の症状が見られることが多く、負の連鎖を断ち切ることが重要です。幼児期の十分な愛情、無条件の愛を必要としているのに受け入れられない多くの方がいることは本当に辛いところです。

プライマリケアでの精神疾患分類 Classification of mental disorders: a global mental health perspective】*5
 精神障害は多くの国でcommonな病態ですが、経済的社会的な要因も関連する為、途上国に済んでいる方が80%で、その方々に10%程度しか資源が使えないことが問題となっています。このうち、多くが軽症であり専門医ではなくプライマリ・ケア医が関与することが必要になってきます。実はICDやDSM などの分類でもプライマリケア医向けの診断基準のcompact版があるのですが、なかなか実際には使用されていないのが現状です。今後はプライマリケア 医がより使用しやすい分類・診断基準の確立と普及が重要とのことでした。
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