栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM Torus palatinus/2型糖尿病患者へのAleglitazar/頭蓋内石灰化/CA-MRSAのvanA獲得/HCV治療/感染性下痢症

■JAMA■
【Torus palatinus A Nodular protuberance on the hard palate】*1
 口腔内診察や内視鏡時に硬口蓋の正中付近に隆起物があるのを見たことないですか?これ、前から何だろうなあと思ってたんですが、こんな名前で呼ばれてるんですねえ。日本語訳すると口蓋隆起なんでしょうか。torusはラテン語で腫瘤・隆起を差し、palateは上顎の硬口蓋。ちなみに下顎の硬口蓋に出現するものはtorus mandibularisと呼ばれる様で、両者が合併することもしばしば。病態的には外骨腫が粘膜下で突出することで、内腔には隆起が見られます。若年成人に多く、torus palatinusは女性に多いのだとか。一般人の12-27%に見られるという報告もあり、意外と見逃しているかも。まあ、経過観察で全く問題ないのですが、稀に発声障害、咀嚼障害、潰瘍などの原因になる事も多い様です。レントゲンはこれが分かりやすかった。https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/55/6/55_467/_pdf

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http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1205313より

【2型糖尿病患者ACSへのAleglitazar Effect of Aleglitazar on cardiovascular outcomes after acute coronary syndrome in patients with type 2 diabetes mellitus】*2
 何故かこのタイミングでチアゾリジン系最期の刺客が・・・今までのアクトスなどはPPARγの阻害薬でしたが、今回のAleglitazarはPPARαとγの二重阻害です。今回は、AleglitazarのACS入院歴のある2型糖尿病患者に対する効果を検証したRCTです。多国籍多施設の世界的RCTでアウトカムは心血管死、心筋梗塞脳卒中composite outcome。同効薬剤の過去のnegative dataの中、果敢にも挑戦しましたが結果は安全性で問題があり、途中で研究中止。
 プライマリアウトカムでは有意差は出ず、むしろ心不全、骨折、腎障害、消化管出血がそれぞれ増える傾向もしくは有意差が出てしまいました。ちなみに、HbA1cとLDLはプラセボ群よりは有意に低下していました。で、体重は増えるみたいです。やはり血糖だけ下げれば良いという時代では無いと思います。true outcomeをきちんと意識しないと単なる数字下げゲームになるだけです。ロシェはこの結果を受け、Aleglitazarの開発を中止したのだそうです。この研究で投与された患者さんは既に10000人。6試験が行われ、セールスは20億ドル(2000億円)を見込んでいたとのこと。チアゾリジン系はもう十分!


■NEJM■
【セリアック病による頭蓋内石灰化 Occipital calcification and celiac disease】*3
 画像は結構衝撃的です。10年間の反復性の後頭部痛がある24歳の女性。視野障害を伴う数分から数時間の持続時間の頭痛で偏頭痛として治療されていましたが、反応は不十分。採血結果で葉酸値低下 2.2ng/mlが判明し、頭部CTで後頭葉に著明な石灰化が!髄液正常で血清ATG抗体陽性、内視鏡の十二指腸生検で陰窩過形成、絨毛萎縮と上皮内リンパ急増多が判明。グルテンフリー食+葉酸補充、カルバマゼピンで症状改善したと。葉酸欠乏症で頭蓋内石灰化を来す事があり、過去の報告ではMTX使用例や先天性葉酸利用障害、Sturge-Weber症候群などで報告されています。

【CA-MRSAがvanAを獲得! Transferable Vancomycin resistance in a community-associated MRSA lineage*4
 これはあちこちで話題だったのでさらっと。青木先生のブログにも取り上げられていました。ブラジルの症例報告で、市中のMRSAが治療中にvanAを獲得してVRSAになったという衝撃の一例です。もともとMRSAはE.faecalisなどからvanAをもらってVRSAになると言われていて、皮膚感染症が多かった様です。今回はMRSA敗血症からVRSA敗血症となり、その後Stenotrophomonus→Canida菌血症まで伸展しお亡くなりになっています。
 問題なのは、MRSA→VRSAという流れだけではなく、CA-MRSAがvanAを獲得したというところでしょうか。CA-MRSAの様に市中で広がる可能性が出てくるのは驚異です。twitterかどこかでworld cupを心配している声も聞かれましたね。

HCV治療の新たな時代 Therapy for Hepatitis C - The costs of success】*5
 HCVの治療は日進月歩で、特にtype1の治療が大きく変化しています。本邦では昨年テラプレビルが使えるようになり、貧血や皮膚障害に冷や冷やしながら使用していたと思ったら、今年からもうシメプレビルのレジメンに変更です。しかも、これも海外では新薬の台頭で一年程度でまたレジメンが変わるとされています。
 今回NEJMで取り上げられていたのは、過去に治療失敗歴のあるtype1aのHCVに対するLedipasvir+Sofosbuvirの2剤併用療法でしかも12週と24週を比較しています。また、それぞれにRBV併用群を追加した4群で治療効果を検討しました。アウトカムは12週時のSVR。まあインターフェロンfreeレジメンで、しかも治療期間が通常の半分です。ちなみにLCが20%程度含まれています。
 結果は、

<12週>

2剤のみ SVR 94%

2剤+RBV SVR 96%

<24週>

2剤のみ SVR 99%

2剤+RBV SVR 99%

 恐るべし新薬ですね。治療抵抗性高そうな群でこの治療効果は驚異です。あとすごいのは副作用での治療中止がゼロということ。細々したことはたくさん起きてますが、最終的に治療完遂できています。
 で、問題は費用。いくらかかると思います??Sofosbuvirを12週間使うと84000ドル(約840万円)かかるんだそうです!!それ以外に通院・検査・Ledipasvirの値段を考えると、お一人治療するのに1000万円かかる計算になります。10人治療で1億円。いやいやいや、無理っしょ。どうするんでしょうかねえ、これ。ちなみに日本はこれ公費がつぎ込まれますから全例税金です。

【感染性下痢症のreview Acute infectious diarrhea in immunocompetent adults】*6
 免疫正常者の感染性下痢のreviewでした。アメリカでは年間1億7900万件の急性下痢症があり、人口レベルで1ヶ月以内に下痢をしたかの質問に3-7%がYesと答える様です。急性下痢症の死亡例は83%が65歳以上で、大半はCDIノロウイルス感染です。下痢の定義は”3回以上の非固形便” or ”1回あたり250g以上の非固形便”となっています。
 期間の定義では、急性が14以内、亜急性が14-30日、30日以上が慢性とされています。面白かったのは食物摂取歴で、肉や魚などについては聞く事が多いですが、意外と一番多いのが生野菜で22%だったそうです!びっくり。今度から聞いてみよう。また、同じものを食べても下痢を起こすかは宿主因子にもよるのだそうで。病歴は渡航歴、抗菌薬使用、H2拮抗薬・PPI投与、STDの有無、医療関連の職業ではないかなど。脱水の評価も重要です。料理人・医療関係者は便培養の確認が必要であり、便の処理は4-12時間以内に行いましょうと。勉強になりました〜。