栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:無症候性ピロリ感染患者の除菌による胃癌抑制効果

無症候性ピロリ感染患者の除菌による胃癌抑制効果
Helicobacter pyroli eradication therapy to prevent gastric cancer in healthy asymptomatic infected individuals: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials
BMJ 2014;348:g3174

【目的】ヘリコバクターピロリ菌(HP)を検査・除菌することが、無症候性感染者の胃癌発生率の低下に繋がるかを調査する。
【デザイン】RCTのシステマティックレビュー・メタ解析
【データ】Medline、Embase、Cochraneのデータベースで2013年12月までに出版された研究を解析対象。会議録は2001-2013年までのものを検索。関連研究の参考文献は回帰的検索を行った。言語制限はかけなかった。
【組み入れ基準】HPが陽性でそれ以外は健康な無症候性患者を対象。除菌療法を少なくとも7日以上施行したRCTを組み入れとした。コントロール群はプラセボまたは無治療群とした。また、最低でも2年間追跡された研究を対象とした。
【メインアウトカム・方法】プライマリアウトカムは、除菌治療の胃癌発生に対する効果とし、相対危険度を信頼区間95%で評価した。
【結果】検索によって6つのRCTが適合され、そのうち1560文献を引用した。6つのRCTの内訳は中国4つ、日本1つ、コロンビア1つだった。6つのRCTで3294人の患者が除菌され15人(1.6%)に胃癌が発生した。コントロール群は3203人でそのうち76例(2.4%)に胃癌が発症した。RR 0.66(95%CI 0.46-0.95)だった。study毎の異質性はI2=0%だった。NNTは中国男性で15、アメリカの女性で245と算出された。
【結論】ピロリ除菌ではアジア人では胃癌発生率を減少させる可能性があるという中等度のエビデンスを提示したが、これを必ずしも他の集団外挿することはできない。
【批判的吟味】
・最初見た時はNNT 15すごっ!とか思ったのですがかなりまやかしがあるように思います。
・まず、胃癌自体のイベント発生数が少ないので、95%信頼区間がかなり広くなっています。例えば日本の研究では除菌群が 2/379例、コントロール群が3/313例と胃癌発生者は2例と3例の比較です。これでは、1例の全体に対する割合が大きすぎます。

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・他のstudyも胃癌発生数は軒並み1桁で、二桁以上胃癌が発生している研究は1つのみで、その研究の重みが70%を占めています。しかも、それぞれの研究は全て有意差がついておらず、メタ解析を行って初めて有意差がついたという格好です。
・現時点でfollow up期間も短く、現時点で決着がつきにくい問題と思いますが、少なくとも「RR 0.66!すげー、34%も減るから除菌しよう!」は短絡的と思います。
・その他のセカンダリーでは、胃癌死亡率は減らない、全死亡も減らないなど、かなり微妙な結果でした。
【個人的な意見】
・やはりデータの解釈はとても大事です。そして日本で保険適応になったピロリ菌除菌の胃癌発生予防の効果はこの程度ということは認識しておく必要があります。今後の大規模調査と長期follow upが望まれますが、猫も杓子も除菌という方向性はどうかなと思います。

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