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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 電撃外傷/ベッドサイド教育の重要性/変形性股関節症の運動プログラム/幼児の帯状疱疹/溜め込み障害/2型糖尿病合併肥満患者への肥満手術

精神 身体所見 小児 感染症 内分泌 論文 神経 研修医教育 JAMA 救急 皮膚 NEJM 診断 肥満

■JAMA■
【電撃外傷の症例報告 Severe lactic acidosis an amnesic child】*1
 8歳の少年が雨の日に教会の前で倒れていて救急搬送。発見時は、GCS 3で前頭部に血腫あり。その後ERで急速に意識レベルは改善し、四肢のどこを触っても痛い、開口障害があり、乳酸アシドーシス合併とCK上昇があるとの症例。さー、なんでしょう?

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 答えは電撃外傷。写真の様な皮疹がでることがあります。電撃外傷は米国では年間1000例程度。私は正直診たことがありません。1000V以上では2/3の症例が死亡する死亡率の高い疾患です。皮膚の熱傷の程度は重症度と相関せず、よく言われる電撃の”流入部”、”流出部”という表現は適切では無く、”電撃部”と”接地部”と呼ぶのが正確とされている。皮膚熱傷部は無痛である事が多く、中心部が乾燥し周囲に浮腫性紅斑がある。全身の痛みと代謝性アシドーシス、CK上昇は特徴的であり、皮疹と合併していたら想起しましょうと。まあもちろんまずはhistoryですが。合併症としては、不整脈、無呼吸、横紋筋融解症、神経学的損傷が起こります。

【ベッドサイド教育の重要性 Bedside teaching rounds reconsidered】*2
 マクギーさんがJAMAに投稿しています。もともとはWilliam Oslerがベッドサイドラーニングの重要性を説いています。本文中にOslerの写真が掲載されていましたが、ベッドサイドで視診・触診・聴診・考えるの写真が印象的でした。その時代と比べると、今や教育者は25%程度しか患者のベッドサイドにいないと言われています。みんな廊下やカンファレンス室が大好きと。原因は、端末とにらめっこ、患者や医学生の質問に答えられないのが嫌、時間がないなどの理由が考察されています。ただ、過去の研究からはbedside teachingは実は患者満足度を上げることが知られていて、患者さんも多くは教育の助けになりたいと思っているのだそうです。
 そのためにマクギー先生が提案するのは

①プレゼンはできるだけ短く
②カンファ室で教えることとベッドサイドで教えることを区別
③ベッドサイドでの指導者の振る舞いからskillを学ぶ
④質問に答えられるように疾患毎の簡単なスプリクトを作る
⑤history-physicalできちんと診断がついた時には最大限ほめる
⑥質問に答えられなくても良いと考える。むしろそのような不確実性に対する対処法の学びになる

 ということでした。勉強になります。physicalにこだわり続けたマクギーさんの言葉だからこそより深く伝わってきます。さて、うちの施設に合うベッドサイドラーニングはどんな形か模索していきます。

変形性股関節症への運動プログラム Effect of physical therapy on pain and function in patients with hip osteoarthritis】*3
 ガイドラインでは股関節の変形性関節症に対して第一選択で非薬物療法を推奨していますが、根拠が乏しいので今回初めて大規模に検証したRCTです。
 50歳以上のレントゲンで確定した変形性関節症で疼痛スケールが40/100以上の方がinclusionされています。介入は12週間10回の運動プログラムと教育・アドバイス。非介入群では、Shamとして12週間10回治療療法士がプラセボゲルを効果があると説明して股関節に当てるという方法を用いています。プライマリアウトカムは13週時点でのVASで評価したRCTです。あえて、shamをおいたのは変形性関節症ではプラセボ効果がよく知られているからです。
 結果は、VASで比較する限り有意差はつかず、むしろshamの方が良い傾向という衝撃の結果でした。しかも運動群は有意に鎮痛薬使用が増えています。studyの限界としては、かなりinclusionの段階で除外されており一般化できないかなという基準だということと長期効果は不明というあたりでしょうか。どちらにしても無理に運動プログラムに参加させても、プラセボ以上の効果は無くむしろ鎮痛薬使用が増える結果でした。プラセボが良く効いていることを考えると、患者-医師の良好なコミュニケーションにおける認知行動療法や体重減少の方がよほど効果がありそうだなと思います。なんだかペテン師みたいですが・・・ 


■NEJM■
【幼児の帯状疱疹症例 Herpes zoster involving the S1 dermatome】*4
 19ヶ月の幼児の帯状疱疹症例。特に出産・成長過程には異常の無い児でした。写真は一度見たら忘れない感じです。しかも水痘ワクチンは7ヶ月の時点で接種しています。通常成人の帯状疱疹は体幹部に多い傾向ですが、10歳以下の小児帯状疱疹例は、仙椎領域や頸椎領域に多いのだそうです。まあ、もちろん子供の帯状疱疹は大変rareではありますが。

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【溜め込み障害 hoarding disorder】*5
 強迫スペクトラム障害の展開の一つとして、DSM-5でHoarding disorderが独立した概念として提唱されました。これは、要は「捨てることができなくなる病気」です。物の価値は関係なく、それによって生活に支障が生じていることが診断基準に盛り込まれています。
 参考までに診断基準案を記載すると、

①そのものの価値はともかく、何らかの物を捨てられず、溜め込んでいる
②これが留めたいという衝撃、あるいは捨てることの苦痛による
③その元来の目的を損なう程度に、生活や職場空間が占拠され支障が生じている。
④これが苦痛や、機能的障害を来している。
⑤これを説明する他の身体的、あるいは精神障害を認めない。

 なんだとか。もともとは強迫性障害の一種に入っていた概念の様です。hoarding disorderの方は火事死のリスクが増えたり、QOLが低下したりするとされています。75%に不安障害やうつを併存するとされ、疫学では成人の2-6%にあるとされています。生涯経過では良くなったり悪くなったりしつつ、年齢が上がるとともに症状がひどくなります。家族内集積が強いそうで、一卵性双生児では50%に発症するとか。なかなか「溜め込み」主訴では来院しないので、「捨てるのは大変ですか?」と聞きましょう。
 まあ、もちろん普通のコレクターである可能性も十分あります。成人の30%は人生のどこかでコレクションするとされています。「正常のコレクター」(笑)との鑑別点も本文中に出ていました。「家がゴミ屋敷」というキーワードは社会背景の病歴聴取中に聞かれることがありますので、鑑別の片隅にはおきたいと思います。ちなみに"Hoarding disorder"でgoogle画像検索するとたくさんのゴミ屋敷写真が出てきます。まあ、程度の差こそあれ・・・という感じかなあ。
https://www.jspn.or.jp/journal/journal/pdf/2011/10/journal113_10_p0985-0991.pdf

2型糖尿病合併肥満患者への肥満手術3年予後 Bariatric surgery versus intensive medical therapy for diabetesー3-year outcomes】*6
 肥満に対する手術療法について改めて考えさせられるstudyでした。論文のPICOは、
P:BMI 27-43の20-60歳までの2型糖尿病患者
E/I:①medical群、②R-Yバイパス群、③Sleeve gastrectomy群
O:3年後のHbA1c
ちなみにSleeve gastrectomyとは、
https://www.youtube.com/watch?v=dl1w8bxItT0
みたいな腹腔鏡手術の模様です。プライマリアウトカムはサロゲートでちょっと微妙なアウトカムではありますが。RCTのfollow upとして91%follwo upされました。もともとHbA1c 9.3%で体重は平均100kgくらいの方々です。
 結果は、プライマリアウトカムは

medical群 HbA1c 8.4%
Bypass群 HbA1c 6.7%
Sleeve群 HbA1c 7.0% と有意に低下

  また、セカンダリーの体重では

medical群 100kg 変化なし
Bypass群 80kg
Sleeve群 79.3kg と有意に減少

 しかもインスリン使用量はもともと50%くらいだったところが、

medical群 55% やや増加
Bypass群 3%
Sleeve群  6% と有意に減少

 ・・・結構本気で考えちゃいます。長期予後で考えたら、安穏と内科的マネージを行っていてもいずれ大きな合併症が起こるのは目に見えています。どんな治療薬もこれだけの効果は得られないでしょうねえ。あとは、長期予後(実際の死亡率や心筋梗塞予防効果)や合併症(手術に伴う長期経過の有害事象)のデータが出揃った暁には日本でも保険適応になるのかもしれません。