栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 入院というPTSD/EWASの話題/健常人への年1回の診察/サルコイドーシスとタトゥー/皮膚感染症の新規抗菌薬

■JAMA■

入院というPTSD 

Reducing the trauma of hospitalization*1
 これはまさに最近読んでいるユーマニチュードとも関連するわけですが。入院することによって起こる様々な問題を取りあげており、"posthospital syndrome"と命名し、PTSDみたいなものだと指摘しています。入院患者の対応方法として、重要なことを挙げていましたので列挙してみます。

①患者への敬意
②休養と栄養
③ストレスを減らす
④不要な検査はしない
⑤オンコール医は安易に薬を出さない
⑥運動させる
⑦退院後計画を伝える

 これはまさにその通りだなと思いますし、そのままユマニチュードに繋がるとも思います。患者さんへの敬意は特に小児科から学ぶべきだとされており、快適な空間作り、病院着を出来るだけ使わない、快適な睡眠環境と栄養の提供も重要とされています。また、個室や浴室を個人専用にすることも重要。入室時にはきちんと名前を名乗って要件を伝えてから入室するようにとも指摘されていました。カレンダーの利用や一日の予定を説明することも重要。まあ全てその通りです。この辺りは病院全体で関わっていくべきポイントですね。

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EWASの話題

Studying the elusive environment in large scale*2
 GWASと呼ばれるゲノムワイド解析によって、病気の遺伝的な原因検索を網羅的に行われるという時代が近づいてきています。一方で病気は遺伝的要因のみではなく、環境要因も関連しますよね。今回は、その環境因子を一気に解析してしまおうという夢のような検査方法。略してEnvironment wide association study(EWAS)です。従来の1 risk-1 diseaseモデルの限界から現在の疫学研究では困難なmultiple factorsを同定するための手法です。方法としては、何千と存在する化学物質の血中濃度を一気に測定するんだそうです。世界のハーバードはこんなことを研究してるんですね〜。まあ、でも地道に病歴から・・・というのが個人的には好きなのですが。


健常人への年1回の診察 

The $50000 Physical*3
 まあ、ちょっと逆恨みみたいな感じの体験談ですが・・・とある医者の85歳のお父さんの話なんだそうです。そもそものスタートは「健常人に対する年1回の身体診察は必要か?」みたいな話題でして。あるレジデントが、「まあ害は無いし良いんじゃないですか??」と話したことが事の発端です。
 顛末としては、この85歳のお父さんのプライマリケア医が交替になったことがスタートでした。

かなりきちんと身体診察をする医者で、徹底的に診察した結果
「腹部大動脈瘤があるかも?」
      ↓
その後腹部超音波を施行すると、AAAはなく代わりに
膵臓癌があるかも?」
      ↓
腹部造影CTを施行すると肝腫瘤あり
肝細胞癌かも?」
      ↓
HBVHCV陰性で腫瘍生検を施行したところ最終的に肝血管腫で大出血。RCC 10単位を輸血する大惨事となりました。

この医師は「腹立たしいのは、当初の診察所見以外に全てのstepで間違いは無かったこと」とコメント。
 このエピソードは、
①無症状な患者さんへの過剰医療(overdiagnosis)
②防御的医療(defensive medicine)
の両方の側面があり、現代医療の歪みをよく表しています。do no harmの中には”安易な診断”、”医者の安心のための検査”も入ってくるなと思いました。
 

■NEJM■

サルコイドーシスとタトゥー 

Tattoos and sarcoidosis*4
 最近もサルコイドーシスを診断したばかりでしたが。今回の症例報告は29歳のtattooのあるお兄ちゃん。急性発症の胸膜痛と3ヶ月前からの呼吸困難、咳嗽、皮膚病変を主訴に来院しています。皮膚病変はtattooの線に沿って皮膚に硬結を触知するというものでした。肺病変も伴っており、皮膚硬結部の生検からサルコイドーシスの診断に至っています。
 サルコイドーシスの皮膚病変はtattoo部分に出来やすいのが有名ですが、その他tattoo部分に発症する皮膚病変の鑑別診断として、創部感染、lupus(DLE)、ケロイド、アレルギーなどが報告されていました。ループスもあるんですね、知らんかった。

皮膚感染症の新規抗菌薬

Pharmacology and the treatment of complicated skin and skin-structure infections*5
 今回のNEJMでは皮膚感染症に対する新規抗菌薬が2種類も報告されていました。この背景には米国全土のMRSAの蔓延による部分と入院は出来ない医療事情が関連するようです。米国では1500万人/年の皮膚感染症があり、87万人が入院しています。この10-20年で急激に増加しており、その中の一因としてMRSA増加がしてきされています。今回の二つの抗菌薬(DalbavancinとOritavancin)はそれぞれVCM、TEICの類似物質です。今回の2RCTともにseeding trialとまでは言いませんが、製薬会社ファンドの非劣勢試験です。
 Dalbavancinのすごいところは半減期が長いので週1回投与で良いこと、VRSAにも効果があることなどでしょうか。今回はVCMとの非劣勢が確認されています。また、副作用もVCMよりも少ない傾向でした。同様にOritavancinも半減期が長く非劣勢で副作用は同等でした。
 まあ、これだけ半減期が長くなれば入院は不要になりますが、安易な使用が更なる耐性菌増加の引き金にならないかを非常に危惧しています。DRSAとかORSAみたいなのが出てくるのは簡便被ります。当院でも皮膚軟部組織感染に対する第一選択をVCMに統一しており、比較的問題なく使用できていましたが、LZD、Dapt、TEICなどの選択肢をどうするかなどは今後検討の必要があるかなと思います。