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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet アルコールとスポーツ/ワールドカップはアルコールの祭典?/肉食摂取と乳癌発症/集団医学/ALSへの高カロリー療法

外科 Lancet 神経 論文 アルコール BMJ

BMJ

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アルコールとスポーツ Alcohol and sport *1

 今週のBMJもLancetもワールドカップ特集でした。ただ、どちらかと言えば、今回のワールドカップに対する痛烈な批判でした。表紙もすごいですもんね。歴史的にはアルコールとスポーツは密接な関係があります。特にスポンサーシップが強く、スポンサーがつかないと大会開催出来ないのではないか?と言われる程です。実は過去のワールドカップの中で唯一アルコール飲料会社のスポンサーを付けなかったのがフランス大会でした。フランスでは1991年以降、アルコール飲料会社のスポーツのスポンサー・広告を全面禁止していて、他の国の開催の際にも、編集して見えない様にしてしまうくらい徹底しているのだとか。
 さて、今回のブラジル大会はどうか。実はブラジルもサッカー観戦時のアルコールが関連した暴力や犯罪が多いことから、スタジアムのアルコールスポンサーを禁止していたのだそうです。ところが、今回FIFAがブラジルでの開催にあたって、アルコール広告禁止の解除とアルコール販売時の税金の撤廃を条件に開催を提示してきた様で、ブラジルはこれを飲んだとか。何だかすごくブラックな話です。

ワールドカップはアルコールの祭典? Festival of football or alcohol? *2

 editorialもワールドカップ批判。相変わらず皮肉たっぷり。
「Whichever country hoists aloft the world cup trophy on 13 July,the real winner will be the alcohol industry.」
と宣ってました。イギリスでは、20のサッカーチームのうち18チームに飲料会社スポンサーがついているのだとか。2010年のワールドカップでは、イングランド戦の日にはイギリス国内のアルコール関連ER受診が37.5%増加するのだとか。ブラジルでもこれは社会問題になっているんだそうです。更にはFIFAはコカコーラとパートナーシップ、マクドナルドがスポンサー。スポーツの祭典が健康を害するのだけは避けましょう!健康を推進する祭典への変革と。

若い時期の食生活と乳癌発症 Dietary protein sources in early adulthood and breast cancer incidence:prospective cohort study *3

 相変わらず看護師の食生活コホートがよく使われています。今回は乳癌発症と赤肉摂取の関係を前向きコホートで検討しています。24-43歳女性看護師で1991年に食生活アンケートを行い、肉摂取量を程度に応じて5分割し、それぞれの群でMMK発症をアウトカムとして検証しています。 
 結果、肉食摂取量が増える程MMK発症率が増える結果でした。HR 1.22(95%CI 1.06-1.40)。まあ、こういったコホート研究のリスクって確かに増えるんだ〜とは思うけど、まあ正直なところ明日からの診療に役立たない気もしますよね。身体に良い食生活は大事なんだけど、それで肉を食わないってのも寂しい気もしますし。そもそもMMKに関しては、近年choosing wiselyでも取り上げられている様に、癌発症と死亡が相関しないことも指摘されていますしね。


■Lancet■

メッカ巡礼から学ぶ集団医学 Hajj:infectious disease surveillance and control*4

 Lancetはワールドカップを受けて集団医学特集です。集団医学(mass gatherings medicine)という概念そのものを初めて知りました。もともとこの集団医学はメッカに巡礼(Hajj)する人達の間で流行性疾患が流行することを研究していたサウジアラビアの研究者が提唱した概念です。綿密な準備を行い、無事にメッカ巡礼をしてもらえるように、事前にワクチン接種の呼びかけや感染しやすい感染症リストをピックアップしたりしています。流れは①準備、②モニター・サーベイランス、③ワクチン接種、④教育ツールの利用の流れです。この取組で先日流行したMERSもアウトブレイクさせずに発見することが出来た模様です。
 ちなみに過去を振り返ると、紀元前642年のHajjの際にマラリアが流行したというものが最古のものです。有名になったのは、2000-2001年の髄膜炎菌Outbreak。多いのは胃腸炎・肺炎。結核感染リスクは10%はあるとのこと。やっぱり、あんまり人が集まるところにいくもんじゃないと。Disneylandの研究とか誰かしませんか?(笑)

ALSへの高カロリー栄養剤 Hypercaloric enteral nutrition in patients with amyotrophic lateral sclerosis: a randomised,double-blind,placebo-controlled phase 2 trial*5

 ALSに対する予後改善効果を検証したphase 2 trial。18歳以上のDM/CHD/StrokeのないALSですでに胃瘻を作っている患者さんが対象。通常カロリー群と糖質追加125%カロリー増加群と脂質追加125%カロリー増加群を比較して、5ヶ月後の副作用と耐用性を確認した多施設共同RCTです。
 結果は副作用は栄養増量しても変化無し。80%以上が問題なく注入可能でした。糖質追加群は体重が0.39kg増加し、脂質追加群は体重が0.46kg減ったという結果でした。脂質追加すると下痢をするので体重が減るのでは?と。
 それよりも気になるのが生存曲線でして、6ヶ月後の通常治療群が生存率50%程度だったのに対して、糖質追加群は100%生存していました。色々突っ込みどころはあって、ALSの治療効果が単純に生存期間の延長で良いのか、症例数は24例を3群にランダム化している為、1群7-9例程度で少なすぎることなどが課題です。今後第III相試験で症例数を増やして検証されていくことになるでしょうか。editorialでも小さいけれど重要なステップだねとコメントしていました。