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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:Trastuzumabについて/異所性ACTH産生腫瘍/腎動脈狭窄へのアプローチ

MKSAP 外科 内分泌 腎臓 放射線

Trastuzumabについて

 50歳女性の乳癌診断後のfollow up中。HER2陽性、エストロゲンプロゲステロン受容性陰性の低分化型浸潤性乳管癌で、単純乳房切除術およびセンチネルリンパ節評価を行われている。
 病理では、2.4cmほどの乳管癌でセンチネルリンパ節は陰性。閉経前後で合併症はなしだった。身体所見では、術後皮膚瘢痕程度で、他は異常所見が無かった。術後の放射線治療およびTrastuzumab化学療法が予定されている。
 化学療法開始前に必要な検査はどれか?

 key pointとしては、Trastuzumab(ハーセプチンⓇ)は心毒性があるので、1年間以上化学療法を受ける患者では、左室機能評価を治療開始前と治療中行うべきであるとのことでした。
 HER2はチロシンキナーゼの上皮成長因子受容体ファミリーの一つで、乳癌の20-30%で発現している事が知られています。過去の複数の大規模RCTで、52週間のTrastuzumabによる術後化学療法は、乳癌再発率を50%まで低下させ、死亡率を30%程度減少するのだそうです。
 Trastuzumabは、アントラサイクリン系抗癌剤(ドキソルビシン等)と併用すると高率に心不全を発症する事が指摘されています。その他のリスク要因としては、高血圧や50歳以上の年齢。治療開始前と治療経過中に左室機能を評価すべきであると記載がありました。
 Trastuzumabによる心毒性は用量依存性ではなく、中止に伴って可逆的に回復するのだそうです
 タモキシフェンはエストロゲン受容体陽性乳癌の治療に用いられ、副作用として、血栓塞栓症および子宮内膜癌の増加と関連すると言われています。胸腔への放射線治療は、左室機能・弁膜症・早期の冠動脈異常に繋がる可能性があります。
Bird BR, Swain SM. Cardiac toxicity in breast cancer survivors: review of potential cardiac problems. Clin Cancer Res. 2008;14(1):14-24. PMID: 18172247

 

異所性ACTH産生腫瘍

 52歳男性で、最近発症の全身倦怠感と筋力低下を主訴に来院。4週間前からの夜間頻尿と2ヶ月前からの6kgの体重減少を合併していた。COPDを合併しており、55PackYearの喫煙歴あり。常用薬はアルブテロール吸入のみだった。
 身体所見では、血圧高値(188/102mmHg)、BMI 23、近位筋萎縮と筋力低下があり、粘膜には色素沈着が認められた。
 各種検査結果は以下の通り。

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(本文より引用)

 この疾患は何でしょう?と。Key pointは、異所性ACTH産生腫瘍は、体重減少、急な発症のCushing症候群、一過性の筋力低下、ACTH高値を来すという部分でしょうか。
 コルチゾール過剰や爪の線状黒色変化はACTH産生腫瘍を疑う所見です。コルチゾール過剰だと典型的なCushing症候群を考えれば、体重増加がありそうですが、異所性ACTH産生腫瘍は悪性の事が多く、体重減少やカヘキシー、筋力低下などの全身症状を伴う事があるのだそうです。また、症状・検査結果からは新規発症の糖尿病と鉱質コルチコイド過剰による高血圧、代謝性アルカローシス、低カリウム血症が疑われます。ACTH過剰に伴う粘膜の色素沈着もkey wordですね。喫煙歴は、おそらくACTH産生肺癌を示唆し、異所性ACTH産生腫瘍の半数が小細胞癌と言われています。
 副腎腺腫は、コルチゾール高値と関連しますが、病状は穏やかで、高血圧や糖尿病が主体。いわゆるCushing症候群になります。ACTHはfeedback機構で低下します。副腎癌は、体重減少や急速なCushing症状の出現という意味では本症例と同様の経過になりますが、ACTH値は下がります。ここが鑑別点ですね。
Neiman LK, Biller BM, Findling JW, et al. The diagnosis of Cushing's syndrome: an Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2008;93(5): 1526-1540. PMID: 18334580

 

腎動脈狭窄へのアプローチ

 27歳女性の血圧高値。経口避妊薬(ピル)を内服開始した4ヶ月前から血圧が上がりだした。その後、内服中止したが血圧が下がらない。特に自覚症状は無く、既往も無いが心配で受診。
 身体所見では、血圧150-166/100-108mmHgと高血圧。の特に消化器症状も既往もない女性。右上腹部付近に血管雑音を聴取。他異常所見なし。腎機能正常、尿所見異常なし。
 腎動脈血管造影はこれ。

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(本文より引用)

 若年性高血圧へのアプローチですね。ピルで上がっちゃう人もいますが、この方はピルが引き金になったもののその後も下がらないのだそうで。
 腎動脈造影が特徴的なのでしょうか。この年齢なので、繊維性過形成を考えましょうと。経皮的腎動脈形成術は、繊維性過形成による二次性高血圧で良い適応です。繊維性過形成による腎血管性高血圧の多くは、腎動脈中膜の繊維変性が原因とされています。腎動脈造影の結果が特徴的で”string of beads:ビーズ紐様所見”と表現されます。繊維性過形成は、原因不明の疾患で多くは腎動脈と頸動脈に病変を来します。繊維性過形成による二次性高血圧は一般的には15-30歳の女性に好発するとされています。高レニンの難治性高血圧の際に考慮する必要があり、カテーテルによる腎動脈造影で診断を確定します。
 腎動脈形成術は診断造影時に同時に行う事が出来、年齢が若ければ手技による合併症は少ないとされています。
 

Olin JW, Sealove BA. Diagnosis, management, and future developments of fibromuscular dysplasia. J Vasc Surg. 2011;53(3):826-836.e1. PMID: 21236620

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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