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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM システマティックレビュー/禁煙に対するバレニクリン・ニコチンパッチ併用/総胆管結石患者の手術療法/周産期低酸素脳症に対する低体温療法の長期予後/活性化酸素と癌

■JAMA■

シスマティックレビュー 
How to read a systematic review and meta-analysis and apply the results to patient care*1

 Systematic reviewは様々な批判はあるものの、clinical decisionを行う上では非常に有用なツールの一つです。そして、臨床医にとっては、systematic reviewの質を評価できることは本当に重要なことです。1994年にJAMAユーザーズガイドが発表されて以来、一度も改訂されていなかったSystematic reviewの読み方の部分が今回改訂されました。

医学文献ユーザーズガイド 根拠に基づく診療のマニュアル

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 今回Systematic reviewを読むに辺り、2つの分け方で評価しています。一つはCredibility、もう一つはConfidenceです。Credibilityはreview方法の正確さ、Confidenceは効果の大きさの見積もりの信頼性とされています。Systematic reviewを書くにあたり、原則としてメタ解析のあるSystematic reviewが理想的です。そして、きちんとPECOを立てて、誰が行っても同じサーチ方法になるように(再現性)、筋道を立てて考える必要があります。

Credibilityでは、
①最低限のデータベースとしてMEDLINE/Embase/Cochraneが含まれているかどうか
②2人以上の独立した人がサーチしているか(一致率も計算)
③サーチ方法が明らかにされているか

がチェックポイントです。

Confidenceでは、
①NNTが算出されているか
②各studyのバイアスの評価(GRADE system等)
③異質性の評価(I2、コクランQ testの評価)
④不正確性(95%CIで評価)
⑤実際の目の前の患者と同じ対象か
⑥Reporting biasはないか

をチェックします。この最後の報告バイアスは評価が一番難しい部分ではあります。興味のある人は是非一度本文を読んでみるのをお勧めします。forest plotの読み方とか基本的な事がきちんと解説してありました。

禁煙にバレニクリンとニコチンパッチ併用 
Efficacy of Varenicline combined with nicotine replacement therapy vs Varenicline alone for smoking cessation. A randomized clinical trial*2

 今週のJAMAは豊作。興味深い文献がいっぱいでした。これは過去最大のバレニクリン+ニコチンパッチ併用のRCTです。一応最初に断っておきますが、筆者達はCOIありまくりです。
 対象患者は、18-75歳の禁煙希望者で最近1年間10本/日以上喫煙していて、禁煙日の無い446人となっています。過去にニコチンパッチ使用歴の無い人。介入として、ニコチンパッチ+バレニクリン群とプラセボパッチ+バレニクリン群を比較しており、両群共にバレニクリンは投与されています。プライマリアウトカムは9-12週時点での呼気検査で確認した禁煙率を調査しています。7施設の南アフリカ発のRCT。
 患者さんは平均46歳で、21PackYearsの喫煙歴がありました。結果として12週時点で併用群が有意に禁煙率を改善しました。OR 1.85(95%CI:1.19-2.89)で、NNTは7(5-20)だったと。ちなみに薬を止めて24週後にも評価していますが、禁煙に対する効果は持続していましたOR 1.98(95%CI:1.25-3.14)

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(文献より引用)
 結構併用でこんなに差が出るんですね。副作用は皮膚症状と不眠。対数的には55.4%の禁煙率でした。もともとの群が重喫煙歴な方々なので、それに対するこの喫煙率はすごいのかなと思います。来週のクルズスは禁煙テーマで担当するのでネタ収集が必要です。

中間程度のリスクの総胆管結石患者さんへの手術療法 
Initial Cholecystectomy vs sequential common duct endoscopic assessment and subsequent cholecystectomy for suspected gallstone migration:A randomized clinical trial*3

 総胆管結石は栃木に来てからというもの頻繁に遭遇しています。消化器科・外科の先生方に手技はお願いしていますが、内視鏡治療の偉大さを感じる毎日なのですが、今回は総胆管結石の外科的手術についてのRCTでした。
 患者は16歳以上の救急外来を受診した総胆管結石が疑われる100人。severe sepsisやT-Bil>4.0の閉塞性黄疸が疑われる様な患者さんは除外されています。inclusion criteriaとして、エコーで胆のう結石が確認、右季肋部痛か心窩部痛がある、肝機能障害がある症例を48時間以内にentryしています。介入群は緊急手術群とERCP群(必要ならその後手術)を比較し、プライマリアウトカムは入院期間で評価されています。スイス発の単一施設のRCTでした。
 患者さんの平均年齢は46歳で平均T-Bil値が1.6g/dL。プライマリアウトカムである入院期間は手術群で5日、ERCP群で8日であり、3日有意に短縮しています。また、検査として行われるMRCPやEUS、ERCPなどの検査数も有意に手術群で少ない結果でした。まとめとして、手術リスクが高くなければ初期治療として手術を選択してはどうか?と提案していました。
 ただ、プライマリアウトカムが入院期間で良いのか、そもそも日本の入院適応や入院期間は海外のベッド利用状況と全く異なること、ERCP技術の進歩などを考えると、すぐに手術!って感じでは無いですよね。ただ、去年内視鏡関連の講演会で、外科の先生が
”総胆管結石の外科的手術は手技的には非常に容易なので、遠慮せず依頼してくださいね”
と言っていたのも大変印象に残っています。高齢者でERCP後にENBDが一週間入って抑制されて・・・という流れになるくらいなら、状況に応じて手術が選択肢に上がっても良いのかなとも思いました。


■NEJM■

周産期窒息による低酸素脳症への低体温療法の長期神経予後への影響 
Effects of hypothermia for perinatal asphyxia on childhood outcomes*4

 今週のNEJMはやや不作。ただ、なかで興味深かったのは周産期低酸素脳症に対する低体温療法の長期予後を評価した研究でした。対象は36週以降出生の新生児325人で、周産期低酸素脳症が脳波で確認された患児がentryされています。加入として、出生後72時間を33-34℃のmild hypothermiaでいくか、通常ケアで行くかで、6-7歳時点でのIQ>85以上の患児の割合をプライマリアウトカムにしたRCTです。ちなみにIQの平均値って100を中心に正規分布しているらしく、85-115の間に68%の人が収まり,70-130の間に95%が収まるのだそうです。
 結果として、低体温療法群が75/145人(52%)、通常ケア群が52/132人(39%)でIQ>85が達成され、有意に低体温療法群の方が良い結果(RR 1.31)でした。神経予後正常で生存した患者の比較でも、低体温療法群 65/145人(45%)、通常ケア群37/132人(28%)でこちらも有意にリスクを減らしていました(RR 1.60:1.15-2.22)
 これはかなり画期的な結果で、かつ33-34℃のmild hypothermiaなので実現性も高いように思います。よくRCTできたなあというのが本音ですが、これを経て周産期窒息児に対するアプローチが変わっていくかもしれません。

活性化酸素と癌 
The promise and perils of antioxidants for cancer patients*5

 活性化酸素(reactive oxygen species:ROS)は、過去の基礎研究から癌促進効果と抑制効果と相反する結果が指摘されているんだそうです。肺癌モデルマウスでは、アセチルシステインビタミンEなどの抗酸化物質投与が癌を促進するこが判明しています。活性化酸素はミトコンドリア内では局所的には癌化促進・増殖作用があるそうです。一方で、ミトコンドリア外では活性酸素が傷害された細胞を取り除く効果があるとされています。
 食餌性の抗酸化物質はこのミトコンドリア外の活性化酸素の作用を押さえてしまう為、あまり抗癌効果が得られないことが分かってきています。今後理想的にはミトコンドリア内の活性化酸素の作用を抑える介入の確立が望めます。