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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 終末期患者ではスタチン中止を/脳梗塞後の手術/医者の臓器提供意思表示率/膵内分泌腫瘍へのソマトスタチンアナログ/冠動脈高リスク患者へのナイアシン

■JAMA■

終末期患者ではスタチン中止を 
Statin use may stop when illness is terminal, study says*1

 まだPublishされたデータではないのですが、アメリカ癌学会のmeetingで報告された内容です。381人の余命7ヶ月程度と見積もられたスタチン内服者を継続群と中止群にランダム化して経過を見たところ、心血管イベントの発症頻度は変わらなかったようですが、中止群の平均生存期間が229日、継続群が190日と平均30日長く、QOLも高かったと言う報告です。ちなみに、この報告は癌だけでは無く他の終末期患者さんも含まれています。
 結構この手の薬をいつまで継続するかは悩ましい問題なので、一つ良い指標が出たかなと思っています。文中で囲繞されていた言葉が面白くて、‘Hey, I never thought about stopping people’s statins,’ だそうで。スタチン神話は続いていますが、こういった部分も大事だなと思います。

脳梗塞後どのくらい経てば手術は可能か? 
Time elapsed after ischemic stroke and risk of adverse cardiovascular events and mortality following elective noncardiac surgery*2

 脳梗塞患者さんと接する機会は日々非常に多いわけですが、その方々が全身麻酔の手術を行うのに、どの程度期間が空いていると良いのかが明確になっていません。今回、デンマークのNational registryを用いて非心臓手術を行った48万人のデータを用いて、脳梗塞を5年以内に起こしている群と脳梗塞を起こしていない群を比較して、術後30日死亡や重大合併症の頻度を比較した後ろ向きコホート研究です。
 結果として、

重大合併症頻度
3ヶ月未満がOR 14.23(95%CI:11.61-17.45)
3-6ヶ月がOR 4.85(95%CI:3.32-7.08)
6-12ヶ月がOR 3.04(95%CI:2.13-4.34)
12ヶ月以上がOR 2.47(95%CI:2.07-2.95)

有意脳梗塞既往のある患者の方が合併症が多いことが判明しました。

死亡率
3ヶ月未満がOR 3.07(95%CI:2.30-4.09)
3-6ヶ月がOR 1.97(95%CI:1.22-3.19)
6-12ヶ月がOR 1.45(95%CI:0.95-2.20)
12ヶ月以上がOR 1.46(95%CI:1.21-1.77)

とされています。
 脳梗塞既往があるということは手術リスクをあげるということは明確ですね。いつまでという話で言えば9ヶ月を越えるとリスクが横ばいになることから、9ヶ月以内の手術は避ける方が周術期リスクや死亡を減らすことが出来るのではないかと考察されています。

医者の臓器提供意思表示率 
Physician registration for decreased organ donation

 臓器移植の医者毎のデータが載っていました。医者は患者さんや一般市民に臓器提供を呼びかけているが、実際日本人はどうなのかを検証したというものです。2008年の北米のデータベースで医者と一般人での臓器提供意思表示率を検証しています。これによると医者は43%、マッチさせた一般人では29%と有意に医者が多い傾向でした。
 その他、細かい部分で言うと、女性、田舎在住、救急医療・小児医療従事者でそれぞれ臓器提供意思が高い傾向でした。専攻の違いではFamily practiceを1として比較していますが、多くは家庭医より多い傾向でした。興味のある人はどうぞ〜。

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■NEJM■

内分泌腫瘍へのソマトスタチンアナログ 
Lanreotide in metastatic enteropancreatic neuroendocrine tumors*3

 これは稀な腫瘍に対する稀な治療ではありますが、興味深い分野でもあります。もちろん企業の資金提供ありです。膵臓の内分泌腫瘍は頻度が少なく10万人に1人の難病です。最近だとAppleのスティーブジョブスさんがこの病気でした。
 今回は、18歳以上の手術が難しい内分泌腫瘍患者さんを対象とした研究です。生検で診断確定し、ソマトスタチン受容体(こんなの調べられるんですねー)が発現しており、proliferation index grade1-2の患者さんが対象です。介入はソマトスタチンアナログで、プラセボ比較のRCTです。プライマリアウトカムは96週後の無増悪生存期間としています。
 結果としては、24ヶ月時点での無増悪生存期間は、ソマトスタチンアナログ群で65.1%(95%CI:54.0-74.1)、プラセボ群で33.0%(95%CI:23.0-43.3)であり、有意に無増悪生存期間を延長するとされています。平均すると18ヶ月程度にもなるのだとか。

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有害事象は下痢で、ソマトスタチンアナログ群で26%に見られました。
 この効果は素晴らしいですね。製薬会社ファンドという部分を差し引いても十分期待は出来そうです。あとは費用対効果やQOL等との関連でしょうか。ちなみに今回使用されているlanreotideは本邦では発売されていません。

冠動脈高リスク患者へのナイアシン投与 
Effects of expanded-release naiacin with laropiprant in high-risk patients*4

 これもまたCOIあり。HDL低値が冠動脈疾患のリスクになる事は知られていますが、今回はHDLを上げる薬の効果はどうか?という研究です。
 対象は50-80歳までの心筋梗塞脳卒中・PAD既往のある成人で、ナイアシン内服とプラセボを比較して、心血管イベントをプライマリアウトカムとして比較した多施設共同RCTです。ナイアシンはほてりが副作用として言われているので、副作用対策として、laropiprantというPG受容体阻害薬をナイアシン群には併用しています。平均年齢64歳で、二次予防なので既にスタチンは入ってLDL60前後の患者さん達でした。
 プライマリアウトカムは4年間のfollow upでは全く差が付きませんでした。逆に副作用としての消化器症状や皮膚症状、感染症イベントや糖尿病新規発生などの多くの副作用評価項目でナイアシン群が有意に増やす結果となりました。併用薬が悪かったのか?などの検証も有りましたが、現時点ではHDLを上昇させる薬の効果は無いというのがコンセンサスで良いと思います。