栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

疑問:炎症性腸疾患患者ではワクチン接種を行うべきか?

カンファで話題になったのでまとめてみました。

炎症性腸疾患患者でワクチン接種を行うべきか?

 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎クローン病等)では、基礎疾患、低栄養、外科的手術、免疫抑制剤内服等によって易感染性状態になっていると一般的には言われています。一方で、IBD患者で、低栄養および免疫調整薬内服が無い状態では、一律に易感染状態と考えるのは如何なものか?という提言がECCO(European Crohn's and Colitis Organisation)のガイドラインでも触れられています。現時点では一律にIBD全てを易感染とも言えず、スタンダードな基準も無いのが問題な様です。
 FDAによると、IBD患者は免疫抑制患者の分類では、カテゴリー1に分類されています。f:id:tyabu7973:20140812064816j:plain 炎症性腸疾患診断時に、ガイドラインに基づいた通常のワクチン接種が推奨されています。上記ガイドラインから重要な部分を抜粋してみます。

HBVワクチン

 基本的に血清抗体価陰性患者では全例HBVワクチン接種が推奨される。免疫抑制薬内服中の場合には、高力価ワクチンが必要かもしれない。通常接種スケジュール(0-1-6ヶ月)終了後には抗体価を確認すべき
 TNF-α阻害薬を開始する前に必ずHBVスクリーニングは行うべきであり、これはde-novo肝炎発症予防を行うべきかという点で重要です。
 なので、IBD診断時に、HBsAg・HBs抗体・HBc抗体を測定してHBV感染をrule outしておく必要があります。

②水痘・帯状疱疹ワクチン、MMR

 生ワクチンは免疫抑制薬内服中では禁忌になる。既往やワクチン接種歴が無い場合には、免疫抑制剤開始の少なくとも3週間前までにはワクチン接種を行うべきである。

 

③インフルエンザワクチン

 インフルエンザは全てのIBD患者に年1回は接種すべきである。免疫抑制薬の内服は継続しても構わない。インフルエンザ生ワクチン(本邦未発売)は避けるべき。

 

④肺炎球菌ワクチン

 IBD患者は肺炎球菌リスクが高いと考えるべき。通常の肺炎球菌ワクチン接種を行い、3-5年後に免疫抑制状態が続いていれば追加接種を検討。PPSVは、ステロイドやTNF-α阻害薬では影響を受けない。

 

⑤肺結核 

 これはワクチン接種とは違いますが、RAの治療開始前に問題になるので取り扱いを記載。
 慎重な評価を行うべき。具体的には既往歴・家族歴・身体所見・胸部X線ツベルクリン反応等。
 潜在性結核の同定はTNF-α阻害薬使用時のみならず、ステロイドや他の免疫抑制剤投与時にも重要である。BCG接種している地域ではIGRAが重要。
 もし、潜在性結核の診断となった場合には、IBD治療は、潜在性結核治療(INH単剤)開始3週間後から開始すべき。