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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:腹部手術中の人口呼吸管理の至適PEEP

腹部手術中の人口呼吸管理の至適PEEP

High versus low positive end-expiratory pressure during general anaesthesia for open abdominal surgery(PROVHILO trial):a multicentre randomised controlled trial
The Lancet,Volume 384,Issue 9942, Pages 495 - 503, 9 August 2014

【背景】
 腹部手術中に伴う全身麻酔中の人工呼吸器管理中PEEPの役割はよく分かっていない。0cmH2Oを越えることで術後肺合併症を減らせる可能性はあるが、循環虚脱や肺拡張に伴う肺損傷を引き起こす可能性もある。今回、高いPEEPによる肺リクルートメント手法は、全身麻酔下で行われる腹部手術中の人工呼吸器管理に伴う術後肺合併症を減らすと仮定し検証した。患者群は特に術後肺合併症リスクが高い患者を対象とした。
【方法】
 ヨーロッパと南北アメリカの30施設の多施設共同RCT。900人の術後肺合併症リスクの高い患者で、全身麻酔下で開腹手術を受ける患者さんで、tidal 8mg/kgで設定した。中央コンピューター制御によってランダムにPEEP 12cmH2Oのhigh PEEP群とPEEP 2cmH2O以下のlow PEEP群に振り分けた。プライマリアウトカムは、術後5日目の肺合併症のComposite outcome。二重盲検化されており、ITT解析が行われた。
【結果】
 2011年2月から2013年1月にかけて447人のhighPEEP群と453人のlow PEEP群患者さんが振り分けられた。6例が解析から除外され、そのうち4人は同意撤回、2人は組み入れ基準から外れた。highPEEP群の平均PEEPは12cmH2O、low PEEP群の平均PEEPは2cmH2Oだった。術後肺合併症は、high PEEP群で174/445(40%)に発症し、low PEEP群で172/449(39%)に発症し、統計学的に有意差はなかった(RR 1.01:95%CI 0.86-1.20)。high PEEP群の方が術中低血圧が多く、より多くの昇圧剤を必要とした。

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【結論】
 開腹手術中のPEEPを高く保つことは術後合併症を防ぐことに有用では無かった。術中肺保護戦略は、low tidal、low PEEPが良いかもしれない。
【批判的吟味】 
・RCTとしての体裁は、二重盲検でITT解析ありでした。
・COIありでオランダのヨーロッパ麻酔学会からお金が出ていますが、この団体がどういった利権と絡んでいるかは分かりません。
・平均年齢は66歳で、手術内容は大腸>膵>直腸>胃の頻度でした。
・セカンダリーで死亡率も比較していますが、こちらは差がありませんでした。
・high PEEPと比較するのは良いとして、low PEEP群を何故2cmH2Oにしたのかが疑問です。通常のPEEPは5cmH2O前後で設定して呼吸器管理をしていることが圧倒的に多いと思います。これがこのエビデンスを実臨床にそのまあ外挿しにくい一番の理由かもしれません。
・そもそもhigh PEEPの12もかけ過ぎではあります。
【個人的な意見】
 low tidalがだいぶ普及して、さてじゃあ通常管理時のPEEPはいくつ?という話題でした。非現実的な2群の比較だったので解釈が難しいなと思っています。editorialでも外科手術時の至適PEEPを決める為にもう少し条件を検討した追加調査が必要としていました。ま、そうですよね。