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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 経腸免疫調整剤の効果/膀胱出口閉塞のrational exam/腹腔内結核/若返り薬/子供の病気罹患時の仕事休暇

■JAMA■

挿管患者への免疫調整剤含有の経腸栄養剤 MetaPlus研究 
High-protein enteral nutrition enriched with immune-modulating nutrients vs standard high-protein enteral nutrition and nosocominal infections in the ICU*1

 研修医の頃にGFOを教わりました。経腸栄養時に併用する免疫調整剤という役割ですね。で、これが本当に効果があるのか?という大変興味深いstudyです。ちなみにGFOはご存知と思いますが、グルタミン・ファイバー・オリゴ糖の複合含有剤です。実はガイドラインではアメリカでは推奨、ヨーロッパでは推奨しないというスタンスの様です。 
 今回検証されたのはGFOとは違って、グルタミン・ω-3脂肪酸セレン・抗酸化物質の含有製剤を検証しています。患者は挿管患者で、抜管が72時間の見込みで48時間以内に経腸栄養が開始され、72時間以上経腸栄養持続見込みの患者さんをランダムにICU入室時に振り分けて、高蛋白栄養管理+免疫調整剤群投与群と、高蛋白栄養管理+免疫調整剤非投与群を比較しました。SOFA>12のかなり重症患者が対象でした。プライマリアウトカムは感染症発症率で、CDC基準に基づいて診断しています。14施設のICUを対象とした多施設RCTです。
 結果として、投与群の感染症発生は80例(53%)、非投与群は78例(52%)で有意差はありませんでした。セカンダリアウトカムも様々比較していますが、ほとんど差が出ず、唯一差が出たのがセカンダリのサブ解析で、内科患者の6ヶ月生存率で、しかも死亡率増加しているという結果でした。
 少なくとも現時点では積極的に使う理由が見当たらない感じですね〜。禁食期間でどうするか?というstudyではないので、何もいれずに長時間禁食を続けた場合と免疫調整剤だけでも投与しておいた場合とで比較するなどの検証が今後必要かもしれません。

大塚製薬 GFO 15g×21包 × 3箱 (63包)

大塚製薬 GFO 15g×21包 × 3箱 (63包)

 

 

この男性患者に膀胱出口閉塞はあるか? 
Does this man with lower urinary tract symptoms have bladder outlet obstruction? The rational clinical examination: A systematic review*2

 最近JAMAは力入れてますね〜、rational exam。プライマリケアで尿が出にくいという主訴で来院した場合に、膀胱出口閉塞の有無についての病歴・身体所見を検証したsystematic reviewです。対象研究は、1950-2014年までの英語文献のみで、前向き研究を評価。gold stanadardは膀胱圧と尿測の関係で診断するurodynamic studyです。
 ポイントは2点で、
①症状から予測可能か?
②尿量スキャンで正確な残尿測定が可能か
 
というところです。①に関しては10の研究、②に関しては20の研究が対象となりました。除外基準として、脳卒中・中枢神経疾患・脊髄疾患関連のstudyは除外。あくまでプライマリケアレベルの排尿障害が対象。基本的には前立腺肥大が最多で、80歳を越えると90%にBPHありなんだとか。それ以外の原因として、尿道狭窄、尿路感染、過活動性膀胱、膀胱癌、薬剤(抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、抗コリン薬等)、神経疾患等が挙げられます。
 結果ですが、それぞれの症状はどれも有意な所見とは言えなかった。症状の組み合わせであるIPSS(International Prostate Symptom Score)のカットオフ20以上で検証すると、陽性LR 1.5(95%CI:1.1-2.0)でした。一方、カットオフ20未満だと陰性LR 0.82(95%CI:0.67-1.0)でした。身体所見に関する有意な所見は認めなかった。尿量測定に関しては、尿量が多くなると正確性が不十分になるという結果でした。
 なんか思ったより研究無いんですね〜。狙い目か!?
 

■NEJM■

腹腔内結核の症例 A gut instinct*3

 恒例のProblem solvingです。30歳の女医さんの物語です。あ、ネタバレしてますので読む予定の人は読まないようにしてくださいね。

 4日前から、嘔気・嘔吐、食欲低下、下痢症状が出現。当初救急外来では「胃腸炎」の診断で補液で改善しています。ただ、その後翌日より突然の腹痛と便汁様嘔吐が出現。また、この時点で「激しい痛みの割に腹部所見が乏しい」という身体所見でした。ここで、コメント。

「突然の腹痛と便汁様嘔吐はSBOの所見。腹部所見と自覚症状の解離はSMA血栓が疑われる。鑑別はまずはこの辺りから考えていきたい。」

と。
 病歴を追加で確認すると2週間前にフィリピンにいた。こんな症状を出す感染症は、Fasciolopsis buski(肥大吸虫症)やSchistosoma japonicum(日本住血吸虫)だろうと。血算では、白血球2000(好中球 64%、リンパ球12%、単球24%)で、腹部所見はSBOだった。SBOで白血球減少するとしたら、結核かチフスを考えると。こうゆう組み合わせによる鑑別パターンの切り替えがスムーズなので、米国医師の特徴なんでしょうか?NEJMのcaseカンファに出ている指導医ってみんなこんなですよね。
 その後CTでたまたま肺門部リンパ節と胸水の少量貯留。SBOの原因検索で、過去の手術歴なく、CT上悪性腫瘍が無い場合、鑑別は、クローン病、Yersinia、TB、アメーバ赤痢。おー、これ勉強になる、メモメモ。その後挿管され、empiricalにTAZ/PIPC、CPFX、VCM投与されてます。これはやりすぎかなあ、さすがに。
 手術で癒着解除したところ、腹腔内結節多数。腹腔内結節の鑑別は、結核、癌、サルコイドーシス、クローン病子宮内膜症を考えようと。子宮内膜症ね〜。この時点で、抗結核薬4剤開始しています。最終的に結節の抗酸菌培養は陰性だが、PCRが陽性となり結核の診断となりました。医療者は結核のリスクですよ〜とか。アメリカでは肺外結核がどんどん増えてますよ〜とか。肺外結核ではツ反が陰性になりやすく、呼吸器症状がないから大変ですよ〜と。ただ大半(約90%)に腹水があるんだそうです。

若返り薬実現? Young blood*4

 基礎実験の報告レポート。基礎実験ではまあ色々な実験がされているみたいですが、今回若いマウスと年寄りマウスを融合させるという研究があり、そうすると年寄りマウスが若返る事が分かったんだそうです。で、若いマウスの血中のどんな成分が若返りと関連する因子を調べたところ、rGDF11という物質が分かってきたんです。で、このGDF11をマウスに注入するという実験が行われたところ、分子レベルでは、神経新生・シナプス可塑性改善・筋細胞内のミトコンドリア機能改善・心肥大の改善が見られ、機能的には、嗅覚改善・認知機能改善・運動耐性・握力強化が認められた。この効果を利用すると様々な疾患の治療に使えるのではないか?と期待されている様です。

子供が病気罹患した際の仕事休暇 
Time off to care for a sick child-why family-leave policies matter*5

 子供が体調が悪いときに、子供は学校を休んで自宅で親が面倒を見るというのが最も適切な対応でしょう。ところが、現実的に仕事をしている両親の場合には、親が仕事を休むことは非常に難しいこともある。無理に学校に行かせてしまうと、感染を広げてしまったり、仕事を休むと職を失うリスクも生まれてきます。実は無理矢理解熱剤を飲ませて学校に通わせる親も多いんだそうです。
 アメリカではFamily leave Programsというのがあって、子供の病気の面倒を診る為に仕事を休んだ場合には親に経済的なインセンティブがもらえるという制度です。これ、実は1993年に育児介護休業法(Family and Medical Leave Act:FMLA)として制定されています。一年間で最長12週間の無給休暇を与え、休暇の間の健康保険を負担し、元通りのポストに復帰することが可能な制度なんだそうです。現在は州によってはお金が払われることが分かっていて、1週間 1000$までもらえるのだとか・・・
 親がしっかり休める体制を作ると同時に、親がヘルスケアプロバイダーとして機能するように教育していくことも重要ですよね。日本も子育て支援や子供の看病のための仕組みがもっと手厚くなっていくと良いのですが・・・