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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

デスカンファ:家族再生のラストチャンス

今週のデスカンファは当院で行いました。当院スタッフだけでなく協立スタッフ、院内他科の先生も集まってくださいました。今回のテーマは家族再生のラストチャンスとしました。

 70代の男性。もともと学歴も高く超エリートでしたが、お金使いが荒く結婚していた妻・子供と離別。その後は一切絶縁状態。兄弟も3人兄弟だったものの、借金を肩代わりしてもらい、関係も悪くやはり絶縁状態。自宅で生活していたものの、病院嫌いで全く受診せずいよいよ最期に大家さんに説得され、全身衰弱、多発褥瘡の状態で救急搬送されました。
 入院当初は全ての医療行為に対して拒否的。医療スタッフもどう関わって良いか、本人の意向を確認しても話してもらえない状態が続きました。病院の要請で、兄弟のうちの一人がオムツなどを持って来てくれるようになりました。医療スタッフ側も徐々にカンファレンスなどを通して、本人に寄り添うケアを考えて悩みました。根気強い関わりの中で、本人の気持ちが少しずつ見えるようになり、何を聞いても拒否だったのが、「少し兄弟に相談してみるかな・・・」と。
 少しずつ心が開かれていた矢先に急変し病院入院のまま永眠されました。

(一部プライバシーの観点から内容を変更しています。)

 

今回も臨床倫理の4分割法を用いて振り返りましたが、医療スタッフについては、もやもやがたくさん生まれる経過でした。十分本人の気持ちをくみ取ってあげる事が出来なかったのではないか、もっと早く関わり方を変えていれば、やっと本人の気持ちが分かったところで亡くなってしまうなんて・・・など多くの後悔があった様です。

確かに、そういった後悔もあるのですが、本人にとっては大きな変化があった入院期間だったのかなという気もします。もともと全てを拒否し、兄弟とも絶縁状態だった方が、入院期間中に「兄弟に相談してみるかな」と兄弟への信頼と今後への希望を口にされると言うこと自体、とても大きな変化なんだろうと思います。関わったMSWが持っていた情報でも、兄弟が涙ながらに「きちんとした医療を受けさせてあげられて良かった」と話していたとのことです。絶縁して関わりが無い状態で、自宅で亡くなっていたという形であれば、この涙は無かった様に思います。

医療スタッフとしては無力感が強く残ったかもしれませんが、兄弟にとっては家族再生のラストチャンスという意味で、本当に大事な時間だったと思います。様々な視点から今回の看取りを振り返ることができ感謝でした。