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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:フロリードゲルⓇに注意/失行いろいろ/スタチンとALS/

カンファ 循環器 身体所見 感染症 神経 薬剤

フロリードゲルⓇに注意

 ワーファリンは多くの薬剤との相互作用が報告されていますが、内服しない薬剤では時折忘れ去れる事があるので注意が必要です。
 フロリードゲルⓇはその代表格。フロリードゲル経口用Ⓡは口腔内塗布薬で、一般的には体内にほとんど吸収されないとされているため見過ごされがちです。でも、フロリードゲルⓇはCYP3A・CYP2C9の強力な阻害剤であり、どちらもワーファリンの代謝酵素であるため、併用するとワーファリン血中濃度が急激に上昇するわけです。
 過去にそれなりの数の報告がありますが、平均すると約2週間前後でINR上昇や出血傾向が出現することが明らかになっています。
 フロリードゲルⓇで注意すべき薬剤としては、その他にはフェニトイン、SU剤などもあります。

 

失行いろいろ

 クルズスでも”失行”が取り上げられていたためおさらいです。
失行とは「学習された動作の後天的障害で、筋力・協調性・感覚・注意・集中や理解力などの要素的障害では説明できない高次脳機能障害である。」と定義されています。
 原因となる部位として、Wernicke野周辺、頭頂葉、前頭葉の3カ所が主に行為に関する中枢としてあげられています。

①肢節運動失行 
種類:手先をうまく使うことが出来ない。明らかな麻痺や失調はないのがポイント。対側上肢に症状が出る。
診方:硬貨をつまむ、ボタンを掛けるなどを診る。
責任病巣:中心前回・後回とその近傍。

②観念運動失行 
種類:命令・指示通りに身振り・手振りができない。普段は障害が認められないが、命令された観念運動行為ができないことが特徴。
診方:敬礼をしてもらう、釘を打つ真似をしてもらう
責任病変:頭頂葉後部

③観念失行 
種類:個々の運動は出来るが、一連の運動連鎖が必要な行為が障害される。アルツハイマー認知症で多い。
診方:マッチでロウソクに火をつける、ポットと急須を使い湯飲みに茶を注ぐ
責任病変:優位半球もしくは両側の頭頂葉後方領域(特に角回)


④構成失行 
種類:形を作ることが出来ない
診方:指でキツネを作ってもらう、積み木で形を作ってもらう
責任病変:頭頂葉

⑤着衣失行 
種類:服を着ることが出来ない
診方:衣服を着てもらう
責任病変:頭頂葉

というわけで、失行所見を頑張って取っていきましょう。

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スタチンとALS

 スタチンを使用すると筋痛が出るというのは有名な副作用ですよね。実はこのスタチンによる筋肉関連の副作用はかなり幅広いとされています。中には、ALS likeな症状になったり、ALSを発症させるのでは?という報告も出ています。
 また、ALS患者では脂質異常がある方が予後が良いことも報告(Neurology. 2008;70(13):1004.)されてきており、脂質異常を治療しない方が良いのではないか?とも言われています。また、ALS患者を対象にスタチン投与群と非投与群を比較すると、投与群の方が筋力低下が急速だったAmyotroph Lateral Scler. 2008;9(4):223.)とも言われています。
 これが、脂質異常との関連なのか、obesity-paradoxとして知られている栄養的な問題なのかは明らかにはなっていません。ただ、どちらにしてもALSの患者さんにスタチンは投与しない方が良さそうです。