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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 肥満手術の長期予後/高度肥満への迷走神経遮断/肥満手術の現状/Shamによるプラセボ効果検証を/チクングニア熱の脅威/痔核

■JAMA■

肥満手術の長期予後 
Long-term follow up after bariatric surgery*1

 肥満に対する手術療法は欧米を中心に盛んに行われていますが、まだまだ長期予後は十分検証されていません。2009年のコクランでも、1年予後を比較したstudyばかりなので、長期予後不明なのできちんと検証するようにと警告しています。というわけで、今回は肥満手術後の長期予後を比較したシステマティックレビューから。

今回reviewしたstudyは、

①follow up期間が2年以上
②80%以上がfollow upされている
③デザインは問わない

という形で検索した結果、7371件のstudyが検証され、そのうち1136件(16%)のみが2年以上のfollow up期間。follow up率が80%以上に限定すると、29件のみとなりました。まだまだ少ないですね・・・

 で、肝腎の結果ですが、バイパス手術が11件、胃部分切除が2件、バンド手術が14件でした。サンプルサイズで補正した体重減少率で比較すると、バイパス群が65.7%、バンド群が45.0%でした。2型糖尿病患者で内服不要でHbA1c<6.5%が達成されている割合は、バイパス群で66.7%、バンド群28.6%高血圧患者で内服不要で血圧<140/90mmHgを達成できた割合は、バイパス群で38.2%、バンド群で17.4%でした。

 合併症や死亡については報告吸うも少なく、上記のうち14studyのみ。さらに、primary outcomeとして見たものは4つのみでした。合併症を見たいときはprimary outcomeにしてみましょうねというのが原則論です。そんな限界もありつつ、手術に伴う死亡率は、バイパス群が1%、バンド群が0.2%でした。

 結論としては、まだまだ検証が不十分な部分も多いが、体重のみならず、血糖・血圧・脂質代謝に良い影響を与える事は間違い無いこと、バイパスの方がバンドよりも良い傾向であること、合併症はそれほど多くない可能性が高いことなどが示唆されました。さて、日本では今後どう進んでいくのでしょうか??

高度肥満への迷走神経遮断 
Effect of reversible intermittent intra-abdominal vagal nerve blockade on morbid obesity:The ReCharge randomized clinical trial*2

 JAMAは肥満特集でした。肥満に対する対処は生活習慣改善、薬剤、手術とありますが、圧倒的に効果があるのは手術です。ただ、手術はどうしても侵襲的で合併症も多いので、もう少し低侵襲にいけないだろうか?というのが今回のテーマです。しかしまあ、高血圧でもそうでしたが、迷走神経遮断とか交感神経遮断とか何かが間違っている気がしないでもないです。

 BMIが40-45 もしくは 35-40かつ危険因子(高血圧・糖尿病・脂質異常・OSA等)がある患者が対象でした。介入は、腹腔鏡で迷走神経遮断デバイスを植え込んで、12時間/日activeにするというもの。コントロールに皮下への植え込みデバイス(非稼働)としています。アウトカムは12ヶ月後の体重変化率としました。study自体は10施設の多施設共同研究です。

 体重減少は、迷走神経遮断群で24.4%、Sham群で15.9%、差が8.5%で事前に設定した有意基準の10%には届きませんでした。合併症としては、挿入部位の痛み、胸焼け、嘔気、嚥下困難感などかなり多く出ていました。

 迷走神経遮断によって体重減少はShamよりは大きい傾向でしたが有意差はつきませんでした。今回驚きだったのはshamでも結構下がるということです。NEJMでも取り上げますが、今後デバイス関連のRCTでは可能な限りshamを用いていくのが良かろうと思いました。

肥満手術の現状 
The current state of the evidence for bariatric surgery*3

 アメリカでは肥満率は横ばいですが、BMI ≧35の高度肥満患者さんが14.5%と増加傾向なんだそうです。そして、この手の高度肥満患者さんには、薬剤や生活習慣改善ではなかなか十分な効果が得られていないのが現状です。今回の肥満に対する治療のstudyから分かることは、迷走神経遮断は悪くは無いが、効果は手術には劣るし副作用も出る。手術は良いのですが5年以上長期にfollow upしている研究はほとんどないことが浮き彫りになりました。肥満手術の中身で言うと、Sleeve gastrectomyがトレンドで、バンドやR-Yは減少傾向です。

 今後術式もある程度確立させながら、長期効果および副作用を十分検証した上で、高度肥満に対する治療方法を確立していきましょうとのeditorialのコメントでした。


■NEJM■

Shamによるプラセボ効果検証を 
Sham controls in medical device trials*4

 今回も肥満のstudyでshamが出てきました。shamとは見せかけという意味ですね。近年薬剤だけではなく、様々なデバイスによる研究でも、きちんとプラセボ的なコントロール群をおく必要があると言うことで注目されてきています。sham鍼などは有名ですよね。

 薬剤はプラセボと比較して検証しているのですから、効果が無い・害だと分かった際に、場合によっては抜去できない可能性のあるデバイスは、より丁寧に評価される必要があります。ところが、世の中に出ているデバイスの1%未満しかきちんと評価されていないという現実もあります。もちろんshamデバイスというもの自体には倫理的な問題も大きく仕方の無い部分もあるのでしょうが。特にプラセボ効果は処置によるものだと更に大きいことが知られていて、手術が58%、鍼が38%、薬剤が22%とされています。

 sham効果を正確に見積もる為にもう一つ大事な点として、自覚症状のみで評価しないということが挙げられます。例えば、安定型狭心症に対するPCI薬物療法のRCTで症状のみを改善するという結果は、プラセボ効果も十分考慮する必要があります。本来であれば、PCIの効果のうち、sham効果部分をコントロールする必要があるのかもしれません。

チクングニア熱の脅威 
Chikungunya at the door ーDeja Vu All over again?*5

 日本でデングが大流行な今、米国ではチクングニアが心配されています。そもそもデング熱はアメリカではしばしばoutbreakすることがあるみたいで、2008年にフロリダでoutbreakがあり、今後も永続的にリスクは高いでしょうとされています。それに付随して、今度は2013年12月にカリブ諸国でチクングニアがoutbreakしています。

 基本的には、デング熱もチクングニアも同じ媒介昆虫を使い、かつ症状も似ていることが知られています。ちなみに媒介昆虫はネッタイシマカやヒトスジシマカでこれはデング熱と同様です。今日本で話題になっているのはヒトスジシマカですよね。症状は、2日〜2週間程度の潜伏期間を経て、40度の高熱と斑状丘疹、関節痛が出現。熱は2日ほどで解熱するが、その後、関節痛・頭痛・不眠・倦怠感などが出現。デング熱と異なるのは、関節痛の持続時間で報告によると2年程度続くとも言われています!確定診断には血清PCRが必要。

 表題の通り、at the doorまで近づいてきており、アメリカでは対策を余儀なくされているんだそうです。アジアでも流行っていることを考えると、デング同様入ってきても全くおかしくは無いですよ。

痔核のreview 
Hemorrhoids Clinical practice*6

 痔核のreviewが掲載されていました。痔核の頻度は報告によってまちまちですが、一般的な感覚として憩室症と同じくらいで、GERDや腹壁瘢痕ヘルニアよりは少ない頻度の疾患とされています。

 分類としては肛門から3-4cm部位にある歯状線の上下で分類し、これは発生由来が内胚葉なのか外胚葉なのかによって異なります。歯状線より肛門側は痛覚神経が豊富なため痛みが出ます。ただ、実は何故痛みが出るのかの機序も正確には分かっていないのだそうで、スクリーニングでCFを施行した39%に痔核があるものの、そのうち症状があるのは半数に留まっていたという報告もあるんだそうです。症状で多いのは血便で60%、痛みが55%、肛門不快感が20%とのことでした。血便の特徴は排便直後に起きるという病歴が典型的です。

 病歴では、①繊維質や水分摂取量、②トイレ習慣(本を読むなど、長くトイレに入っている習慣がないか)、③還納の必要正、④失禁の有無などを確認すべきです。また、痛みの程度が重篤な場合には、まずは他疾患を考慮する必要があります。診察は直腸診および肛門鏡で、肛門鏡は99%の肛門病変を診断できます。直腸脱との区別が難しい場合には、Valsalva法で圧をかけてみると、区別が可能です。Gradeはお示しするとおり、Grade Ⅰ〜Ⅳに分類されます。

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(文献より引用)
 治療として、食物繊維・水分摂取・トイレ時間を短くするの多角的介入で、痛み・痒みは減らないものの出血は減らしたと報告されています。low gradeのものはまずは保存的に。その他の治療としては、切除>痔核バンド>硬化療法の順に効果的であるというメタ解析が出ています。最近では、GradeⅠ〜Ⅲで保存的療法に抵抗性の場合には、バンドが用いられることが多いです。GradeⅣは手術。日本ではジオンⓇが普及しつつあるみたいですが、今後の大規模検証待ちなんでしょうか。