栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 高齢女性の乳癌スクリーニング/院外CPAを病院に運ぶべきか/パーキンソン病への初期治療法/向精神病薬は犯罪を減らすか

BMJ

高齢女性の乳癌スクリーニング 
Effect of implementation of the mass breast cancer screening programme in older women in the Netherlands: population based study*1

 オランダ発の高齢女性への乳癌スクリーングのstudyです。オランダでは乳癌死亡が高齢者で多い事を受けて、1998年にスクリーニング推奨上限を69歳から75歳に引き上げたのだそうです。今回はその引き上げの効果について国を挙げてのregistryで評価したコホート研究です。70-75歳の女性を、年代毎に比較して乳癌発症率(早期癌と進行癌)をアウトカムとして評価しています。

 結果として、スクリーング引き上げによって、早期乳癌はIRR 1.46(1.40-1.52)と増加。一方、進行乳癌はIRR 0.88(0.81-0.97)と低下。絶対値では、早期乳癌が10万人年あたり120症例増加し、進行乳癌は10万人年あたり7人減少。これは、スクリーニング引き上げによる進行胃癌減少効果は不十分と考えられると結論しています。むしろ、早期乳癌のoverdiagnosisなのでは??と考察されています。もちろん、世代によって乳癌発症率は異なるとは思いますが、control群として76-80歳を置いており、この群では乳癌発症頻度は変わっていませんでした。現在イギリスで、71-73歳女性対象のMMKスクリーニングのRCTが行われており、この結果が出るまでは70歳以上のスクリーニングは勧められないと結論づけていました。

 overdiagnosisについては、様々な意見があると思いますし、早期胃癌を見つけたらそれで良いのではないか?という意見もあるとは思いますが、早期発見・早期治療が必ずしも100%素晴らしいことではないかもしれないという部分がもう少し見直されても良いのではないかとも思っています。
 

院外CPAを病院に運ぶべきか 
Should we take patients in cardiac arrest to hospital?*2

 BMJのdebateはまた、難しいところを攻めてきますねえ。debateなので、YES派とNO派があるわけですが、
 YES派(運ぶべき)は、院外CPAの長期生存率が10%と低いことから、院外CPA搬送をどこで止めるかを救命士判断にしたらどうかという話題が出ています。有名なのは、BLS-TOR ruleというのがあり、以下の3項目

①not witnessed by EMS personnel
②no shocks are administered
③no return of spontaneous circulation (ROSC)

の全てが満たされた場合に心肺蘇生できないアウトカムに対する特異度がかなり高いと報告されています。original studyでは、1240例のCPA患者のうちBLS-TOR陽性(全て満たす)が63%でしたが、そのうち4例(3%)が生存例だったということでした。日本でも実は検証されていて、15万人の院外CPA studyでも特異度は96.8%となっています。ただ、搬送を中止することは救命士にとってかなり抵抗がある事、特異度を100%にしないと行けない問題があることなどから原則搬送するのが良いだろうと結論づけています。

 一方、NO派(運ばなくても良い)は、CPAでEvidenceのある治療は質の高いCPRとDCであり、どちらも病院へ行かなくても出来る。むしろ搬送自体が救急車の交通事故リスクを上げたりしており、二次的害を起こす可能性についても目を向けなくてはいけない。救命士のCPR skillは素晴らしいのだから、今後中止基準もきちんと指導すれば問題ないのでは?としています。

 うーん、まあdeateだとYESかNOかになるので、どちらの意見も極端には聞こえますが、実際のところ搬送しないで自宅で看取ってあげた方が穏やかな最期になるケースはありますよね。あとは誰が看取るかという問題があるのでしょう。

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(本文より引用)

■Lancet■

パーキンソン病への初期治療法 PDMED研究 
Long-term effectiveness of dopamine agonists and monoamine oxidase B inhibitors compared with levodopa as initial treatment for Parkinson's disease(PD MED) : a large, open-label,pragmatic randomised trial*3

 パーキンソン病の初期治療でどの薬剤を最初に使用するかは未だ結論が出ていない領域です。若年PDではlevodopa freeレジメンで、高齢者ではlevodopa中心でというのが一般的にはある様で、これはlevodopa製剤でDyskinesisが多い事や減衰効果があるためできれば温存したいなどの理由があるとのことです。今回過去最大規模のRCTで初期治療について検討しています。

 対象患者は、UKのPD診断基準を満たし専門医が診断したPD患者で未治療もしくは治療開始6ヶ月以内の1620人を主治医の治療方針から3群にランダムに振り分けています。例えば①群は、DOPA・DA・MAOBの3剤からランダムに、②群はDOPA・DA群からランダムに、③群はDA群・MAOB群からランダムに振り分けられているというpragmatic RCTになります。アウトカムはPDQ-39というパーキンソン病に特異的なQOL scoreを用いて、6点以上を臨床的に有意と設定しています。平均follow up3年の多施設RCT。COIは著者のうち1人だけでした。 

 患者さんは平均70歳でPD歴半年の比較的高齢者。内訳を見ると、DOPA開始群は他剤へのswitchが少なく、DA・MAOB群は他剤へのswitchがかなり多くみられました。また、MAOBもDAも副作用で止める人の数が圧倒的に多い様でした。

 結果PDQ-39は、DOPA群 vs DOPA spare群では、スコアの差は1.8点(0.5-3.0)と有意にDOPA群が良い結果でしたが、事前に設定した臨床的有意なスコアである6点の基準を満たしませんでした。費用対効果はLevodopaが良いという結果でした。

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(本文より引用)
 初期治療はまあ何でも良いけど、Levodopaが副作用少なくて良いんではないか?という結果。まあ平均年齢70歳ですから、もともとの治療方針を裏付ける結果でした。あとはやはり3年程度ではwearing offは分からないので、もう少し長期の結果が必要ですね。今回、もう一つ大事なのは、統計学的には有意差は出たけど臨床的に有意な差として設定したスコアを満たさなかったため、有意とは考えないという点でした。QOL scoreがアウトカムになる場合に、しばしば問題になる点に対して、事前に臨床的に有意なスコアを設定しておくという点が実践的でした。これは今週のJAMAでも少し取り上げます。

向精神病薬は犯罪を減らすか? 
Antipsychotics, mood stabilisers, and reductions in violence*4

 今回Lancetでは、向精神病薬の犯罪減少効果を検証したstudyがありましたが、それに対するeditorialです。最近25年間で統合失調症患者さんの犯罪が増えており、双極性障害も同様の傾向があるのだそうです。今回2006-2009年のSwedenの研究で、向精神病薬の処方されている期間と処方されていない期間の犯罪率を比較したところ、処方されている期間の方が有意に犯罪が少なかったHR 0.55(0.47-0.64)という報告でした。規模は8万人超の大規模研究でした。

 ただ、色々見てみると驚くことに処方された60%で統合失調症双極性障害の病名がなく、それにも関わらず犯罪数が減ったのは病名がきちんと登録されていなかったのか、psychosisで攻撃的行動を起こしたことがあるというだけでも犯罪リスクがあるという可能性も指摘されていました。今回はコホート研究でしたが、今後是非RCTで検証しましょうと結論づけています。