栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:微量アルブミン尿/皮膚筋炎の診断/Cannabinoid中毒症候群

MKSAPまとめがやや滞っていますねー。
ちょいと午後でまとめてみます。

微量アルブミン尿 microalbuminuria

❶症例
 糖尿病定期通院中で、自覚症状無く血清Crなどの腎機能は正常の患者で、腎症を評価する為に次に行う検査は?

 微量アルブミン尿とは?
 微量アルブミン尿の定義は、Cr補正したアルブミンが30-300mg/gとされており、6ヶ月以上の期間で3回中2回が陽性となったもの。糖尿病に合併した微量アルブミン尿は、CKD進行と心血管疾患のリスクになる事が知られている。微量アルブミン尿を呈している患者には進行抑制のために、ACE-i・ARBを投与することが推奨されており、早期に同定することが重要となる。

 ❸他の検査は?
 微量アルブミン尿の測定には、スポット尿でのgCr補正で良いとされる。24時間蓄尿がgolden standardだが、手間がかかり蓄尿が不正確になる事も考えられる。また、採取した尿は氷で冷やす必要があるNKF KDOQIは上記の理由からスポット尿採取を推奨している。腹部超音波検査はルーチンでは不要。

Key Point
✓ National Kidney FoundationとAmerican Diabetes Associationは5年以上経過した1型糖尿病患者と全ての2型糖尿病患者の診断時にgCr補正の微量アルブミン尿測定を推奨している。

KDOQI. KDOQI clinical practice guidelines and clinical practice recommendations for diabetes and chronic kidney disease. Am J Kidney Dis. 2007;49(2 suppl 2):S12-S154. PMID: 17276798

 

 

皮膚筋炎の診断 Diagnosis of Sarcoidosis

❶症例
 30代の女性が慢性経過の倦怠感と手指・膝の疼痛・こわばりを主訴に受診。腕や下肢の筋力低下もあり、顔面や肘・手に皮疹も出現している。家族歴は叔母にSLE。内服薬は無し。皮疹はこれ。

f:id:tyabu7973:20141115143014j:plain
(MKSAP16より引用)
筋力評価では大腿四頭筋三角筋の筋力低下とPIP関節の滑液包炎あり。ANA 160倍でCK上昇もあり。さて診断は?

 ❷皮膚筋炎とは?
 皮膚筋炎は近位筋有意の筋力低下が進行性・間欠的に認められるのが特徴的な炎症性筋疾患である。身体所見としては、shawl sign(ショールサイン:後頚部〜背部・肩の光線過敏様紅斑)V sign(前頚部〜胸部の光線過敏様紅斑)Heliotrope疹・Gottron徴候が有名。上記はHeliotrope疹ですね。他の身体所見としては、発熱、倦怠感、Raynaud症状、爪異常、関節炎、肺合併症、心臓合併症、紹介症状などを来す。80%の患者でANA陽性だが、SLEや多発筋炎・MCTDなどの特徴も有する。Gottron徴候はMCP関節やPIP関節だけで無く肘関節に出ることもある

 ❸鑑別疾患は?
 封入体筋炎高齢者に多く、近位筋も遠近も筋力低下が来る。しかし、皮疹や抗核抗体陽性にはならず、筋肉外症状は稀。
 MCTD:全身性硬化症・SLE・多発筋炎のoverlap症候群。筋炎とANA陽性はMCTDも考慮する必要があるが、本症例には皮膚筋炎に特徴的な皮膚所見がある為除外。 
 多発筋炎:筋症状は皮膚筋炎と同等だが皮疹は起こらない。
 SLE:SLEでも軽度の筋炎を来す事はあるが、SLEには疾患特異性の高い皮疹がある。

 Key Point
✓ Gottron徴候やHeliotrope疹は皮膚筋炎に特徴的な所見である

Callen J. Cutaneous manifestations of dermatomyositis and their management. Curr Rheumatol Rep. 2010;12(3):192-197. PMID: 20425525

 

 

Cannabinoid中毒症候群 Cannabinoid hyperemesis syndrome

❶症例
 20歳の男性が16ヶ月も前から間欠的な腹部違和感・嘔気・嘔吐の発作的なエピソードがでるとのことで受診。発作と発作の間では無症状で、4-6週毎に症状が起こる。だいたい2-4時間おきに嘔吐し48時間程度続くのが発作で、症状は熱いシャワーを浴びると改善する。で、2年前からマリファナを使用している。

 ❷Cannabinoid中毒症候群とは?
 この10年間で徐々に注目されつつあるマリファナ使用中に発作的な腹痛・嘔気・嘔吐が出ることが特徴的。治療はマリファナの中止。機序としてははっきりは分かっていないが、Cannabinoidが中枢神経受容体だけでなく消化管受容体にも作用して、消化管運動を抑制するのではないか?と推察されています。

 ❸他疾患との鑑別ポイント
 慢性偽性腸閉塞(CIPO)腹部膨満、腹痛、嘔気、嘔吐が急性にも慢性にも再発性にもおこる疾患。画像所見では、器質的な消化管閉塞が無いのにも関わらず拡張した小腸を認めることが特徴的で、大腸の拡張を伴う事もある。糖尿病やアミロイドーシス、腫瘍随伴症候群などに伴う事があり、画像で疑って消化管Manometryで診断をつけるべき。
 周期性嘔吐症候群(CVS:周期性嘔吐症候群は、1週間以内に改善する急性の嘔吐発作エピソードが特徴的な症候群。1年間に3回以上のエピソードがあり、発作がないときには無症状である。偏頭痛既往がある患者が多く診断の参考になる。病態生理は良く分かっていない。
 Gastroparesis胃麻痺:胃麻痺は長期経過した糖尿病の合併症として知られており、症状はほぼ毎日の様に出るからである。 

Key Point
✓ Cannabinoid中毒症候群は、マリファナを使用している患者の発作的な腹痛・嘔気・嘔吐が特徴的である。

Soriano-Co M, Batke M, Cappell MS. The cannabis hyperemesis syndrome characterized by persistent nausea and vomiting, abdominal pain, and compulsive bathing associated with chronic marijuana use: a report of eight cases in the United States. Dig Dis Sci. 2010;55(11):3113-3119. PMID: 20130993


※このエピソードは下記の本の中でも紹介しています。


読んだ本:患者はだれでも物語る ー医学の謎と診断の妙味ー - 栃木県の総合内科医のブログ

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

 
MKSAP for Students 5

MKSAP for Students 5