栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:PEGはラクツロースより肝性脳症の治療に有効である

PEGはラクツロースより肝性脳症の治療に有効である
Lactulose vs Polyethylene glycol 3350-electrolyte solution for treatment of overt hepatic encephalopathy The HELP randomized clinical trial*1

JAMA Intern Med. 2014;174(11):1727-1733. doi:10.1001/jamainternmed.2014.4746

【背景】
 肝性脳症は肝硬変患者の入院の主要な理由の1つ。急性の肝性脳症に対する薬物治療はこの十年間で変化がない。世界的にスタンダードケアはラクツロース(経口・経腸)投与である。

【目的】
 肝性脳症で入院した肝硬変患者に対するポリエチレングリコール3350(PEG)とラクツロースによる薬物治療を比較する。PEGを用いた迅速な排便が、ラクツロースを用いた場合よりもより効果的に肝性脳症を改善させると仮説をたてた。

【デザイン】
 ランダム化比較試験で、Hepatic Encephalopathy:Lactulose vs Polyethylene glycol 3350-Electroclyte solution(HELP)study。3次の教育医療施設で186人のスクリーニングから肝性脳症で入院した50人の肝硬変患者さんを対象とした。

【介入】
 PEG群(n=25)と通常ケアであるラクツロース群(n=25)にランダム割り付け。PEGは4L単回投与で経口か内服困難であれば経鼻胃管使用。ラクツロースも20-30g/分3投与で1日3回以上内服もしくは経直腸使用とした。

【メインアウトカム】
 プライマリアウトカムは、24時間時点での肝性脳症Gradeの1以上改善した人の割合で、肝性脳症Gradeは、Hepatic encephalopathy scoring algorithm(HESA)を用いて、0(正常)〜4(昏睡)まで分類した。セカンダリアウトカムは、肝性脳症改善までの時間と入院期間とした。

【結論】
 25人ずつそれぞれの群に割り付けられた。ベースラインの特徴は両群で差を認めなかった。プライマリアウトカムの24時間時点でのGrade1以上のHESAの改善は、スタンダード治療(Lactulose)群では13/25人(52%)、PEG群では21/23人(91%)であり、有意にPEG群の方が高かった(p<0.01)。1人は最終解析前に退院し、1人はPEG摂取を拒否した。24時間時点での平均HESAスコアは、ラクツ群 2.3→1.6、PEG群 2.3→0.9で、こちらもPEG群が有意に改善していた(p=0.002)。肝性脳症改善までの平均期間は、ラクツ群 2日、PEG群1日で有意差あり(p=0.01)。有害事象はほとんど起きず、studyと関連したと思われるものは無かった。

f:id:tyabu7973:20141109233631j:plain

(文献より引用)

【結果】
 PEGによる肝性脳症治療は、通常治療であるラクツロースよりも迅速に肝性脳症を改善した。肝硬変患者の急性肝性脳症入院患者に対しては、PEGが通常ケアのラクツロース群より効果的である可能性が示された。

【批判的吟味】
・RCTではありますが、盲験化は出来ていません。まあPEG(本邦ではニフレックⓇがglycol 4000なので最も近い製剤)飲んで盲験化も出来ませんわな。HESA観察者の盲験化も不十分だった様子。
・評価指標として、HESAが用いられています。これも賛否両論はある様ですが、ある程度きちんとした指標で評価していると言う意味では評価出来ると思います。
nは25ですからまあ足りないですよね。単一施設という限界もあります。
・ちなみに入院期間もPEG 4日 vs ラクツロース 8日ですから半分にしています。
・興味深いのはアンモニア値。下記にも載せますが、ラクツロース 175→82、PEG 146→120と有意にラクツロース群の方が低下していました。やはり急性期の肝性脳症の重症度評価にアンモニア値は役に立たないという証左なんだと思います。圧倒的に効果がある群がアンモニアが下がらない・・・
・discussionでも書いてありましたが、要は一般的に利用可能で費用も安い治療が通常治療よりも有効だったということを証明したinnovativeな研究だとしています。

【個人的な意見】
・個人的には大変興味深く読みました。
アミノレバンⓇ点滴なんて誰も使ってないわけです。
・ただ、肝性脳症でぼーっとしている人にニフレックⓇ飲ませるのってなんだか罪悪感。
・そのままCFも出来てしまいそうですね。

※もちろんCOIはありません

✓ 肝性脳症の治療にPEG製剤は通常治療であるラクツロースよりも有効な可能性がある