栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:Lambert-Eaton症候群/甲状腺髄様癌/悪性胸水に対する胸腔穿刺

MKSAPまとめです−。
サラッとサラッと。

Lambert-Eaton症候群 Lambert-Eaton syndrome

❶症例
 60代の男性が6週間経過の階段昇降時の筋力低下と上肢挙上困難、眼球・口腔乾燥、勃起障害で受診。既往歴では、肺の小細胞癌があり、化学療法+放射線療法を施行。全脳照射も施行。両側の眼瞼下垂と上下肢の筋力低下あり。認知機能正常。深部腱反射消失。運動を継続していると徐々に筋力・反射が回復する。

 ❷Lambert-Eaton症候群とは?
 シナプス前電位依存性P/Q型カルシウムチャンネルに対する抗体が原因と考えられている稀な神経筋接合伝達障害である。肺小細胞癌の5%に合併すると言われ、他の癌との合併も報告されている。典型的には進行性の近位四肢筋力低下、眼球乾燥・口渇・便秘・勃起障害などの自律神経障害も合併。また腱反射の消失も特徴

 ❸診断は?
 運動負荷後のFacilitationはベッドサイドで確認出来る所見である。筋電図検査とP/Q型カルシウムチャンネル抗体陽性で診断が確定する。また、原疾患の癌の活動性とは関連しない。

Key Point
✓ Lambert-Eaton症候群は、肺小細胞癌や他の種類の癌に合併する筋疾患で、自律神経障害の結果として、運動によって改善する近位筋筋力低下と深部腱反射消失が特徴的である。

Petty R. Lambert Eaton myasthenic syndrome. Pract Neurol. 2007;7(4):265-267. PMID: 17636143

 

 

甲状腺髄様癌 Medullary thyroid cancer

❶症例
 35歳女性が右頚部結節を指摘され、ほてり、発汗、動悸、頭痛の症状を訴えていた。高血圧で治療中。BP 145/95mmHg、Pulse 100bpm、右甲状腺に硬い2cm大の結節あるも、甲状腺機能は正常でカルシウムは高値。エコーでリンパ節腫張はないが、2×2cmの腫瘤があり、 FNAで甲状腺髄様癌の診断となった。

 甲状腺髄様癌とは?
 甲状腺結節があり、甲状腺既往は正常だが、血清カルシウムとカルシトニンが高値で、FNAでは多発性形質細胞様の類円系腫瘤があり、髄様癌が最も疑われる。髄様癌の80%は孤発性だが、多発性内分泌腫瘍症(MEN)との関連も考慮すべき。MEN2A・MEN2Bは、褐色細胞腫を合併することが知られている。
 髄様癌は孤発性の100%、家族性でも30%が両側性と言われており、甲状腺切除を行う場合には両側切除+甲状腺ホルモン補充が望ましい。

 ❸本患者で考えるべきことは?
 甲状腺髄様癌患者で甲状腺機能は正常でも、ほてり・発汗・動悸などの症状を呈しているため、MENによる褐色細胞腫の合併を考慮して、血清メタネフリン値やノルメタネフリン値を測定すべきである。

 Key Point
✓ 甲状腺髄様癌の80%は孤発性だが、家族性のものとして、MEN2A、MEN2B、家族性非MENがある。

American Thyroid Association Guidelines Task Force; Kloos RT, Eng C, Evans DB, et al. Medullary thyroid cancer: management guidelines of the American Thyroid Association [erratum in Thyroid. 2009;19(11):1295]. Thyroid. 2009;19(6):565-612. PMID: 19469690


 

 

悪性胸水に対する胸腔穿刺 thoracentesis

❶症例
 58歳男性が乾性咳嗽と体重減少(8.2kg/2ヶ月)で来院し、3週間持続する嗄声、従喫煙歴ありBMI 21で胸部聴診では、右肺呼吸音減弱と呼気延長あり。胸部レントゲンで胸水貯留があり、CTでは胸水と腫瘤を認めた。胸腔穿刺を施行した。血清LDH 218、胸水LDH 286、血清TP 6.2、胸水TP 3.4、胸水赤血球3480、胸水白血球1420(Neu 16%、Lym 66%、Mono 6%、Aty lym 12%)、細胞診陰性。

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(MKSAPより引用)

 ❷悪性胸水に対する胸水細胞診の診断能は?
 胸腔穿刺前に悪性が強く疑われる場合には、胸腔穿刺の診断能について整理する必要あり。非小細胞癌では、胸腔穿刺で悪性腫瘍が証明された時点で、胸膜浸潤がありStageⅣと診断される。
 胸水細胞診の感度は、初回65%、2回目27%上乗せ、3回目5%上乗せ、それ以上は繰り返しても診断能は上がらないとされており、初回陰性の場合にも3回までは繰り返すことで診断能があがる

 ❸気管支鏡検査はどうか?
 気管支鏡検査で診断をつけることは可能だが、胸水が貯留している場合は病期の判定が不十分となってしまい、他の手段での精査を行う必要が出てくる。胸膜生検は結核などのびまん性胸膜病変では有用だが、悪性の胸膜浸潤では診断能は高くない。 

Key Point
✓ 非小細胞性肺癌が疑われる胸水貯留の患者では、胸水細胞診を繰り返すことが重要。初回では陽性率65%だが、2回目で27%、3回目で5%上乗せ効果あり。

Garcia LW, Ducatman BS, Wang HH. The value of multiple fluid specimens in the cytological diagnosis of malignancy. Mod Pathol. 1994;7(6):665-668. PMID: 7991525

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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