栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:偽性Bartter症候群/セフトリアキソンとアルブミン結合率/侵襲性Klebsiella感染症

偽性Bartter症候群

 電解質異常の鑑別の話題。Bartter症候群(バーター症候群)は遺伝子変異によるNa-K-2Cl共輸送体がうまく作動しない疾患で、低カリウム血症・代謝性アルカローシスなどを特徴とした先天性尿細管機能障害ですね。電解質異常にともなう脱力感や筋症状、多飲・多尿などが主症状で、小児期に発症する事が多い為、滅多に出会うことは無い訳です。

 一方、フロセミドなどのループ利尿薬も上述のNa-K-2Cl共輸送体に作用して利尿作用をもたらす為、ループ利尿薬の不適切使用によって、Bartter症候群と同様の電解質異常を来すことが知られています。これを、偽性Bartter症候群(pseudo‐Barttersyndrome)と呼び、利尿薬不適切使用以外には、下剤不適切使用や慢性下痢・神経性食欲不振症などが原因になるとされています。ちなみに、レニン・アルドステロンは高値になります。

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http://ajprenal.physiology.org/content/ajprenal/295/4/F859/F1.large.jpgより引用)

 難しいのは、フロセミド乱用者は服薬自体を頑固に否定する例も多いことです。これは、ダイエット目的や体型へのコンプレックスが関連するともされ、外見も診断の参考になるかもしれません。ある症例報告では尿中フロセミド測定をしていました。また、健康食品の中にフロセミドを含有している健康食品というのも過去に報告があるみたいです。

横浜市衛生研究所:いわゆる健康食品中に添加された化学物質いろいろ

✓ 偽性Bartter症候群は病歴だけでは除外出来ず。検査結果から疑うべし!

 

 

セフトリアキソンとアルブミン結合率

 セフトリアキソンは半減期が長いこと、腎機能を考慮しなくても良いことなどから、使用率がかなり高い薬剤の一つでは無いでしょうか?使用可能量が海外の容量と遜色ないことも本邦で使い易い理由のもう一つの理由です。

 そんなセフトリアキソン使用の際の注意事項の話。セフトリアキソンはアルブミンとの結合率が非常に高い事が知られています。ところが、低アルブミン血症があると、血中のUnbound fractionが増えてクリアランスが増加し、排泄が早まることで血中濃度が下がりやすくなってしまいます
 
 状況によっては投与回数を増加させる必要があるかもしれません。その他に、アルブミン結合率が高い薬剤として、セファゾリン、クリンダマイシン、ダプトマイシン等がある様です。本当はこの分野では諸外国の様にβラクタム剤の血中濃度測定とかができると更に違うんでしょうねー。

✓ 低アルブミンのある患者でのセフトリアキソン投与は血中濃度が下がりやすくなるので注意。状況によって頻回投与も検討。

 

 

侵襲性Klebsiella pneumoniae感染症

 実際に経験した訳では無いのですが・・・注意喚起ということで。Klebsiella pneumoniaeの肝膿瘍はしばしばお目にかかりますが、これは台湾を中心としてアジアで増えているとされています。表題の侵襲性Klebsiella pneumoniae感染症ですが、肝膿瘍から眼内炎・髄膜炎などの重篤な血行性播種病変を来す恐ろしい病気です。先日IDATENでも話題になっておりました。
 
 これは、Klebsiella pneumoniaeの強毒株であるK1・K2が関連すると言われ、その中でもmagA・rmp・aerobactinなどの毒性因子が関連するとされています。これらの毒性因子を持っていると、有名な”string sign”が陽性になるとのこと。これは白金耳で触ると5mm以上の粘液意図を認めることです。以前細菌検査室の方に見せてもらいました。

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https://www.mja.com.au/journal/2010/193/9/community-acquired-klebsiella-pneumoniae-liver-abscesses-emerging-diseaseより引用)

 糖尿病がリスクになる事が分かっており、一度眼内炎を合併すると、視力予後はかなり厳しいとのことでした。血液培養からK.pneumoniaeが検出されたり、肝膿瘍でK.pneumoniaeが起因菌と考えられる場合には、髄膜炎・眼内炎には注意しましょうと。
✓ 侵襲性Klebsiella pneumoniae感染では、肝膿瘍・眼内炎・髄膜炎に注意!