栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:引継(ハンドオフ)システム導入後の医療ミスへの影響

引継(ハンドオフ)システム導入後の医療ミスへの影響
Changes in medical errors after implementation of a Handoff program*1

N Engl J Med 371;19 nejm.org November 6, 2014

【背景】
 ミスコミュニケーションが重大な医療過誤の原因と言われている。患者ケアに関する情報の引継(ハンドオフ)を改善する為にデザインされたプログラムを評価した多施設共同研究のデータは少ない。

【方法】
 9カ所の病院でレジデントのハンドオフ改善プログラムに関する前向き介入研究を実施。医療過誤や予防可能な有害事象、ミスコミュニケーションの発生率、レジデントの業務の流れを評価した。
 介入は、
①口頭および書面での引継を標準化する為の記憶法を教えたり
②ハンドオフとコミュニケーションのトレーニング
③能力開発および観察プログラム
④プログラムを持続する為のキャンペーン
 などの多角的なもので、前後の評価期間の間に6ヶ月間を使って行われた。過誤の発生率は、看護師による積極的監視によって評価、看護師がスクリーニングしたのを上級医2人が評価する方法だった。ハンドオフは、引継文書および口頭引継時の録音内容を検討して評価した。業務の流れは、時間動作観察によって評価。プライマリアウトカムは、医療過誤と予防可能な有害事象の2項目とした。

【結果】
 患者10740人の入院において、介入前期間(6ヶ月)から介入後期間(6ヶ月)まで観察したところ、
医療過誤の発生率は23%低下し(入院100件あたり24.5 vs 18.8,p<0.001)
②予防可能な有害事象の発生率は30%低下した(入院100件あたり4.7 vs 3.3,p<0.001)
施設毎の分析では、9病院中6病院で、医療過誤有意な減少が認められた。施設全体では、引継文書および引継時の口頭コミュニケーションに、あらかじめ規定した重要項目(書面9項目、口頭5項目の全14項目を評価)が全て含まれた頻度は有意に上昇(27%→72%)した。介入前から介入後までで口頭での引継時間は、患者一人あたり2.4分 vs 2.5分と有意差は認めず、患者及び家族との接触時間やコンピュータ使用時間などのレジデントの業務の流れに有意な変化は認められなかった。

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(文献より引用)


【結論】
 ハンドオフの導入は、医療過誤および予防可能な有害事象の減少と、コミュニケーションの改善に関連し、業務の流れへの悪影響は認められなかった。
 
【批判的吟味】
・過去にハンドオフシステムの導入で引継によるmedical errorを減らしたというコホート研究が一つあり、それを検証した多施設での検討でした。
・ハンドオフ制度に参加するように、9つの小児病院で参加者を募り、小児レジデント全体の95%が参加しています。ただ、参加のinsentiveとしてレジデントはお金・ギフトをもらっています。こうゆうのにバイアスが入り込む要因があるかもしれません。
・評価方法として、看護師が毎日カルテチェックし、医療エラーや予防可能な有害事象をpick upしています。この看護師さん優秀。で、そのpick upされたものを2人の上級医が判断するのですが、この2人の間での有害事象・エラーの判定が一致率が悪く、κ値 0.47(95%CI:0.44-0.50)でした。
・こうゆうのを検証するstudyって面白いなと思いました。何でもきちんと検証して導入による業務時間への影響を評価してから全体に・・・という視点が素晴らしいです。
・実際に評価されたハンドオフの内容も大変勉強になりました。内容は↓

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(文献より引用)

【個人的な意見】
 ハンドオフすごいですね。成熟したチームになっていくとできるのかなと思っていましたが、レジデントでハンドオフ内容をきちんと指導すれば、かなりクオリティが高く医療事故や有害事象を予防できるような引継が出来るようになるんですね。未だ夜間主治医オンコールの病院も多く、当院も十分なオンコール体制とはいえず、見習って改善していこうと思わされました。やることたくさん!

 

✓ 良質なハンドオフは、医療事故や有害事象を予防できる。教育が重要。