栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 反復性CDIへのカプセル化便投与/外科医の進化/早期RA寛解後エンブレル減量/韓国での甲状腺腫瘍のOverdiagnosis/CTによる肺癌検診

■JAMA■

反復性CDIへのカプセル化便投与 
Oral,Capsulized,Frozen Fecal Microbiota transplantation for relapsing Clostridium difficile infection*1

 さあいよいよ実臨床に登場しつつある便治療。今回は粉末大変だからカプセル化してみたよ!というMGHのopen labelのpilot studyです。preliminary feasibility studyと記載されており、今後の大規模検証の予備的試験です。

 近年、CDIに対する標準治療は治療失敗が増えており、初回の再発率は30%、2回以上再発した場合には再発率60%と難治化することが報告されています。そんな中、近年facal microbial transplantation(FMT)治療が脚光を集めています。過去の研究では、患者の親族由来の採取直後の便を用いていました。凍結して経鼻胃管から腸管へ投与する方法などがありましたが、投与方法が困難であるという問題点がありました。今回カプセル化した経緯ですが、便の保存が粉末状だと半日しか持たないこと、投与方法が難しい事から、凍結粉末化したものをカプセル化するという、より臨床に即した投与方法を検討しています。

興味があるか分かりませんが、カプセル化製剤の作り方
①採取した便を生理食塩水で懸濁。
②ふるいにかけて遠心分離して再懸濁。
③10%グリセロールを加えて、耐酸性カプセルに分注。
④さらに耐酸性カプセルをかぶせて2重にしてー80℃で冷凍保存。
⑤その後、4週間は保管してHIVHBVHCVなどの感染症検査は陰性である事を確認して完成!

なんだか3分間クッキングみたい(笑)

 対象患者は、活動性CDIでかつ①3回以上の軽症〜中等症のCDIでVCM tapering療法を失敗 または ②重症CDI2回の患者を対象としています。便はボランティアの健常人(18-50歳)から投与された便を冷凍保存(−80℃)・カプセル化しています。CDIの診断基準ですが、3回/日以上の軟便がある事、CD toxin陽性もしくはCD PCR陽性としています。治療内容は15カプセルを2日間投与としています。プライマリアウトカムは、①安全性、②8週経過時点での寛解かつ再発なしとしています。

 患者は平均64歳で過去に3回はCDIを経験している患者さんで、全例で20例でした。FMTに伴う有害事象は観察されませんでした。2日のFMTで14人の患者が72時間以内に下痢症状の改善を認めました。症状が持続した6人については、平均して7日後に再度FMTを施行し、5人で下痢症状の改善を認めています。再発症例には2回まで投与というレジメンで下痢解消率90%というかなり良い治療効果になりました。

 ついに便を飲む時代突入。今後長期的な安全性と有効性を評価する大規模研究が必要ですね。あと、これ個人の便由来なので”最強の便”みたいなブランドが出てこないかなあ?というのと、便も生ものですから提供者の体調によって治療効果が異ならないかなあ?というのが疑問。あとはやはり潜在的な感染症伝播リスクですかねえ。もう少し分子レベルで治療効果のある成分の単離・抽出に成功すれば良いのになあ・・・

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http://media.cleveland.com/health_impact/photo/12064345-large.jpgより引用)

✓ 難治性CDIには便置換療法は良好でカプセル化が進んでいる。

 

外科医の進化 
The Evolution of surgery The story of "Two Poems"*2

 今年はアメリカ外科学会総会100回記念。かつて外科医はtype A personalityを持った患者から尊敬され、見て学べ的なプラミッド体制を持ったプロフェッショナルでした・・・と始まっています。このtype A personalityについては、http://square.umin.ac.jp/imkevyn/medical/heartvas/type_a/whatis_a_pattern.htmlに解説されていました。まあ、日本で言う「体育会系」ってやつに近いかもしれません。

 ただ、この何十年かで様々な変化が起こっています。具体的には

①女医 ↑
②勤務時間 ↓
③開腹 ↓
④患者からの信頼 ↓
⑤入院期間 ↓

 が起こっていると言われています。これを本稿では、”TWO POEMS”として考察しています。以下各項目を解説付きでご紹介。

  • Teamwork:個人主義からチームへのシフト。これは複数医師というだけでなくNPさんや薬剤師、他の医療者を巻き込むことで、患者安全と治療効果が期待できるとする変化で、実際に再入院率を下げたというデータもある様です。

  • Work Hours:2003年時点では米国では80時間/週と言われていた勤務時間が、QOLを重視し、オンコールを減らして夜勤を作るというプログラムが増えてきているのだそうです。そしてhand off(今回別稿で取り上げます)の充実、ケアの継続が課題になってきています。

  • Outcomes:これは最近流行の情報開示で、過去25年間で外科手術の成績がオープンになってきているのだそうです。そのうち、個人別の手術成績(30日死亡や合併症率)などの開示が求められる可能性も出ているのだとか。シビアだなあ・・・

  • Patient centered care:当たり前ですが、医療者中心から患者中心の医療へのシフトが見られています。例えば治療アウトカムも手術成功率や死亡率という点ではな、食べられるのか?歩けるのか?家で生活できるのか?仕事に復帰できたのか?日常生活がおくれるのか?といった患者中心のアウトカムへの変容が迫られています。

  • Outpatient:近年手術は外来で行われるようになったり、在院日数の短縮という観点から早期退院が推奨されてきています。入院そのものの害(医療関連感染やせん妄、血栓、ADL低下等)にも注意を払わなくてはいけません。

  • Expense:費用対効果も重要な視点の一つです。ただ、今まではこの部分の議論を避けてきた嫌いがあります。画像検査・外科的手術デバイス・術後管理などはそれぞれ大変高価です。

  • Minimally invasive:これは技術革新の結果です。開腹手術からより低侵襲な腹腔鏡手術への転換が進んでいます。侵襲度を少なく疼痛も軽減し、入院期間を短縮することが可能です。

  • Simulation and education:シュミレーション教育は外科領域では多く取り入れられる、パイロットのシュミレーターなどを元に開発されています。特に腹腔鏡分野などでは多く取り入れられています。また、コミュニケーションスキルや倫理にも力を入れる必要があります。

 まあ、外科だけではないですねー。うちらも頑張りましょう。それにしても外科医はやっぱりすごいです。研修医時代に言われた「内科医はどんなに頑張ったって開腹できない」ってのはちょっと響くものがありましたねえ。


✓ 外科医は進化しており、内容は"TWO POEMS"


■NEJM■

早期RA寛解後エンブレル減量 
Sustained remission with Etanercept tapering in early rheumatoid arthritis*3

 関節リウマチは生物学的製剤の登場がパラダイムシフトでしたが、その後如何に安全に止められるかが一つの話題になっています。今回、その生物製剤中止に関するEtanerceptのstudyが出ていました。

 対象患者は18歳以上の関節リウマチ患者(分類基準は1987年のACR criteriaです)で、発症して12ヶ月以内の患者。DAS-28はmoderate-severeで、MTX・Bioの使用歴の無い患者さんに対して、まずEtanaercept 50mg+MTXで初期治療を開始し、DAS-28で寛解状態に達した患者さんをinclusionしました。介入として、
①Etanaercept 25mg+MTXを併用の漸減群
②EtanerceptはプラセボとしてMTXを併用する群
③両方プラセボ
 で比較しています。プライマリアウトカムは39週時点での寛解率。そして、39週以降は全ての治療をやめて65週まで経過観察としました。COIはエンブレルⓇを販売しているファイザーですね。

 さて、Phase1はOpen labelでまずはETN 50mg+MTXで寛解までもっていくphase。この部分で306人から193人まで患者が減りました。約2/3は上記レジメンで寛解まで持っていけたということになります。ここから二重盲検としています。平均年齢50歳、発症平均6ヶ月で、ACPAやRFの陽性率は60%でした。低いなあ、早期だからか?

 で、結果ですが、39週時点で寛解維持出来たのは、①63%②40%③23%で、有意にcombination治療群の方が寛解率が高いという結果でした。その後治療を中止し65週までfollowすると、更に寛解率は低下し①44%②29%③23%となります。レントゲンでの骨破壊には有意差は無かったとのことでした。

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(文献より引用)

 悩ましいですね。やっぱり止めるとそれなりに寛解維持ができなくなるわけですね。残念だったのは治療継続群はどうだったのか?という部分でしょうか。できればこれをコントロールにしてもらえると良かったですよね。中止で寛解率が減衰することは間違いないので、まだ安全に中止できるとは言えない訳ですが、これを見たファイザーさんはニンマリという所なんでしょうか(笑)?まだまだ今後の検証が必要ですね。

✓ 早期関節リウマチ寛解後にエタネルセプトを中止すると寛解率は1年後には40%前後。

 

韓国での甲状腺腫瘍のOverdiagnosis 
Korea's thyroid-Cancer "Epidemic" -Screening and overdiagnosis*4

 韓国では、Statics KoreaとKorean Central Cancer registryという大きなレジストリーがあるんだそうで。で、韓国政府は1999年に国として癌スクリーニングを開始したのですが、当初甲状腺癌は含まれていませんでした。現在も義務では無いのですが、商業化した健診マーケットが甲状腺エコーによるスクリーニングを勧めているという事態があるのだそうです。先ほどのレジストリーによると甲状腺癌の報告は1990年以降徐々に増加していましたが、2011年には1993年と比較して13倍まで増加してしまいました。そして、最近見慣れたこのグラフですが、疾患の著明な増加にも関わらず死亡率は全く変化がありません。これはoverdiagnosisの指標として知られています。ちなみに甲状腺癌の中身はほとんどが乳頭癌。

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(文献より引用)

 韓国では、現在甲状腺癌が最も一般的な癌の一つになりました。2011年には一年間で4万人の方が甲状腺癌と診断されています。死亡する患者の約100倍ということになります。微小癌も問題になっており、1cm以下の微小癌が1995年には14%だったのが、10年後には56%を占めるまでになりました。ガイドラインでも0.5cm以下の病変に対する手術を勧めていませんが、現在1/4の患者がこの0.5cm以下の微小癌です。費用対効果や手術合併症(副甲状腺機能低下や声帯麻痺等)、手術後の甲状腺置換療法や精神的負担なども考慮すると、スクリーニングが適している癌とは言えないのではないか?と。この韓国のスクリーニングの結果は他国にとってとても重要で、現在でもフランス・イタリア・クロアチアチェコ連邦・イスラエル・中国・オーストラリア・カナダ・アメリカなど多くの国々で甲状腺癌が増えていると指摘されています。これは"epidemic"だと皮肉っていました。癌の早期発見の問題を、医療者のみならず患者さんとも共有できるようになると良いですね。

✓ 韓国では甲状腺癌のOverdiagnosisが増えており、安易なスクリーニングに警鐘!

 

CTによる肺癌検診 
Lung-Cancer screening with low-dose computed tomography*5

 またまた検診の話題。こちらは肺癌検診です。肺癌は5年生存率が18%と長期予後が不良であり、早期診断・早期治療が重要であると言われています。一方、胸部X線での肺癌スクリーニングは肺癌の予後を変えないことは周知の事実と思います。で、昨今注目を浴びているのが胸部CTスクリーニングなわけです。ただ、CTスクリーニングのstudyはコホート研究やstudyの異質性が高くバイアスが多い為、正確な効果の見積もりは今後RCTで行いましょうというのが流れの様です。

 米国の有名なNLSTというCTスクリーニングでは、55-74歳の5万人の30PackYear以上の喫煙者もしくは禁煙後15年以内の患者をinclusionして、年1回のCT検診と年1回のレントゲン検診を比較して、肺癌死亡を20%減らしたというのが画期的な研究でした。ただ、この検診では3回のCTで全体の40%が検査陽性となり、そのうち95%以上が偽陽性だったという事実もあります。これまで欧州の複数の小規模RCTではCT検診の効果はinconclusiveとされています。現在NELSONという大規模RCTが行われており、これの結果待ちということでしょうか。また、今回の中で話題になっていたのは検診対象年齢です。NLSTの結果を受ければ55-74歳が対象のはずなのですが、ガイドラインはなぜか55-80歳に対象年齢を拡大しています。この「75-80歳」は何なんだ?という話。
 まあ、何にせよとりあえず「禁煙が先」じゃない?というのも大事なポイントですね。

 

✓ CTによる肺癌検診の効果は現在検証中だが、スクリーニング対象を明確にするのと偽陽性に注意。

 

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http://www.chestnet.org/lungcancerより引用)