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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

メモ:甲状腺機能低下と妊婦さん

メモ 内分泌 産婦

 先日とある機会に、橋本病患者さんが妊娠した場合のTSH目標値についての話題が出たので調べてみました。要は、通常のTSH基準よりも厳しく設定する必要があるか?というのがポイントです。

 基本的に正常妊娠時には、胎盤が産生するhCGがTSHに類似して一過性に甲状腺機能を亢進させTSHを下げるとされています。このため、注意しなくてはいけないのは、妊婦さんのTSHの正常範囲は健常人の正常範囲とは異なるということです!これ重要。

 妊娠中の甲状腺機能低下症には以下の2種類があります。
①Overt hypothyroidism:TSH↑、fT4↓の状態で、全妊婦の0.3-0.5%程度。
②Subclinical hypothyroidism:TSH↑、fT4正常の状態で、全妊婦の2.0-2.5%程度。
これらの甲状腺機能低下症は以下の合併症のリスクになるとされています。
●子癇や妊娠高血圧
胎盤早期剥離
●早期産(32週前以前)
●低出生体重
●帝王切開率の増加
●周産期の合併症率と死亡率
●神経精神障害認知障害
●産後出血


 このように妊娠中の甲状腺機能低下症はリスクが高いわけですが、全妊婦スクリーニングの是非はcontroversyで、既往歴のある方や疑わしい症状がある場合に検査すべきとされています。

 さて、ここからが本題。TSH上昇の基準です。これが健常人と異なるのが問題なわけです。以下に甲状腺機能低下の基準を示してみます。

①一般的に健常人:TSH>5.0μIU/ml
②妊娠第1Trimester:TSH>2.5μIU/ml
③妊娠第2〜3Trimester:TSH>3.0μIU/ml

なので、通常なら正常とされているTSH 2.5〜5.0の妊婦さんも治療対象になります。これを知らないで正常範囲ですよ〜と説明しないように注意が必要です。例えば、もともと橋本病のある妊婦さんでは多くの場合、チラージンⓇ補充は50%程度増量する必要があるのだそうです。

 

妊娠と甲状腺機能異常症―Q&A

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