栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:ビタミンB12欠乏症/離脱せん妄/ループス腎炎

MKSAPまとめです−。
相変わらず勉強になります・・・

ビタミンB12欠乏症 Cobalamin deficiency

❶症例
  87歳女性が6ヶ月前からの下肢の痺れと突っ張る感じで受診。食事は通常食でアルコールは摂取せず。身体所見では、結膜貧血と黄疸があり、下肢振動覚の低下あり。爪は正常。採血では、Hb 6.9g/dL、PLT 4.9/μl、T-Bil 4.9mg/dL、LDH 520U/L、メチルマロン酸 上昇、ホモシステイン 上昇、ビタミンB12 224pg/ml。末梢血スメアはこれ。さて治療は?

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(本文より引用)

 ビタミンB12欠乏症
 ビタミンB12コバラミン)欠乏は無効造血を起こし、血清LDHや総Bil値が上昇する。無効造血に伴い、末梢血スメアは典型的には楕円赤血球を来し、赤血球塩基性斑点や好中球過分葉を来す。写真は好中球過分葉で、定義としては、5分葉以上の分葉が見られ、この所見は巨赤芽球性貧血に非常に特異的な所見である。
 神経学的所見は、早期には振動覚の低下や感覚障害、進行すると位置覚低下、筋力低下、痙縮、対麻痺、膀胱直腸障害を来す。
 原因として多いものは、高齢者では吸収不良で、いわゆる”悪性貧血”と呼べるのは萎縮性胃炎に伴うものだけである。

 ❸診断で注意することは?
 診断においては、ビタミンB12値は正常下限にある事もあり、ビタミンB12値のみならず、ホモシステイン値やメチルマロン酸値の上昇も確認する必要がある。

 ❹治療は?
 治療は一般的には内服で高容量(1000-2000μg/日)投与である。経静脈的投与と比較して安価で投与しやすく、効果は同等とされている。

 ❺鑑別疾患
 葉酸欠乏は末梢血スメアはビタミンB12欠乏と類似しているが、ホモシステインのみ上昇が鑑別点である。また、葉酸欠乏は神経症状を来さない。

Key Point
✓ 経口ビタミンB12コバラミン)投与は、ビタミンB12欠乏症の治療として適切。

Andrès E, Vogel T, Federici L, Zimmer J, Kaltenbach G. Update on oral cyanocobalamin (vitamin B12) treatment in elderly patients. Drugs Aging. 2008;25(11):927-932. PMID: 18947260

 

 

アルコール離脱 Alcohol withdrawal

❶症例
  39歳男性が興奮状態で病院に搬送。意識障害と振戦があり、過去にアルコール性肝炎と診断されている。身体所見では、体温38.8℃、脈拍130回/分、呼吸数 30回/分で、結膜黄染あり。腹部所見は腹水程度で、血便なし。興奮して見当識障害があり、注意を維持出来ず、幻視の訴えがあった。看護師が財布を取ったと訴えている。発汗と振戦があり、アステリキシスは認めず、その他の神経所見は異常なし。

 ❷離脱せん妄とは?
 離脱せん妄は、世界的にも主にアルコール離脱症候群に用いられる言葉である。症状は一般的にはアルコール中止後48-96時間程度で発症し、2週間程度持続する可能性がある。典型的には夜悪化し、意識変容、見当識障害、注意障害、全般性失語、認知機能低下や幻覚(主に幻視)や妄想が特徴的な症状である。痙攣も起き得る。
 急速に致死的な経過を辿ることもあり、治療は適切かつ積極的に行うべきである。

 ❸治療は?
 ベンゾジアゼピンが適切な治療法である。海外ではロラゼパム治療が使用されることが多い。ハロペリドールセレネースⓇ)等のmajor系薬剤は、一般的なせん妄には用いられるが、離脱せん妄の場合には不適切である。というのもmejor系薬剤は、痙攣閾値を下げたり、離脱症候群の症状をマスクして重症度評価を困難にするという点が問題となる。

 Key Point
✓ 離脱せん妄は、意識変容、見当識障害、注意障害、全般性失語、認知機能低下、幻覚と妄想が特徴的である

Amato L, Minozzi S, Davoli M. Efficacy and safety of pharmacological interventions for the treatment of the Alcohol Withdrawal Syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2011;(6):CD008537. PMID: 21678378


 

 

ループス腎炎 Lupus nephritis

❶症例
 23歳男性が定期通院で来院。1ヶ月前にSLEと診断され、PSL 20mg/日で治療開始された。関節痛と腫脹は部分的に改善していたが、受診時には、口腔内潰瘍・足関節腫脹・倦怠感・嘔気・微熱を訴えていた。身体所見では、体温 38.1℃、脈拍 102回/分で、頬部の蝶形紅斑があり、硬口蓋に1cm程度の口腔内潰瘍を認めた。筋骨格系診察では、MP関節・PIP関節の関節痛と膝関節の滑液包炎が疑われ、両側足関節部の浮腫を認めた。採血では、Hb 9.1g/dL、ESR 102mm/h、C3/C4低下、Cr値 1.1mg/dL、抗核抗体 640倍、ds-DNA抗体陽性。尿検査では、尿蛋白3+、赤血球円柱なし、24時間蓄尿蛋白 1120mg/24hrだった。PSL 60mg/日を開始後に行うべきは何か?

 ❷ループス腎炎を疑う所見は?
 増殖性ループス腎炎を疑う所見は、新規発症の高血圧や浮腫、高力価のds-DNA抗体値、低補体血症、蛋白尿、血尿、赤血球円柱・顆粒球円柱である。この様な所見が診られる患者では積極的に腎生検を行うべきである。腎生検では、International Society of Neurology and Renal Pathology Society による国際分類で、ループス腎症の活動度やクラス・予後を予測することが重要である。

 ❸ループス腎症の治療は?
 迅速に腎生検を行う事で、ステロイド治療に加えて、免疫抑制剤使用の適応を検討することができる。追加する免疫抑制剤としては、シクロホスファミド(エンドキサンⓇ)やミコフェノール酸モフェチル(セルセプトⓇ)がある。免疫抑制剤の併用は腎予後を改善する。
 例えば、腎生検でびまん性増殖性ループス腎炎の診断がついた場合には、多くの臨床医は6ヶ月のシクロホスファミド投与後にアザチオプリンかミコフェノール酸モフェチルで維持療法する。
 ミコフェノール酸モフェチルも第一選択として、シクロホスファミドの代替薬になり得るが、長期予後のデータは不足している。

Key Point
✓ 増殖性ループス腎炎が疑われる患者では迅速な腎生検後に積極的な治療を行うべきである。

Seshan SV, Jennette JC. Renal disease in systemic lupus erythematosus with emphasis on classification of lupus glomerulonephritis: advances and implications. Arch Pathol Lab Med. 2009;133(2):233-248. PMID: 19195967

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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