栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:アミロイドアンギオパチー/AIPのステロイド治療/前立腺膿瘍のドレナージ

アミロイドアンギオパチー Cerebral amyloid angiopathy

 MRI T2*を見ることが多くなると、amyloid angiopathyを疑う画像をみることが時折ありますね。カンファレンスで出たので少しまとめておきます。


 脳アミロイドアンギオパチー(Cerebral amyloid angiopathy:CAA)は、脳血管へのアミロイド沈着によって引き起こる疾患病態で、巨舌や末梢神経障害などを呈する全身型のアミロイドーシスとの関連はありません。年齢と共に頻度が増加しますが、60歳未満で見られることは稀です。
 CAAは孤発性で、Alzheimer型認知症との関連が言われています。CAAはしばしば皮質下出血の原因(20-40%程度)になることが有名です。高血圧性脳出血は一般的には、被殻視床・橋に多いことが鑑別点です。

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(Uptodateより引用)

 それ以外の症状では、microhemorrhageやヘモジデローシス、一過性の神経脱落症状、認知機能障害などが症状として言われています。一過性の神経脱落症状は、頻度は多くないものの、時間的・空間的に多発し、症状は瞬間的な神経脱落症状で見逃されやすいのが難点です。TIAとの鑑別は、治療上も重要であり、責任血管の狭窄の有無、MRI T2*などでの微小出血のrule out等で鑑別します。TIAと誤診して抗血小板薬や抗凝固薬を出すことは、CAAの出血リスクを増やすことが危惧され注意が必要と言われているんだそうです。また、外傷の無い脳表に限局するくも膜下出血でもやはりCAAを考えた方が良いのだと。これは髄膜のアミロイド血管床が原因なんだそうです。

  診断としては、Boston criteriaが有名です。

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Linn J, Halpin A, Demaerel P, et al. Prevalence of superficial siderosis in patients with cerebral amyloid angiopathy. Neurology 2010; 74:1346.

 上記の基準で上の2つは病理診断ありきになってしまいます。よって臨床診断が出来るのは、probable CAAかpossible CAAになります。

 臨床症状+MRI or CT所見が疑われる場合・・・
 ①多発する脳葉・皮質・皮質下出血(小脳はOK)※possibleは単発
 ②55歳以上
 ③他の出血原因なし

を参考にしましょうと。MRI T2*が重要です。

✓ アミロイドアンギオパチーは、比較的Commonな疾患。全体像を把握しておく。

 

 

AIPのステロイド治療 Glucocorticoid therapy for AIP

 AIPのステロイド治療についての話題が出ていました。AIPの診断がついた場合には、高容量全身性ステロイド療法を行う事が多いわけですが、その根拠となる研究は小さなcase seriesがほとんどで、かつそのレジメンはcase毎に様々であることが問題点だとされています。
 
例えば・・・

①最も大きい研究が29症例の症例報告で、ステロイド投与群の生存率が45%、ステロイド非投与群が33%とされていますが、ステロイドの容量は記載されていません
Mayo Clin Proc. 1990;65(12):1538.
②早期ステロイドパルス療法によって8例中7例が生存したという報告あり。ただし、これは人工呼吸器管理にもなっており、ステロイドの効果と呼べるかは疑問。コントロールもなし。
Chest. 2006;129(3):753.
③平均240mg mPSL投与された症例報告シリーズで7/8例が生存したという報告もあり。
Chest. 2003;124(2):554.
④一方で、mPSL 8mg/kg/日を投与した12症例全例が亡くなったという報告もあり。
Anesth Analg. 2009;108(1):232.


 ステロイド治療の継続については、数日高容量を使用後に、数週間から数ヶ月をかけて漸減していくことが推奨されているものの根拠は明確では無く、tapering scheduleも決まったものではありません。この辺りはexpert opinion大事ですね。


✓ AIPのステロイド治療の根拠は乏しい。

 

 

前立腺膿瘍のドレナージ Drainage for prostate abscess

 前立腺膿瘍と遭遇する機会がありました。なかなかrareな病態なのでこの際まとめてみます。主に下記のreviewからの抜粋です。
Arch Ital Urol Androl. 2013 Sep 26;85(3):154-6. doi: 10.4081/aiua.2013.3.154.

 前立腺膿瘍の頻度は、近年の抗菌薬治療時代では、前立腺関連症状を呈した患者の0.5-2.5%程度と報告されています。発症年齢は新生児から高齢者までどの年代に起こっても良いとされていますが、頻度が多いのは50-60代です。膿瘍化へと伸展するリスク因子としては、糖尿病・排尿障害・尿道カテーテル留置・前立腺生検・慢性腎不全・血液透析患者・慢性肝障害・HIV感染症が挙げられています。

 起因菌として最も多いのが、E.coliや腸内細菌属ですが、免疫不全患者では、結核・真菌・嫌気性菌なども考慮すべきであり、稀ではありますが、結構由来でS.aureusが起因菌だったという症例報告もあります。

 臨床症状は、排尿障害や切迫感、頻尿が96%の患者で見られ、発熱は30-72%程度、会陰部痛は20%程度、尿閉は1/3程度とされています。最も典型的な症状は直腸診での前立腺の圧痛ですが、所見自体は16-88%程度でしか見られないとのこと。治療が遅れたり不適切だったりすると、膿瘍破裂や敗血症、膀胱・子宮・会陰・直腸に瘻孔形成が出ることがあり、死亡率は3-16%程度と報告されています。

 治療は経静脈的広域抗菌薬投与と膿瘍ドレナージです。疾患が稀な為、ガイドラインは策定されておらず、推奨もcase reportなどが中心。径1cm以下の単一膿瘍は抗菌薬点滴のみで治療可能ですが、一般的には外科的治療が必要です。ドレナージは多くは経超音波的に直腸もしくは会陰経由で行われる事が多いです。局所麻酔で施行可能で、合併症は少なく繰り返し施行可能とされています。放射線科でCTガイド下で行う事もあるみたいですね。膿瘍起因菌はしばしば尿培養結果と異なるため、膿瘍の穿刺培養は重要です。ドレナージチューブを留置するかは専門家の間でも意見が分かれるとのこと。

✓ 前立腺膿瘍は診断・治療が遅れたり不適切になりがちな疾患。治療は抗菌薬+膿瘍ドレナージ。