栃木県の総合内科医のブログ

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論文:2型糖尿病患者のHbA1c・収縮期血圧・LDLコレステロールのコントロール目標と死亡率

2型糖尿病患者のHbA1c収縮期血圧・LDLコレステロールのコントロール目標と死亡率
All-cause mortality in patients with type 2 diabetes in association with achieved hemoglobin A1c,Systolic blood pressure, and Low-density lipoprotein cholesterol levels *1

PLoS One. 2014 Oct 27;9(10):e109501. doi: 10.1371/journal.pone.0109501. eCollection 2014.


【背景】
 2型糖尿病患者でも最も死亡率の低い、HbA1c値、収縮期血圧、LDLコレステロールを明らかにする。

【方法】
 2002-2010年に台湾の台北市極東記念病院(Far-Eastern Memorial Hospital)の12643人の18歳以上の2型糖尿病患者の後ろ向きコホート研究。患者はICD-9の2型糖尿病の病名がついている外来患者で、経口血糖降下薬やインスリンの使用が6ヶ月以上使用歴のある患者が対象。HbA1c値・収縮期血圧・LDLコレステロール値は平均値としてデータ採取され、死亡データはTaiwan National Register of Deathsというデータベースを用いて患者照会された。

【結果】
 結果は、HbA1c 7.0-8.0%、収縮期血圧 130-140mmHg、LDL-C 100-130mg/dLが最も良い結果でU字曲線を描いていた。死亡リスクは、HbA1c・sBP・LDL-Cが高くなっても低くなっても上昇していた。全体と比較すると、
HbA1c 7.0-8.0% HR 0.69(0.62-0.77)
収縮期血圧 130-140mmHg HR 0.80(0.72-0.90)
・LDL-C 100-130mg/dL HR 0.68(0.61-0.75)
だった。

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(文献より引用)

【結論】
 今回の2型糖尿病コホートでは、HbA1c 7.0-8.0%、収縮期血圧 130-140mmHg、LDL-C 100-130mg/dLが最も低い死亡率だった。今後の研究での確認と詳細な機序の解明が必要である。

【批判的吟味】
・follow up期間は5年程度で、全体として1278人が死亡しており、イベント発生は比較的多いコホートでした。
・台湾の2型糖尿病に対する処方実態を垣間見る結果となりましたが、SU剤 76.7%、メトホルミン 75.7%、インスリン 15.3%、チアゾリジン 14.0%でした。DPP-4は0.6%とかなり少ないですが、2002-2010年には使用されていなかったかもしれません。
・サブ解析ではありますが、インスリン使用者に限ると8.0-9.0%コントロール群が最も死亡率が低いという結果でした。
・限界としては、交絡因子の補正が十分とは言えず、喫煙・BMI・心疾患の家族歴は未補正です。また、死因を明らかにしていない為、心疾患をおこしたかどうかなどは不明でした。

【個人的な意見】
 それにしても見事なU字曲線。糖尿病罹患歴などが良く分からなかったのですが、やはり診断早期からの介入で無い限り、tight controlのメリットは少なそうです。脂質はlower is betterの流れは世界的にありますが、同じ心疾患の少ない人種である台湾のデータでU字曲線という時点で何でもかんでもスタチンという流れは微妙かもしれません。まあ、スタチン使用者は17.5%しかいないというのもアジアっぽいですが。今後の質の高い前向きコホート研究やRCTに期待ですね。

✓ アジア人の2型糖尿病患者では、HbA1c 7.0-8.0%、収縮期血圧 130-140mmHg、LDL-C 100-130mg/dLが最も低い死亡率だった