栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 適切な癌スクリーニング方法/医者の破壊的行為/腹部大動脈瘤レビュー/DES留置後のDAPT12ヶ月 vs 30ヶ月/アルコール離脱レビュー

■JAMA■

適切な癌スクリーニング方法 
Smarter screening for cancer Possibilities and challenges of personalization*1

 現在癌スクリーニングの基本はマス・スクリーニングになっていますが、今後重要視されてくるとしたら個別化です。マス・スクリーニングの問題点としてスクリーニングによる害(Overdiagnosis等)と費用対効果を考慮する必要があり、今後はよりリスクの高い群への絞り込みを行い、有害事象を減らして効果を高めるスクリーニングを目指していく必要があります。

 たとえば、今の大腸癌のスクリーニングだと75歳までが対象ですが、75歳で複数の疾患を抱えている人と、76歳で全く既往歴のない患者では、スクリーニングによって得られる利益が違います。寿命を考慮すると76歳でも基礎疾患のない人の方が恩恵を受けるかもしれません。ところが、米国では、75歳と76歳ではスクリーニングを受けている人の割合が2倍以上違うことが分かっています。ガイドラインの推奨がそのまま保険適応になる米国ならではの割り切り方だと思いますが、一方で本当にスクリーニングが目指しているメリットの恩恵を受けられる患者群が抽出される方法にはなっていません。

 今後keyになるとすれば、①癌発症リスク、②寿命、③スクリーニング効果あたりを考慮していく必要があります。そして、この様なレベルの癌スクリーニングが行われていく為には、患者レベルでは、スクリーニングの効果と害をきちんと理解すること、医者レベルでは、癌発症リスクの見積もりと患者への説明、社会レベルでは、個別化をきちんと評価していく保険制度などの構築が必要になってきます。

✓ 癌スクリーニングはマス・スクリーニングから個別化へ


医者の破壊的行為 
Disruptive behaviors among physicians*2

 disruptive  behaviorsをなんと訳すか迷いながら破壊的行為としましたが、要するに医者の問題行動的なものに焦点を絞ったVIEWPOINTでした。

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http://cdn2.hubspot.net/hub/155170/file-18022987-jpg/images/dr_yelling.jpgより引用)

 30年前に「disruptive physician」という記載が初めて医学論文に記載され、その後この手の問題が徐々に増えてきているのだそうです。どの程度増えているかの評価は難しいのですが、2006年に行われた調査では3-5%の医者にdisruptiveな行為が認められたのだそうです。まあそもそもdisruptiveって何を指しているかというと、Overt verbal anger(怒りをあらわにする)、physical threats(身体的な脅し)、非協力的、仕事しないなどなんだそうで。こんな行為があると患者・患者家族・医療者とのコミュニケーションに大きな問題を来します!ってそりゃあそうだ。

 2008年に40施設の医師・看護師に対する国民調査が行われ、disruptiveな行為は68%で実際の有害事象に繋がり、71%でmedical error、51%で安全性に関連すると解答されています。2011年の医師に対する調査では、71%の医師が最近1ヶ月以内にdisruptiveな行為を目撃した、26%が過去にdisruptiveな行為をしたことがあると応えています。

 施設の管理者はこういった行為を定期的にモニターする必要があり、そのシステム構築と介入が重要になってきます。また、基本的にはdisruptiveな行為は職場環境ストレスが関与していることが多く、職場のシステム問題へのreactionとして捉えるべきともされており、システムの課題を探し修正していくことも重要です。この辺りはM&M的な視点ですね。

✓ disruptiveな行為はチーム医療の観点からも医療安全の観点からも不健全であり、職場環境調整も含めた適切な対応が必要である



■NEJM■

腹部大動脈瘤レビュー 
Abdominal aortic aneurysms*3

 腹部大動脈瘤のレビューです。ざっくりとまとめていきます。腹部大動脈瘤の定義は通常正常血管径の50%以上を超えた拡張がある場合とされているが、一般的には3cm以上で区切ることも多いです。成長速度は個人差が大きく、破裂すると死亡率が高い疾病である為、原則破裂前に治療することが重要になります。

 部位としては、腎動脈を境にsuprarenal、pararenal、infrarenalに分類され、infrarenalと呼ばれる腎動脈分岐部以降のものが85%を占めています。大動脈瘤の原因として、以前は動脈硬化と考えられていましたが、現在では動脈壁の3層構造の変性変化で起こるのではないかと言われています。リスク因子として、男性4倍、家族歴4倍、高齢、タバコが言われており、この中で唯一修正可能な因子は喫煙のみになります。ちなみに、高血圧・脂質異常症は中等度リスクです。また、タバコを止めると大動脈瘤の大きくなる速度が減少したと言う報告はあります。

 スクリーニングについては、メタ解析では65歳以上の男性への腹部超音波検査スクリーニングによって腹部大動脈瘤死亡が減少していることが知られており、イギリスでは65-75歳の男性に一度は腹部超音波検査を受けるように推奨しています。follow up期間としては、径が大きい程大きくなりやすいことから、径によって変わっており、3-3.4cmは3年おき、3.5-4.4cmは1年おき、4.5-5.4cmは6ヶ月おきとされています。

 手術は5.5cmを超えてからとされていて、4.0-5.5cmの段階でのAAAのRCTでは、早期repair群は予後を変えられなかったというnegative dataもあります。破裂率は、5.5cm以下だと1年破裂率≦1.0%ですが、5.5-5.9cmは9.4%/年、6.0-6.9cmは10.2%/年、≧7.0cmは32.5%/年と破裂率はかなり高くなります。

 手術は血管内治療もしくは開腹手術で、解剖学的にどちらの治療も可能なAAAについては、過去のRCTでは血管内治療と手術療法の10年後予後はほとんど同じだったと言われています。IVRは再手術が20-30%、開腹手術でも20%程度は再手術が必要だということです。ただ、その低侵襲さからか最近はどんどん血管内治療の割合が増えてきています。ボトムラインは以下。

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(文献より引用)
 
✓ 腹部大動脈瘤の疫学的データと治療法の進歩を確認する


DES留置後のDAPT12ヶ月 vs 30ヶ月 
Twelve or 30 months of dual antiplatelet therapy after drug-eluting stents*4

 PCI後のDAPTをいつまで続けるか?という問題に新知見。現行のガイドラインでは6-12ヶ月までは推奨されていますが、12ヶ月以降はアスピリンのみになることが多いと思います。ただ、過去の先行研究では、DAPTで継続した方が、心筋梗塞を減らしたなどの報告もあり、長期に継続していくことのメリット・デメリットは十分検証されたとは言えない状況です。

 今回、DES留置されたPCI患者9961人を対象に、PCI後12ヶ月までDAPTを行った後、DAPT30ヶ月継続群と、プラセボアスピリン単剤群を比較し、ステント内血栓症、主要な心血管・脳血管の合併症、全死亡、中等度以上の出血を安全性のアウトカムで行われた大規模RCTです。結構最初の段階で除外されていて、25682人がステントが入り、そのうちベアメタルが2816人あり、更に5261人が適応・除外基準や理由がはっきりしないが参加しなかった人がおり、かなりの数が除外されているとも言えます。

 結果ですが、ステント内血栓有意に減少 HR 0.29(0.17-0.48)、心筋梗塞有意に減少 HR 0.47(0.37-0.61)しましたが、全死亡はむしろ増える傾向 HR 1.36(1.00-1.85)で、特に心疾患や血管関連の死亡は変わらず、Noncardio vascularな要因は増えており、この中で癌患者が多い事が判明しました。また、出血に関しては、GUSTOやBARCといった出血の重症度分類による中等度以上の出血も有意に増える結果でした。

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(文献より引用)

 悩ましいところで、非致死的な血管イベントは減らすけど、出血は増え、全死亡も増える傾向とのこと。少なくとも積極的に期間を延長する効果は乏しい印象です。studyの限界として、最初12ヶ月はDAPT内服が出来ていることから、抗血小板薬に対する副作用が少ない患者層がinclusionされている可能性や、DESの種類がたくさんあるため、一概にまとめてしまっても良いのか?などが限界でしょうか・・・

✓ PCI後のDES内服期間は現状12ヶ月までだが、延長するとステント内血栓心筋梗塞を減らす一方、出血は増え、死亡も増える傾向がある



アルコール離脱レビュー 
Recognition and management of withdrawal deliriumDelirium tremens)*5

 アルコール離脱のreviewが掲載されていました。アルコール関連疾患の罹患率は全人口的にも高く1-2割程度と言われていますが、この問題への診断・治療を得意としている医師は少ないとも割れています。アルコール常飲者の50%はアルコール減量中に何らかの離脱症状がでていると言われています。

 アルコールを摂取すると、脳のGABAが放出され、神経節後のNMDA受容体の活性が低下するが、慢性的にアルコール摂取がおこることで、受容体の反応閾値が上昇し同様の効果がでる為には大量のアルコールが必要になります。この状態でアルコール血中濃度が下がると、GABAが低下しNMDAが過剰に刺激され興奮状態となります。それ以外の症状として、不眠・不安・HR上昇・RR上昇・血圧上昇・振戦・痙攣が起こり、これが離脱症状です。アルコールは半減期が短い為、8時間程度で発症し、72時間後にはピークとなり最大5日程度は続きます。離脱リスクはCIWA-ARスコアで評価しましょう。0-8点はリスク軽度で介入不要、8-15はリスク中等度でBZPで対応可能、15点以上は重度で離脱せん妄・痙攣のリスクで詳細なモニター管理が必要とされています。

 離脱せん妄の定義は、アルコール減量・中止に加えて、変動する注意障害・認知機能低下・幻覚とされています。ただ、診断基準が浸透しておらず、疾患有病率や罹患率も不明ですが、アルコール関連入院の3-5%程度とされています。離脱症状出現後3日程度で離脱せん妄が出るとされており、不整脈や高体温、痙攣重責などを起こすと死亡率は1-4%程度、ただ適切な対応を行う事で死亡を減らすことが出来るとされています。

 治療は、早期診断・早期介入ですが、RCTや前向き研究が少なく、エビデンスレベルの高い治療推奨が少ない状態です。せん妄への対応がまず重要で、適切な光、声掛け、オリエンテーションつけるなど工夫する。モニタリングはせん妄リスクだが、離脱せん妄時期には十分モニターできるICU管理が望ましい。Wernickeのhigh riskでは糖とVitB1補充を行う。Vitamin B1 500mg×3回/日を5日程度。離脱せん妄の治療の中心は、ベンゾジアゼピン系薬剤です。薬剤による優劣は無いので、ジアゼパムでもロラゼパムでも可能。必要量は個人によって異なる為、モニタリングしながら容量増量が必要になる事もある。高容量ベンゾで対応難しければプロポフォールでの鎮静も考慮。ハロペリドールなどは第一選択では使用しない。以下に治療の詳細がまとまっています。ベンゾ投与の具体的方法は10分毎のレジメンが書いてあって参考になりました。

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(文献より引用)

✓ アルコール離脱の診断・治療は大事。予測スコアにはCIWA-ARを用い、治療はベンゾジアゼピンを適切量用いつつICUでの全身管理を