栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:便秘型過敏性腸症候群/スタチン筋症/ジベルばら色粃糠疹

MKSAPまとめです。
しかし寒いなあ。凍えそう。

便秘型過敏性大腸 Constipation-predominant irritable bowel syndrome(IBS-C)

❶症例
  48歳女性が、1年前に便秘型過敏性腸症候群と診断され定期通院中。複数OTC下剤を使用し、現在も繊維サプリメント(適量の水分と一緒に)とポリエチレングリコールを服用している。内服にも関わらず、腹部クランプや腸管蠕動運動低下による症状が残存している。消化管疾患や悪性腫瘍の家族歴はなく、6ヶ月前に下部消化管内視鏡検査が施行され、異常を認めなかった。身体所見・バイタルサインは異常なく、左右の下腹部に圧痛はあるが腹膜刺激症状なし。腫瘤も無く、肛門括約筋は安静時も排便時も正常。
 次に行うべき適切な治療はどれか?

 ❷便秘型過敏性腸症候群IBS-C)とは?
 便秘症状主体の過敏性腸症候群IBS-C)は、通常繊維・一般的な下剤で治療を行う。

❸Lubiprostone(アミティーザⓇ)とは?
 Lubiprostoneは、C2クロライド受容体を活性化し、小腸内に腸液分泌を促すことで、便が軟らかくなり便通が改善するという機序で作用する。FDAは、女性のIBS-Cに対する治療として8μg/分2、成人(18歳以上)の慢性便秘に対しては24μg/分2の投与量を推奨している。
 妊娠カテゴリーはCであり、妊娠可能世代の投与開始前には妊娠反応を確認しておく必要がある。ただし、基本的には繊維と適切な下剤を使用してもコントロールがつかない便秘の場合のみに使用すべきである。

❹他の治療薬は?
 Hyoscyamine:アセチルコリンを阻害することで消化管平滑筋の蠕動運動をブロックし抗攣縮作用を来す事でIBSの症状治療に用いられることはある。抗痙縮薬は腹部症状を減らすことはあるが、エビデンスレベルは低い。その上、IBS-Cの場合には、抗コリン作用が論理的には便秘を悪化させる為、使用は控えるべきである。
 Metoclopramide:腸管蠕動亢進薬で、胃麻痺の治療に使われることはあるが、IBS治療での役割は確立していない。
 3環系抗うつ薬IBSの腹痛の対症療法としては、プラセボよりは効果があることが分かっている。ただし、抗コリン作用がある為、便秘を増悪させる可能性があり第一選択にはなりにくい。

Key Point
✓ Lubiprostone(アミティーザⓇ)は便秘型過敏性腸症候群の第一選択ではないが、繊維や通常の下剤を適切に使用後も症状が残っている場合に使用を検討する。

Drossman DA, Chey WD, Johanson JF, et al. Clinical trial: lubiprostone in patients with constipation-associated irritable bowel syndrome—results of two randomized, placebo-controlled studies. Aliment Pharmacol Ther. 2009;29(3):329-341. PMID: 19006537

 

 

スタチン筋症 statin-induced myopathy

❶症例
  56歳男性が2週間前からの全身の筋肉痛と徐々に悪化する筋力低下を主訴に受診。筋痛は日常生活でも見られるようになってきている。既往で甲状腺機能低下と脂質異常症があり、レボチロキシンとシンバスタチンをないふくしている。また、4週間前から爪白癬の治療の為にイトラコナゾール内服を開始している。
 身体所見では、バイタル嗄声上、筋力検査では、近位筋の軽度筋力低下を認め、両足の第3・4指に爪白癬あり。採血では、Hb 13.2g/dL、TSH 3.0μU/ml、CK 934U/L(6ヶ月前はCK 120U/L)だった。
 最も適切な対応は何か?

 ❷スタチン筋症とは?
 スタチン系薬剤は、急性もしくは亜急性に疼痛を伴う近位筋の筋症や横紋筋融解症を来す事がある。CK上昇は伴う場合と伴わない場合があるが、最近のスタチン増量やCYP3A4を阻害する様な新規薬剤の開始が、スタチンの代謝を阻害し、潜在的にスタチン筋症のリスクを増加させている。

 ❸CYP3A4で分解される薬剤は?
 マクロライド、プロテアーゼ阻害薬、アゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール等)、フィブラート系薬剤
 これらの薬剤は、それぞれ独立して筋毒性がある事も知られているが、スタチンと併用することでリスクが高くなる。被疑薬剤を中止することで、薬剤誘発性筋症は徐々に回復する。

❹他の筋症を来す疾患は?
 甲状腺機能低下症:ほとんどの患者は、筋力低下症状は訴えないが、対称的な近位筋の筋力低下は診察によって明らかになる事がある。他の症状として、不安・振戦・熱不耐性・不眠・体重減少がある。筋痛や倦怠感の訴えも報告があるが、CKや筋電図は典型的には正常である。甲状腺機能が正常化しても筋症の回復には数ヶ月以上必要になる事が多い。
 VitD欠乏症:骨軟化症が無くとも、VitD欠乏症は、筋痛と近位筋筋力低下を来す。血清1,25VitD値の低値が診断に有用だが、CK値・筋電図ともに正常である。
 多発筋炎:多発筋炎は、対称性の近位筋の筋力低下を来す。近位筋の筋力低下を示唆する所見として、手を頭まであげる事が出来ない、椅子やリクライニング椅子から自力で立ち上がることが出来ない、等の症状を確認する。筋痛は炎症性筋疾患患者では稀であり、あっても軽度とされる。診断は矛盾しない臨床所見と筋原性控酵素上昇、筋生検による病理学的所見を総合して行う。

Key Point
✓ 既にスタチンを内服している患者では、新規開始薬剤がスタチン代謝を阻害することで、潜在的にスタチン筋症のリスクが増大することがある。

Joy TR, Hegele RA. Narrative review: statin-related myopathy. Ann Intern Med. 2009;150(12):858-868. PMID: 19528564


 

 

ジベルばら色粃糠疹 Pityriasis rosea

❶症例
  23歳男性が、突然背部・胸部・腹部に皮疹が出現したとのことで外来を受診。皮疹は2週間前に背部に1箇所出現し、その後急速に他の部位に拡がった。掻痒感は無く、発熱や他の感染を疑う症状を認めず、環境曝露やsick contactはない。
 身体所見では、バイタルは正常で、リンパ節も含めた全身身体所見は異常なかった。皮膚所見は以下。梅毒血清反応は陰性。

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(MKSAPより引用)
 適切な治療はどれか?

 ❷ジベルばら色粃糠疹とは?
 コモンな皮膚炎で10-35歳に好発するとされ、適切な対応は心配ないことを説明することである。初期病変は、herald patchと呼ばれ、単一、ピンク、2-4cm、薄く、楕円形のプラークで周囲に落屑を伴うのが特徴。日にちから週の単位で病変は多数になり、1cm以下の斑が体幹・四肢近位部に出現する。患者は比較的元気で掻痒を伴う事もある。掻痒がある場合には、低力価〜中等度力価のステロイド外用剤を用いる。

 ❸体白癬の鑑別疾患は?
 周囲が発赤して、わずかに落屑があり、辺縁が目立ち、中心部は抜けている円形病変は真菌感染を疑う。体白癬は、体のどの部分に起きてもよく、大患や四肢に起こり得る。辺縁部は発赤がありわずかに盛り上がるのが特徴。
 ジベルばら色粃糠疹はしばしば体白癬と間違われるため、治療開始前にKOHによる真菌確認を行うことが望ましい。

Key Point
✓ ジベルばら色粃糠疹は比較的コモンな疾患で、herald patchと呼ばれる、単一、ピンク色、2-4cm程、楕円形のプラークと周囲の落屑が特徴的な鱗屑を伴う丘疹から始まり、日〜週の単位で小病変が体全体に拡がっていく。

Browning JC. An update on pityriasis rosea and other childhood exanthems. Curr Opin Pediatr. 2009;21:481-485. PMID: 19502983

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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