栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:HbA1cと貧血/主訴を置き換えない/年齢とメトホルミン

寒い雨はなかなか辛いですねー。
今週は嫁ダウンにつき少しだけ”イクメン”っぽい感じでした。
カンファは出ましたが・・・あと、予演会おつかれさまー。

 

HbA1cと貧血 Glycated hemoglobin and anemia

 HbA1c値が赤血球寿命の影響を受けることは有名ですが、貧血がある場合には数値はどの様に変化すると考えるべきでしょうか?

■低く出る(偽低値):一般的にはこちらと考えている人が多いでしょうか?これは、赤血球寿命が短縮する為、若い赤血球が増え、HbA1c値が低くなるという考え方。もしくは急激に糖尿病を発症すると追いつかないこともあります。
※溶血、肝硬変、妊娠、鉄欠乏性貧血・ビタミンB12欠乏性貧血・葉酸欠乏性貧血

■高く出る(偽高値):実はHbA1c値が高くなるという意見もあります。これは、赤血球産生が減少し、残存した古い赤血球の数が不均衡になることで赤血球寿命が伸びて糖化Hbが長時間残存する為、HbA1c値が高くなるということです。
※脾摘後、血液透析・鉄剤で治療・ビタミンB12欠乏性貧血・葉酸欠乏・腎性貧血・アルコール多飲・高ビリルビン血症等


 機序によって上がりも下がりもするということは覚えておく必要があるでしょうね。。貧血だから低く出るとだけ覚えておくと思わぬ落とし穴にはまります。

 

✓ HbA1c値は貧血の時には下がるときもあれば上がるときもある。

 

 

主訴を置き換えない Never replace CC!

 症例プレゼンテーションを聞いていると、しばしば経験するのが病歴聴取を聞いているのにも関わらず、途中から主訴が他のものに置き換わってしまうということを良く経験します。
  
 例えば、症状が「嘔吐」で来院していたのに、何故か途中で採血でCK上昇に引っ張られて、「横紋筋融解症」です・・・みたいなプレゼンテーションになる。それって嘔吐の原因になるの?これは特に多いのが検査過剰な診療が行われている場合です。情報過多になって、整理がつかないのが一因で、比較的若手の医師の診療でよく見られる事象だと思っています。しかも、そうゆう異常値がでた検査所見に限って、「で、なんでその検査をしたの?」という質問に答えられない。事前の見積もりのない検査は不要です!鑑別疾患ありきの検査!というところを口を酸っぱくして、唾を飛ばしながら指摘するしかないですね。小姑みたいですが・・・

 だからこそのworking diagnosisだなあ。まず、病歴・身体所見できちんとAssessmentを行う。そこで立てられている臨床仮説に見合った検査を行う。この基本的なステップをすっ飛ばして検査を行うから混乱を招くのだと思います。患者さんの主訴は嘘をついていないことが多いです。Dr.Houseの逆ですが・・・そして、患者さんは聞けば応えてくれるけど、きちんと聞けていない(病歴聴取出来ていない)ことも多いわけです。

✓ 主訴を勝手に置き換えない!

 

 

年齢とメトホルミン Metformin and elderly

 高齢者には、腎機能障害や肝硬変、手術歴、認知症など糖尿病薬の選択を考えるのに難しい要素がたくさん揃っています。メトホルミンをどの様に考えるべきか・・・日本の添付文書では、75歳以上の高齢者では慎重投与にはなっています。75歳以上の高齢者ではより慎重な判断が必要であり、原則として新規の患者への投与は推奨しない、と書かれています。

 メトホルミンは、低血糖リスクが低いという点では、高齢者にとっては魅力的な薬ですが、潜在的に腎機能が低下していること、乳酸アシドーシスリスクも年齢と共に上昇し十分注意が必要ではあると思います。また、消化器症状の副作用も出やすいのだとか。

 現時点では禁忌にはなっておらず、慎重投与として悩みながら使用しています。実際、メトホルミン使用と乳酸アシドーシス発症は関連しなかったというCochrane reviewの結果もあり、今後の高齢者への安全性データがもっと出てくると良いなと感じています。

 もう一点だけ。Sick dayも含めた脱水・腎機能障害リスクの高い時には、メトホルミンを速やかに中止する必要があります。これは内服処方時の患者指導で重要になると思います。

✓ 高齢者のメトホルミン使用は原則慎重投与。Sick dayには速やかに中止を。