栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 無症候性糖尿病患者への冠動脈CTスクリーニング/子宮頚癌検診/慢性リンパ球性白血病/DAPT治療期間のeditorial/子供の攻撃性 conduct disorder

■JAMA■

無症候性糖尿病患者への冠動脈CTスクリーニング 
Effect of screening for coronary artery disease using CT angiography on mortality and cardiac events in high-risk patients with diabetes. The FACTOR-64 randomized clinical trial*1

 無症候性糖尿病患者への冠動脈CTスクリーニングのRCTなのですが、これって無症候性のCADを見つけるということにもなり、読む前から意味無さそうだなあと思うわけですが。

 対象患者は、男性50歳以上、女性55歳以上の3年以上の糖尿病歴がある患者もしくは、男性40歳以上、女性45歳以上で5年以上の糖尿病歴がある患者です。CAD既往や有症状者は除外され、1年以上糖尿病に対する薬剤投与している患者でした。介入として、冠動脈CTで石灰化スコアや狭窄を評価し、結果に応じてaggressive medicationやCAG/PCIなどを施行する群と、通常ケアを行う群を比較し、composite outcomeで、全死亡・非致死的心筋梗塞狭心症入院を評価しています。4年間followした多施設RCTで、介入の性質上盲験化は出来ておりません。当初14208人がスクリーニングされていますが、かなりの数が除外され最終的に900人を448人 vs 452人にランダム化しました。除外理由は、基準に満たさない者、糖尿病薬を内服していないなどでした。平均61歳、BMI 33、DM歴12年、2型が88%で、インスリンは40%で使用され、平均HbA1c 7.5%でした。ITT解析あり。

 結果ですが、プライマリアウトカムのcomposite outcomeは、HR 0.80(95%CI:0.49-1.32)と統計学的な有意差は出ず、majorなアウトカムの複合は減らさない結果でした。ただ、サンプルサイズを大きくすれば有意差がでるだろうとauthorらは考察。確かに表を見るとイベント数の差はでそうな印象。ちなみに介入群の87%でCTAが施行され、実際に重症狭窄病変が見つかったのは全体の10%、PCI施行は6.0%、CABGは2.9%とそれぞれCTC群で多くなります。ただ、LDL値や血圧値はCTA群で有意に低下しており、CTAによる無症候性病変介入の効果というよりは、病変による影響で他のmedicationが強まったことの効果とも言えるかもしれません。

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(文献より引用)

 editorialで述べられていましたが、過去の無症候性DM患者への負荷SPECT介入(DIAD study)に引き続いてnegative dataが出たことを指摘しており、無症候性糖尿病患者に対する現状の予防策はまずまずうまくいっているのではないか?と評価。少なくともCTAや負荷SPECTが更に予防効果を強める効果は無いだろうと考察しています。今後は、これらの検査が有用なhigh risk患者の同定をどうするかが重要になるでしょうねと。
 
✓ 無症候性の糖尿病患者に対して、CTAを行う事は全死亡・非致死的心筋梗塞狭心症入院の複合アウトカムを減らさない。


子宮頚癌検診 
Cervical cancer screening*2

 子宮頚癌スクリーニングについて。各種検診の中で、きちんと効果が証明されている数少ないスクリーニングの一つです。家庭医系の医師は比較的Familialではありますが、総合病院外来では少しハードルが高くなりがちです。今回は2012年にリリースされたガイドラインのSynopsisです。

 米国では年間12000人の新規子宮頚癌患者があり、4000人が亡くなるのだそうです。50歳以下での罹患率が高いのだとか。まずはガイドライン自体の評価がratingされていますが、透明性・COI評価・Updatingなどの部分での評価が低いガイドラインになっています。発行団体はAmerical College of Obstericians and Gynecologists(ACOG)です。Synopsisは非常にシンプルにまとまっているので助かりますが、まず対象年齢が21-65歳と明記されています。20歳以下・66歳以上には、リスクが無い限りスクリーニングを行うべきでは無いという立場です。この部分って日本の検診項目推奨に欠けがちな部分ですよね。主要な推奨項目を箇条書きにしてみます。

■子宮頚癌のスクリーニングは、性活動やリスク要因に関わらず21歳から開始すべきである。
21-29歳までは、子宮頚部細胞診を3年毎に実施すべきである。
30-65歳までは、子宮頚部細胞診とHPVテスト両方を5年毎に実施すべき。(代替法は子宮頚部細胞診3年毎)
■子宮頚癌リスクが高い女性(HIV陽性、免疫不全状態、子宮内ジエチルステルベストロール暴露、CIN既往、子宮頚癌既往等)の場合には、より頻回にスクリーニングを行うべき。
■スクリーニングは、最近10年間の適切なスクリーニング(3回の子宮頚部細胞診陰性もしくは2回の子宮頚部細胞診+HPV検査両方が陰性)で陰性もしくはCIN2以上の既往がない場合には、65歳で終了すべきである。
■子宮頚部細胞診は、液体ベースまたは従来のPap smearで採取する。
HPV検査単独のスクリーニングは行うべきではない
■子宮頚部細胞診の結果が、意義不明な異型扁平上皮細胞(atypical squamous cells of undetermined significance :ASCUS)となり、HPVが陰性の場合には、年齢に応じた通常スクリーニングを継続。
■子宮頚部細胞診が陰性で、HPVが陽性の場合には、12ヶ月後に再検査を行うか、HPV遺伝子特異的検査を行う
■スクリーニング推奨は、基本的にHPVワクチンの有無にかかわらず同様に行う。


✓ 子宮頚癌は予防的観点では重要な疾患であり、かかりつけの女性には65歳までは適切なスクリーニングを推奨・確認する。


慢性リンパ球性白血病 
Chronic lymphocytic leukemia. A clinical review*3

 慢性リンパ性白血病のレビューでした。基本的に我々血液疾患は苦手なので、こうゆうまとめは役に立ちますね。Chicago大学の血液内科・腫瘍内科の先生のCLL reviewです。CLLは欧米で最も一般的な白血病で、米国では年間15000人の新規患者が発症し、5000人程度が死亡する疾患とされています。ただし、日本では欧米と異なり頻度が少なく約1/10程度の頻度と言われています。この辺りの人種の影響は指摘されていて、欧米に移住した日本人でも頻度が少ないので、環境因子より遺伝的要因が関与しているのではないかと言われています。治療選択肢は限られていますが、この10年で治療の進歩が見られて来ています。今回は、CLLの診断・病期・治療についてのreviewで、2000-2014年8月までに発表された英語文献を元にpeer-reviewが行われました。277文献を評価し最終的に24個が事前に決定した基準に該当した為、評価しています。

 CLLの初期症状と診断についてはBoxに詳細がまとまっています。初期症状として、多くの患者は診断時無症状である事、紹介は無症候性の白血球・リンパ球増多が多いとされています。B症状を呈するのは10%程度、ただしほとんどの患者は診察すればリンパ節腫脹あり、肝脾腫は20-50%であるとされています。血液検査異常は、リンパ球増多は総数5000/μlと定義され、自己免疫性溶血性貧血は1-11%で合併。自己免疫性血小板減少は2%程度。LDL-Choとβ2-MGの上昇や低ガンマグロブリン血症の合併することもあります。診断については、末梢血のフローサイトメトリーと免疫学的表現形の検査を行う事で、リンパ球の単クローン増殖を証明することで為されます。免疫表現形はCD19,CD20,CD23,CD5が発言しており、画像検査や骨髄検査・生検は診断に必須ではありませんが、骨髄検査で血球減少の他の原因を検索する為に用いられることがあります。リンパ節生検も同様。

 病期としては、Rai and Binetの病期システムが用いられています。Raiは臨床症状でリンパ球増多のみをrisk low、リンパ節腫張や肝脾腫をintermediate、貧血や血小板減少があるとhighとgrading。更にBientは、リンパ節腫張の部位の広がりからlow-highまで分類しています。ただ、この分類は新規概念である単クローン性B細胞性リンパ球増加症(末梢血リンパ球増多:MBL)を分類できず、このMBLから年間1-2%がCLLに伸展することから注意が必要とされています。

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(文献より引用)

 治療はかなり複雑なので割愛しますが、アルキル化系抗腫瘍薬(シクロホスファミド等)とプリン類似体(フルダラビン等)が伝統的な治療法でしたが、近年リツキシマブなどの抗CD20抗体薬などが併用されつつあります。この辺りはまさに日進月歩というところ。プライマリケア医はきちんと診断できるようになるかですね。

✓ 慢性リンパ球性白血病を的確に診断できるようにする。多くは無症状であり、リンパ球増多(実数5000以上)やリンパ節腫張に注意。


■NEJM■

DAPT治療期間のeditorial  
Dual antiplatelet therapy after Drug-eluting stents-How long to treat?*4

 これはeditorialだけなんですが、先週のDAPTの研究12ヶ月 vs 30ヶ月を受けてのコメントです。DAPTを推奨する理由として、
①血管の治癒過程における炎症が血栓を起こす
②ステント内外の動脈硬化進行に伴う血栓
の2つがあるのだそうです。前者は第2−3世代のDESによって流出薬剤を変えることによって克服されつつありますが、後者に対する適切な介入が良く分かっていません。

 基本的には、DAPT期間を短くする方向でstudyが行われています。現在の12ヶ月から3-6ヶ月程度への短縮が目下の話題です。今回のstudyでは、プライマリアウトカムは改善するも死亡は増加傾向で、更に悩ましくなりました。ただ、今回の患者群が過去に心筋梗塞脳梗塞を起こしたハイリスク群が除外されており、本来長く続けた方が良い患者層が当初から除外されてしまっている可能性があり、患者選択の時点で少し残念な研究でした。

 今後は、如何にhigh risk患者を同定しつつ、出血low risk患者を見つけ、DAPT期間も層別化していく作業が重要になるかもしれません。この手の結論って最近特に多いですよね。思うに、どんなにエビデンスが出ようが最終的には、個々人の患者さんと情報提供を元に不確実性を共有しながら決定していく作業を丁寧に行っていくしかないですよね。エビデンスなんて所詮、確率の提示でしかないわけですから・・・

✓ DAPT期間も梗塞リスクと出血リスクによる層別化・個別化が重要。エビデンスを元にきちんとしてSDMを。


子供の攻撃性 conduct disorder 
Conduct disorder and Callous-unemotional traits in youth*5

 NIHの精神科医のreviewです。今回初めてConduct disorderという言葉を知りました。日本語では行為障害とも訳されており、反復・持続的な反社会的・攻撃的・反抗的な行動パターンが特徴的な精神障害ICD-10でも規定されています。

 近年、子供や若年者の暴力行為に注目が集まっています。日本でも先日の佐世保女子高生事件も含め若年者の犯罪の報道が社会問題になっていますよね。犯罪には至らなかったとしても若年時期の破壊的行為は、その後の薬物依存や犯罪リスクに繋がるとされています。conduct disorderの周辺疾患として、ADHD・Oppositional defiant disorder(ODD)などがあり、overlapもある様です。今回、DSM-5でCallous-unemotional traitが新しい概念として追加されました。Callous-unemotional traitはニューオリンズのフリック博士が提唱している言葉で日本語ではCU特性とも言われます。もう少し分かりやすく訳すと「冷淡な非情緒的特性」とも言えるかもしれません。サイコパスに近い特徴で、冷淡・無感情・非共感的な態度で、予後不良の特徴と言われています。初期症状は小学校低学年から始まり、攻撃性・非遵守・衝動性などが特徴です。自然軽快は少ない為、早期介入が重要ともされていますが、診断基準を満たすのは10歳以降が多い様です。

 病態生理として、扁桃体と前頭葉が関連していると言われ、共感の欠如・恐怖への過剰反応は扁桃体、失敗に対して「報酬<<罰」と考えるのは前頭葉の問題なのではないかと考えられています。分かりやすい例えが図示されていましたが、熊が見えたときには普通の人であれば、「Fleeze」するか「Flee」するかなのですが、これらの障害がある人は「Fight」という選択肢を取りやすいのだそうです。遺伝性や母親の喫煙、貧困、暴力暴露、ネグレクトなどがリスクになるのでは?とも言われています。介入のメインは認知行動療法と言われていますが、未だ確立されたものはありません。

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(文献より引用)

✓ 行為障害(Conduct disorder)について、disorderとしての認識と早期の専門医介入を検討するが、専門家が少ないのも現状。