栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:副甲状腺機能低下症による低カルシウム血症/中枢性尿崩症/遺伝性非ポリポーシス性大腸癌症候群:HNPCC

MKSAPまとめです。
最近早くまとめられるようになってきました。
HNPCCは注意しなくてはいけないですね。

副甲状腺機能低下症による低カルシウム血症 hypocalcemia with hypoparathyroidism

❶症例
  43歳女性が、入院中に口周囲の痺れと重度の両手の筋痙攣を訴えた。患者は前日に甲状腺乳頭癌に対する甲状腺全摘術を受けていた。手術は特に問題なく、周囲のリンパ節腫脹も認めなかった。
 身体所見ではバイタル正常、胸腹部身体所見には異常無く、筋力試験も正常で、筋痙攣はあるがテタニーは認めなかった。採血では、Ca 4.1mg/dL、Mg 1.7mg/dL、IP 4.7mg/dLで、腎機能は正常。心電図も異常なし。
 この患者ですぐに行うべき適切な治療はどれか?

 副甲状腺機能低下症に伴う低カルシウム血症と症状
 甲状腺全摘術の合併症として、incidentalに副甲状腺を切除・障害した場合に、副甲状腺機能低下症を来し低カルシウム血症を来すことがある。その場合、術後にカルシウム値が急速に低下することがある。症状は痺れや筋痙攣などの神経筋症状を伴う。

❸急性症状を伴う低カルシウム血症の治療
 症状を伴う低カルシウムの補正は経口カルシウム剤で行うべき。迅速にカルシウム値を上昇させることが出来る。ただし、カルシウム値が非常に低い(<7.5mg/dL)場合や症状が強い(筋力低下、テタニー、心電図伝導異常)場合には、経静脈的カルシウム製剤投与も検討する。また、急性期治療後にも、維持療法としてカルシウム補充療法が必要。

❹その他の治療薬は?
 VitDサプリメントこの患者では、カルシウム値を維持する為に通常慢性的にビタミンD補充が必要となる。ただし、内服開始後カルシウム上昇までには数日かかる為、急性期の補充の初期治療にはならない。PTHの欠乏によって25-hydroxyvitamin D→1,25 dihydroxyvitamin Dへの変換が阻害されている様な病態の場合に、Calcitriol(1,25-dihydroxyvitamin D)投与が良い適応となる。
 マグネシウム製剤:低カルシウム血症患者では、低マグネシウム血症を合併することがあり、治療抵抗性の場合にはマグネシウム測定と補充を検討する。
 テリパラチド:テリパラチドはPTHのリコンビナント製剤で、現在は骨粗鬆症での適応がある。理論的には、補充療法になり得る可能性はあるが長期有効性と安全性が確立されていない為、FDAでも認可されていない。

Key Point
✓ 副甲状腺機能低下症による低カルシウム血症の患者では、経口カルシウム投与によって数分以内に血清カルシウム値を上昇させることができるため、緊急時の最も適切な治療である

Khan MI, Waguespack SG, Hu MI. Medical management of postsurgical hypoparathyroidism [erratum in: Endocr Pract. 2011;17(6):967]. Endocr Pract. 2011;17(Suppl 1):18-25. PMID: 21134871

 

 

中枢性尿崩症 central diabetes insipidus

❶症例
  52歳男性がGCV耐性のサイトメガロ脳炎で入院中。フォスカルネットで治療が開始されており、AIDSを発症し最近抗ウイルス薬治療を受けていなかった。
 身体所見では、患者は無気力だが人の認識は可能。体温 37.8℃、BP 136/56mmHg、Pulse 102bpm、RR 14/min、BMI 17だった。入院1週間で、血清Na値 143mEq/L→156mEq/Lとなり、この間経静脈的に生理食塩水投与が為されていた。入院時と7日時点の検査結果の推移は以下。

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(MKSAPより引用)

 デスモプレッシン投与後に尿中浸透圧は614mosm/kg H2Oまで上昇した。
 最も可能性の高い診断は何か?

 ❷中枢性尿崩症とは?
 本患者では、十分な血液浸透圧があっても尿浸透圧が200mosm/kg H2O以下となっていること、多尿があることが中枢性尿崩症に矛盾しない点である。ただし、この患者は、中枢性尿崩症のリスク(CMV脳症)と腎性尿崩症のリスク(フォスカルネット治療)が両方存在する。

 ❸腎性尿崩症と中枢性尿崩症の鑑別は?
 鑑別にはデスモプレッシン投与が役に立つ。中枢性尿崩症では、デスモプレッシン投与後に尿中浸透圧は600mosm/kg H2O以上に上昇し、尿細管機能は抗利尿ホルモン(ADH)アナログに反応することが示唆される。
 一方で、デスモプレッシン投与後も尿中浸透圧が300mosm/kg H2O以下の場合には腎性尿崩症が疑われる。

❹他の鑑別疾患は?
 中枢性塩類喪失症候群 Cerebral salt wasting(CSW):CSWではナトリウム枯渇により低ナトリウム血症、体液量減少を来すが、高ナトリウム血症や多尿は稀な症状である。体液量減少は、浸透圧には依存せずにADHを分泌させる。初期の尿浸透圧が200mosm/kg H2Oであり、体液量減少を示唆する身体所見もなく、血清ナトリウム値高値であることは、CSWには合致しない所見である。
 浸透圧利尿:浸透圧利尿の場合には、尿中浸透圧が300mosm/kg H2O以上はあるべきである。尿中浸透圧が200以下であり、浸透圧利尿は否定的。

Key Point
✓ 中枢性尿崩症と腎性尿崩症の鑑別には、デスモプレッシンへの反応が役立つ。

Loh JA, Verbalis JG. Disorders of water and salt metabolism associated with pituitary disease. Endocrinol Metab Clin North Am. 2008;37(1):213-234. PMID: 18226738


 

 

遺伝性非ポリポーシス性大腸癌症候群:HNPCC Heredditary Non-Polyposis Colorectal Cancer

❶症例
  36歳男性が、大腸癌検診の相談の為に来院。生来健康で初夏気象上などの問題は認めていない。身体所見でも異常所見なし。彼の家族歴は以下に示す通り。
父:52歳 大腸癌
母:癌なし
叔母:37歳 子宮内膜癌
叔父:42歳 大きな大腸腺腫(径2.5cm)
兄:48歳 大腸癌
 適切なスクリーニングマネージメントはどれか?

 ❷遺伝性非ポリポーシス性大腸癌症候群とは?
 HNPCC(Lynch症候群)は常染色体優性遺伝で一生涯に80%の人が大腸癌に罹患する症候群である。HNPCCは最もcommonな遺伝性大腸癌で、全ての大腸腺癌の2-3%を占める。20-30歳で大腸腺腫が出現し、通常の大腸癌よりも早く増大すると言われている。
 HNPCCは同時に、大腸癌以外の悪性腫瘍とも関連すると言われ、子宮癌が40-60%、卵巣癌が10-12%と報告されている。

 ❸HNPCCのスクリーニングはどうあるべきか?
大腸内視鏡による評価は、
①20-25歳時点
②家族内の大腸癌発症年齢より10歳早い年齢
のどちらか早い方で開始すべきである。
 大腸内視鏡が第一選択であり、婦人科評価や泌尿器尿管癌のスクリーニングも行うべき。

❹Amsterdam criteria Ⅱとは?
 Amsterdam criteria Ⅱとは、家族歴評価に使われる指標である。”3-2-1 rule"とも呼ばれ、”3人の罹患患者、2世代、1人が50歳以下”を基準としている。日本ではJapanese clinical criteriaなどもある。

Key Point
✓ 遺伝性非ポリポーシス性大腸癌症候群(Lynch症候群)の患者では、大腸内視鏡検査を①20-25歳時点もしくは②家族内の大腸癌患者の発症年齢-10歳のどちらか早い方のタイミングでスクリーニング検査を開始すべきである。

Goodenberger M, Lindor NM. Lynch syndrome and MYH-associated polyposis: review and testing strategy. J Clin Gastroenterol. 2011;45(6):488-500. PMID: 21325953

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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